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第42話 『暁の英雄と瑠璃の勇者の伝説』


「カーラは、死んだのか――」

「ええ。最後の最後まで魔物を受け切っていましたが、魔物の掃討の完了と共に力尽きました。戦闘終了後、アリオーは彼女が笑顔のまま跪いている姿を見つけ、丁重に弔ったのです」


 これが、『暁の英雄』の最期だったらしい。

 やはり、『英雄』といえども、不死身というわけにはいかない。


「トールさんは、『暁の英雄』をご存知でしたのですね?」


 ラムが、トールがその名を聞いた時の反応を指して言っているだろうことは想像に難くない。

 そうだ。

 俺はその『暁の英雄』に子供のころから憧れていたのだ。

 

 俺が子供の頃、本はまだ高くて一般庶民ではなかなか買えなかった。

 だけど、一冊だけ、両親が買ってくれた本がある。


『暁の英雄と瑠璃の勇者の伝説』。


 それがその本のタイトルだ。

 トールは、テーブルを立ち、自室へ戻ると、箱の中から一冊の本を取り出し、またラムの待つテーブルへ戻る。

 そして、その本をテーブルの上にそっと置いた。


「これだよ。俺が冒険者に憧れていることを知っていた両親が買ってくれた本だ」

「カーラとアリオーの話、ですね?」

「ああ。まあ、といっても、どちらかといえば子供向けのお伽噺だ。聞こえの良いようにしか書かれていないけどな。お前が今話してくれた内容の半分も書かれていない――」

「でしょうね。公理教会の検閲がかかっているため、そうなるのでしょう。アリオーとカーラ、ヴェルナードは私にとってかけがえのない友人たちでした。3人は小さい頃からの幼馴染だったのです。ですが、それでも彼らの『運命』を乗り越えることはできませんでした。私は、彼らのような悲劇をいつまでも続けるべきではないと、それから今まで何度も『勇者』と『魔王』を和解させようとしてきましたが、彼らに無理だったことを他の誰かができるわけがないのも頷けるというものです」


 ラムの視線はやや下に向き、テーブルの上に置かれた本を見つめている。在りし日の友たちに思いを馳せているのだろうか。


「お前と、その3人の関係はいつからだったんだ?」


 トールはラムが「友たち」と言ったことやこれまでの話から、ラムとアリオーたち3人がかなり近しい関係だったと感じている。


「3人がまだ冒険者だった頃からです――。前にも言いましたよね、私、『枯渇』をやらかす癖があると。ちょうどトールさんに出会った時と同じように、彼らも私を救ってくれたのですよ。それから、私も彼らと共に世界中を旅してまわりました。彼らが自分たちの『運命』に直面するまでです」


――そして、私は自分の『役目』に戻りました。


と、ラムはこの話を締めくくった。


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