第41話 ラムの思い出③「『勇者』と『魔王』と『暁』と」
「アリオー!! 私が突破口を開く! お前は、その瞬間を逃さないよう、準備しておけ!」
深紅の長髪をなびかせ、大剣を振るう女戦士がそう叫んだ。
「カーラ!? 何をする気だ!?」
アリオーと呼ばれた青年が、その女戦士の背中に向かって叫んだ。
「心配するな、ヴェルのところへお前を送るのが私の役目だ。役目は必ず果たして見せる――」
一瞬振り返り、大海のように大らかな笑顔を向けたカーラは、すぐに向き直り、闘気を燃やした。
「者ども! この『暁の英雄』カーラ・レッドラインに続け! 『勇者』を『魔王』の元へ必ず送り届けるのだ! いざ、参る!!」
女戦士は声高らかにそう叫ぶと、大剣を翻して魔物の群れの中へと突進していった――。
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ラムディエルは、それの一部始終を「見ていた」。
その後、『暁の英雄』カーラ・レッドラインは魔物を押しのけ、『魔王』への道を拓くことに成功。
『勇者』アリオー・クルセイドはその間隙を縫って、『魔王』ヴェルナード・カインラッドと対峙し、一騎打ちとなる。
『勇者』を『魔王』から遠ざけようと迫りくる魔物どもは、全て、カーラと勇者軍の精兵たちが盾となり防ぎきった。
その時が訪れるまで――。
『勇者』が『魔王』に最後の一撃を加えた時には、周囲の魔物どもはすべて殲滅されており、勇者軍のものも数名が生き残るのみだった。
「『勇者』よ、悔やむことは無い。これが俺たちの運命だ。先に行ってるぞ、アリオー。ラムディエルがお前を迎えに行く――」
そう言ってヴェルは静かに目を閉じた。
「ヴェル――。すまない。俺には変えることができなかった……。向こうで待っててくれ、俺もそのうち行く」
『勇者』は、『魔王』の亡骸にそう告げると、剣を天に向かって突き上げ、鬨の声を上げた。
呼応する生き残った勇者軍の兵たちの声が共に響き渡ったが、その中に、『暁』の声はもう無かった。
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この状況を全て「見ていた」ラムディエルは、次に自分が為すべきことを覚悟する。
私たちでも変えることができなかった。あとできることは、私の役割を果たすことだけ――。
ラムディエルの役割、それは、この綿々と続く輪廻の終着であり、そして、始点でもある。
『勇者の葬送』――。
それがラムディエルの役割だ。
どうして自分がこのような「役割」を担うようになったのか。今となっては、その理由すらも定かではない。
ただ、いつか終わると信じて、また同じことを繰り返すのだ。
そうして、ラムディエルはこの時より10年の瞑想に入り、10年後に『勇者』アリオー・クルセイドを葬送した。




