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第35話 幻族と魔人戦争


 幻族。

 古くは魔素より生まれしもの――。


 彼らは2足歩行し、言葉を操り、道具を使い生活をする。つがいもいれば、子もす。

 人族の世界に溶け込み、人と変わらぬ生活をし、一生を終えるものも少なくなかった。

 総じて温厚な性質であり、争いを好まない。魔素由来の生命体であるが故か、「魔法」を操ることを得意とするものが多かった。


 容姿は人族のそれと大した差はなく、やや肌が白いことを除けば、人と見分けがつかないのが通常だ。


 初め人族は、これら幻族のことを違った種族だとは認識していなかったという。

 長い年月のうちに、これら「人とはやや異なる性質」を持つものがいることが周知され、人族の中でも「魔法」に秀でるものとして見るようになった。

 それがやがて、『魔法使い』というある種の忌み語で呼ばれるようになり、生命の起源が人族と異なるという学説が定説化し、ついには「幻惑して人族をたぶらかす存在=幻族」として区別するという事態にまで発展した。


 以来、幻族は人ならざるもので、魔族・魔物と同種のものとして迫害され、中には、嬲り殺し、強姦、激しい暴行などを受けるものも現れ、「幻族」たちは、徐々に人里から離れて行き、魔物を手懐けて、共生するようになっていったという。


 そもそも個体数として、人族よりも圧倒的に少数だったこれら「幻族」の者たちに、人族からの迫害に対抗する手段はなく、ひっそりと森や山の奥で暮らすようになるまでそれほど時間を要しなかった。


 そのような時代が数百年ほど過ぎるころ、途轍もない魔力を有した一人の「幻族」が現れた。

 彼は、並みいる魔獣・魔物を従え、隷属させ、ついには「魔族軍」を興し、人族世界に向かって反旗を翻した。

 これがのちに、初代魔王と呼ばれることになる者の誕生だった。


 彼が軍を興した結果、人族からの普段の扱いに反発心をもつ者が多く彼のもとに集結し、その軍は人族世界を蹂躙し始める。

 そして、人々はこれら幻族と魔物・魔獣たちの合同軍を「魔王軍」と呼ぶようになり、その統帥とうすいたる幻族の男のことを「魔王」と呼称するようになる。


 「魔王軍」と「人族」たちは激しい抗争を繰り返すが、ついには人族の方が圧され始め、とうとう大勢が決しようかという時に、人族の中から『勇者』が現れた。


 『勇者』は人族の中から特に戦闘能力の高いもの――『英雄』を選抜し、瞬く間に素晴らしい戦果を挙げだすと、人族の軍の総指令にまで登り詰める。


 これら「人界軍」は、「魔王軍」と激しく戦い、ついには、「魔王」を討ち果たすことに成功。統帥とうすいを失った「魔王軍」は瓦解、あっという間に戦局は逆転し、ふたたび人族が世界の趨勢を奪い返した。


 これが世に言う、「魔人戦争」の始まりであった。

 以来、「魔族」と「人族」は互いに振り子のように趨勢を繰り返し、「魔王軍襲来期」と「なぎ」を繰り返す世となるのである。


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