第33話 名声
「えええっ!? これって――」
ギルドホールにレイラの声が響き渡る――。
「やっぱり、そういう反応になりますよね――」
と、トールさんはやや申し訳なさそうに頭を掻いている。
レイラは、今しがた戻ってきたばかりのトールの今日の討伐記録を査定しているところだ。
もちろん、その討伐記録の中には、『ゴブリン・ロード』のものも含まれている。
レイラの記憶では、『ゴブリン・ロード』の直近の討伐達成は、3年ほど前だ。しかもその時は「パーティでの討伐達成」だったはず――。
この、『フォレストホロウ洞窟のゴブリン・ロード』の討伐は、実は、ギルドクエストには含まれていない。
理由は明確である。
これら、『ダンジョン・ボス』と呼ばれる者たちは、明らかに戦闘力が高く、通常の冒険者パーティですら手に負えないとされているからだ。
そのため、あえてギルドクエストを設けず、無謀な挑戦をさせないように配慮しているのである。
では、階級があがった後に討伐すればと思うだろうが、はっきり言えば、それには大した意味がない。
階級上位のものは、自身の適正階級ダンジョンに潜り、「ボス以外の」個体を討伐する方が、遥かに安全で、報酬もいいからだ。
冒険者ギルドとしては、この『ロード』と呼ばれる個体に対して、冷かしや名声目当てに冒険者たちが挑み、命を散らすことを防ぐため、討伐対象に含めずに放置しているというのが実情である。
もちろん、「魔王軍」が編成され、「魔人戦争」が始まれば、そういった『ロード』たちもダンジョンから地上へと這いだし、人族に襲い掛かってくるのだが、「凪」の期間はダンジョン奥の「ボス部屋」から外へと出てくることは無く、触らねば脅威とならない上に、討伐したとしても、数時間もすれば新たな『ロード』が誕生するため、はっきり言えば、討伐することに何も意味がないのである。
――ただ「名声を得る」ということを除けば、だ。
レイラは、過去の討伐記録を確認した後、意を決して立ち上がる。
これは、査定担当したレイラの「役目」である。
そして、棚の下に備え付けてあるハンドベルを取り出すと、からんからんとホール中に響く音で打ち鳴らした。
その音にギルドホールにいたすべてのものが、レイラのいる受付ブースへと注目する――。
「みなさ~ん!! ご報告があります!! ただいまお戻りになりました、こちらの青銅級冒険者トール・レイズさんが、『ダンジョン・ボス討伐』を達成なさいました――!!」
ぎょっとした表情でこちらを見るトールさん――。
そして、次の瞬間、わぁっとホール中に歓声が沸き起こった。
「討伐対象は、フォレストホロウ洞窟のボス、『ゴブリン・ロード』!! 実に3年ぶりの快挙となります――!!」




