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第32話 治癒術師


かあああん――――!!


 甲高く響いた金属音。それは、『ラムの剣』とロードの半月刀が衝突する音だ。


 トールが左下から摺り上げた半月刀は、ロードの腕ごと弾き飛ばし、ロードは辛うじて刀を腕から放さなかったが、そのまま大きく状態をのけぞらせる。


 きしぃ――!!


 と、ロードの口惜しそうな叫び。


 次の瞬間、トールの剣がするりと軌道を戻すと、そのまま袈裟切りにロードの左肩口から、腹のあたりまで斬りこんだ。


 剣は腹のあたりで止まったため、トールは素早く手前に抜き去ると、再び中段に構えて、相手の反撃に備えたが、それは結果的に必要なかった。


 ロードはそのまま後ろ向きに背中から床に倒れこみ、おびただしい流血と共に命を枯らしてしまったのだ。


 たった2ごう――。


 切り結んだ回数はたったの2回。3撃目にはロードを斬り伏せ絶命させてしまったトールだったが、「この3撃」の間は数分にも感じられるほどに濃密な時間だった。


「やった――のか?」


 トールはようやく言葉を発する。


「――さすがです、トールさん! 今の技のキレ、これまでで最高でしたよ!」


と、ラムが背中から歓声を上げた。


 すると、玉座の裏から2体の全身フードを被った何者かがすぅと現れる。

 体型から見るに、人族と同様に2足歩行するもののようだが、

 顔の形、皮膚の色などの個体特徴は全く分からない。


「――!? 敵!? まだいたのか!?」


 トールは構えを崩さず、その2体の得体の知れないものたちに体を向ける。が、その声に静かにラムが反応する。


「――《《治癒術師》》たちですよ、トールさん。あの者たちは、攻撃しては来ません」



『ふっ、ラムディエル、か――』


 トールの頭の中に、『音』が響く。人族とはあきらかに違う異質な「声」――。

 しかしながら、言葉ははっきりと聞き取れ、理解もできる。


『――今度は何を企んでいるのか。まあ、我々には関係の無いことだ。我々は我々の使命を果たすのみ――。ラムディエル、さらばだ』


 そう言ったかと思うと、その者たちはすぅと虚空に消えてしまった。


 トールはまだ剣を構えたままだ。


「今のが治癒術師? なんだかおっかない奴らだな。それに――」

と、ラムに、今ほど奴らが言っていた意味を問おうとしたのだが、

「あれらは、魔将の直属ですからね――。ですが、攻撃力はほとんどありません。あれらの使命は、『ロードの管理』と『脅威となる人族の存在の報告』です――」

と、その言葉を遮るように、ラムに、先回りされて答えられてしまう。


 トールが聞きたかったのはそれだけではなかったが、ラムはすでに討伐したゴブリン・ロードに屈みこみ、『取り込み』の態勢に入ってしまった。

 トールは、深掘りするのは今ではないかと悟り、ラムが自分から話す日が来るだろうかと、この場はそれ以上追及することを止めることにした。


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