第28話 トールの実力
「こんなに――!?」
トールはテーブルの上に並べられた金貨銀貨の額を見て、さすがに驚きの声を上げる。
「――はい。正当な金額ですので、どうぞお納めください。あのう――」
受付のお姉さんが何か言いたそうにしている。そりゃあそうだろう、トールは今日が二日目の冒険者なのだ。
昨日の報酬額との差に、さすがに不自然さがぬぐえない。
トールは、「はい、なにか?」と、少し構えたふうの応答をしてしまう。
「――いえ、なんでもないんです。気にしないでください。お疲れさまでした。明日も頑張ってくださいね」
「あ、はい。あまり張り切り過ぎないように、頑張ります――」
トールはお姉さんにそう告げると、そそくさと金貨類を腰のポーチに片づけ、そのままギルドをあとにした。
「――何か問題でもありましたか?」
と、カウンターから少し離れていたラムが、トールの後に続いて表に出るなり、聞いてくる。
「ラム、ちょっと、まずかったかもしれないぞ?」
と、答えるトール。
昨日の報酬額が250ロピだったのに対して、今日の報酬額は1050ロピだった。
昨日のおおよそ4倍以上だ。
初日との差がありすぎる――。
討伐証に記録されている討伐個体数は、読取器に掛けないとわからない仕様になっているため、トールに確かめるすべはないのだが、個人的な記憶を辿ると、たしか、子鬼が40体に、少し大きめのやつが8体だったと思う。
子鬼は初級クエスト対象モンスターであるはずだから、それ程土兎と報酬の差はないだろうから、おそらく、これほどの額になったのは、大きい子鬼を討伐したからに違いない。
「ラム、あの大きめの子鬼って青銅級対象モンスターなんだよな?」
「え? あ、いえ、子鬼リーダーは鋼鉄級対象ですよ?」
「やっぱり――」
「どうかしましたか?」
「ギルドの方に訝しがられたかもしれない。何か不正をしてないかと――」
「そんな――。討伐証の記録がそうなってるのでしょう? あれを改ざんするのはなかなかに大変――あっ」
「改ざんできるのか――」
「あ、いえ。出来ないことはないですが、結構な魔力を消費しますし、今日は私、何もしてませんよ?」
「もちろんだ。それはよくわかってる。俺が倒してしまったことには違いないんだからな――」
「そうですよ」
トールはどうするべきかと思案する。
事実として、自分の実力がそこに至っているのだから、なにも細工をする必要は本来、無い。
しかし、過ぎたるはなんとかと言うとおり、異常すぎる実力は、ときに人から在らぬ疑いを掛けられるものだ。
「――トールさん……」と、ラムが遠慮がちにトールに声を掛けてきた。
「なんだ?」と、応じるトール。
「実力を隠す必要はないと思います――」
「え?」
そして、ラムがその理由を話し始めた。




