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第15話 適格検査を突破せよ


 トールの隣に立っている女は()()()()()「ラム」だ。

 決して、別の人間ではない。


 だが、トールの右腕はしっかりと存在している。


 トールは()()利き腕でペンを執ると、「冒険者登録票」に記入し終え、受付の女性に手渡した。


「これで、いいかな?」


「あ、はい、今確認いたしますので――」

そう言って受け取った登録票に目を通す女性はしばらく票の上の文字を目でなぞっていたが、数秒のちに、

「――はい。記述の方は漏れはありませんね。オッケーです。それでは、あちらの部屋で、適格審査を受けてください」


(来た――)


 適格審査――。

 まあいわゆる適性検査の様なものだ。

 10年前、トールはこの検査の折に、武器装備不可という「先天的状態異常」が発覚し、冒険者登録できなかったのだ。


 トールのこの「呪い」、「先天的状態異常」は未だに回復してはいない――。



 昨晩寝る前のことだ。


『ラム、冒険者登録には、適格審査というのがあってだな……』

と、トールは10年前の出来事をラムに話した。 


『なるほどー。わかりました。つまりその「呪い」がバレなければいいのですよね? 他愛のないことです。私に任せておいてください』

と、ラムは言ったきり、さっさと毛布をかぶって寝てしまったのだった。



(本当に大丈夫なんだろうな――)

と、心の中で念じると、

『大丈夫ですよ。すでに対策は考えてありますから。心配しないで――』

と、頭の中に声が響いてくる。


 トールはラムを部屋の外に残して、高鳴る鼓動を抑えながら、ゆっくりと検査室の扉を開けて中に入る。


「トール・レイズ、25歳か――。少し年を食っているようだが……。まあいい。別に冒険者になるのに年齢制限があるわけではないのだからな――。そこに掛けてゆっくり気持ちを落ち着けていたまえ」


 と、男性の検査官が指示をする。この男は『聖職者ビショップ』であり、トールに掛っている「呪い」や「状態異常」を発見し、冒険者登録の障害になるものがないかを判断するのが役割だ。


 トールは言われるままに部屋の中央付近に置いてある椅子に腰かけた。


(ラム、本当に――)

『はい、準備オッケーです。いつでもいいですよ――』


「ふむ。特に《《問題はない》》ようだ――。いいよ、君。合格だ。受付にこれをもって戻って手続きを完了しなさい」


 そう言って検査官は、検査合格証をトールに手渡すと、次の検査の準備にかかった。


「い、いいんですか? 本当に――?」


 トールは思わず、検査官の背中に向かって問いただしてしまった。


「――なんだね、君? 何か問題でもあるのか? 私の見立ては外れることは無い。私も忙しいんだ。早く行きなさい」

「あ、いえ。そんなことはありません。あの、ありがとうございました」


(いったいどうなっている――?)

『ね? 大丈夫でしたでしょ?』


 扉を開けて表に出ると、そこにラムが立っていて、ぱちりと片目をしばたいて見せた。

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