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第14話 「腕」と「ラム」、どっち?


 青狼暦648年春――。


 トールは交易都市サンザーレの冒険者ギルドに「再び」足を踏み入れた。


 10年前――。

 トールは夢と希望を胸に秘め、ここへやってきたが、思いもしない結末に涙したことを思い出す。


 その後、父の後を継ぐ為に木こりの道を歩み始めたが、冒険者への夢はくすぶりつづけていた。武器が装備できなくても、何か方法は無いかと模索し続けていた。

 数年間、そのように毎日を過ごしていたが、それもいつしか忘れてしまっていた。それでも、日課となった身体の鍛錬だけは、日々続けてきたのだが――。

 しかしそれは、冒険者になるためではなく、森で魔物に遭遇した時の用心の為という目的に置き換わっていたのは否めない。


 ただ、そのおかげで、身体能力は10年前よりは格段に向上している。木こりの日々も無駄ではなかった。


(まだ、間に合う――)


 そう自分に言い聞かせ、カウンターへと向かう。


 受付の女性が、こちらにはたと気が付き、席に着く。そして、第一声――。


「えーと、『初めましての方々』ですよね? ご依頼の要請ですか? それとも、別の街から来られた冒険者の方たちですか?」


 当然の反応だ――。たしかに、この年齢で、冒険者登録しに来たというものはごく稀だろう。


 トールは、一瞬言葉に詰まった。


「いいえ。この人は冒険者登録をしに来たんです。お姉さん、手続して頂けますか?」


 トールの隣から同年代の女が代わりにすらりと答える。ラムだった。


 

 昨晩のこと――。


「お前がその格好でいる間は、俺の腕は無くなってしまうのか――。そりゃそうだよな……」

トールは自身の無くなっている腕の先を見ながらそう言った。


()()()()()()()()ですよ? トールさんは、どっちがいいですか? 私がこの格好で付いているのと、居ないのと――」

と、ラム。


 トールは一瞬、ラムの言っていることが呑み込めなかった。今、そんなこともない、と言わなかったか?

 旅をするなら、パートナーはいた方が何かと都合はいいだろうとは思うが――。


「腕が無いのは困る、かな――」

と、トール。

「腕が無くならなければ、この格好で居てもいいということですね?」

と、ラム。


「まあ、そうだ。旅をするなら一人よりは二人の方がいいかな、とは思う」

「そうですかぁ! 我ながら、この格好よく出来てるんで気に入ってまして。それなら、腕をつけておきながら、この格好でいることにしますね?」


「そんなこと、出来るのか?」

「トールさん、わたしを舐めないでくださいよ? 言ったでしょ、私は高位のスライムだって。魔力補給さえしっかりできてれば、そんなこと朝飯前ですよ。見ててください」 


 そう言って、ラムはするすると指先から触手を伸ばすと、トールの腕を再び再生してみせる。そうして、再生し終わると、


「こうやって、『糸』を繋いでおけば、魔力を供給できるんで、可能なんですよ」


と、にこりと笑って見せたのだった。


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