第1話 夢見る少年
「いってきま~す!」
天気は快晴、風は心地よく吹いて、少年の心は朝から踊っていた。
少年の名は、トール・レイズと言った。年齢は15歳。先週の週末に幼年学校を卒業したばかりだ。
この国――クリレール王国では、15歳の春になると、各自で進路を決定することが許されていた。
さらに高度な勉学を志すのであれば高等学園へ。手に技術をつけたいのであれば技術訓練校や職人工房の門を叩く。
また、各生家の生業を継ぐ為に親元で修行に入るものもいれば、見聞を広めるために諸国を旅してまわるものもいた。
そんな中、幾らかのものが訪れる場所として、「冒険者ギルド」というものもある。
冒険者――。
いわば、「便利屋」「なんでも屋」とも称されることもある彼らだが、数千人に一人程度の割合で、「勇者」や「英雄」と呼称されるものが現れる。
「勇者」とは魔族を殲滅し魔王軍を退けるほどの軍指揮能力および統率力を持つものであり、「英雄」とはまさしく一騎当千の戦闘力をもって戦場の動向を一変させる力を持つものを指している。
このトールもまた、そんな「勇者」「英雄」を夢見る普通の少年である。
――いや、「だった」。
「ただいま……」
そう力なく項垂れたトールは、昼すぎにはすでに生家に戻って来た。
トールの父母がさすがに驚いて、トールに何があったかと訊ねると、トールはただ一言、
「僕は呪われているんだって――」
と、そう返し、自室に籠ってしまった。
事情を確認するために、父親が冒険者ギルドまで足を運んで聞いたところ、ギルドマスターと名乗る男から衝撃的な事実を知らされることになる。
「息子さん、トール・レイズ君は、武器が装備できない先天的状態異常を有しているんです……」
先天的状態異常――。
いわゆる【デバフ】というものらしい。後発的な状態異常であれば、魔法を施術することで解呪することができる場合もあるが、先天的なものに関してこれを解呪する術は、現在の魔術体系の中では発見されていないという。
「そんな――。どうにもならないのですか?」
と、追いすがる父だったが、ギルマスの返答は重く、残酷なものだった。
「――武器は装備できませんが、道具類は扱えるんです。聞くところによると、あなたの生業は『木こり』らしいですね。息子さんにはその道を歩まれることをお勧めします。もしくは、勉学や技術者という道も――」
「わかりました。ありがとうございます。お時間を取っていただき感謝いたします――」
トールの父はそう言って辞するしかなかった。




