第97話 ポジションの適性を見定める
「すまない遅くなって。御野ヶ島高校3年生、原塚 月男だ。改めてよろしくお願いします!」
「おおっ! 原塚、また一緒にやれて俺たち嬉しいぜ〜。この連合チームでもよろしくな!」
「勝崎たちもいるから俺も気分的にやりやすくて助かる。こっちこそよろしく!」
唯一の離島からのメンバーということで来るのが遅れた原塚さんだが、元気な姿を見せてくれて良かった。
ちなみに原塚さんと勝崎さんたち升田高校のメンバーは別の連合チームで活動していたのだが、そこも先日解散してしまったのだ。
まあそれはともかくとして、既に合同練習は始まっているが、これで全員揃って練習できる。
午前中は守備練習と投球練習なのだが、実はまだ本格的には始めていないので丁度いいタイミングだ。
「それじゃあ行くよ、ひょ〜ろくくん!」
「バッチコイです〜!」
ノックバットを握った古池監督が強めのゴロを2遊間ど真ん中へと転がしてセンターへと抜けていく……と思ったのだが。
逆シングルで掬い上げるように上手くグラブに収めると、踏ん張ってから即座に矢のような送球がファーストへ飛んでいく!
「ナイスだひょ〜ろくくん!」
バシッ! とファーストで受けたしょーたが声を張り上げた。
「えへへ〜、どうもです〜!」
「セカンドは今のところひょ〜ろくくんが最有力かな。カバーできる範囲が広いし、あの体勢から強い送球ができるのもポイント高い」
古池監督からも褒められて照れるひょ〜ろくくん。
実のところ、彼が入部した時はここまで期待はしていなかったのだが……あの小さくてガリガリ……もとい華奢な身体つきの何処から出てくるのかと思うくらいの俊敏さと肩の強さ。
本人は守備がウリだと言ってたが、正直言えば嬉しい誤算と言っていい。
でもバッティングは見た目通りの非力さなので、やっぱりよくわからねーヤツである。
「こっちもお願いします!」
「それじゃ行くよ中地くん! それっ!」
今度は三遊間へと鋭い打球が。もう少しで届きそう……だったが。
「クソッ、グラブの先を抜けてった! もう一丁!」
「よし、次行くぞ!」
うーん。頑張ってくれてるとは思うけど、大岡に比べると動きが鈍くグラブ捌きも今ひとつ。
で、中地さんは誰かというと……升田高校3人組の一人で定位置はショート。
まあ、ファーストもできるらしいしバッティング次第でポジションが決まるかな。
って、なんか自分でも上から目線みたいになっちゃって調子に乗ってるなと思う。
こんな時、別府さんや姉ちゃんが傍にいたら戒めてくれるのに……だが今は2人と進む道が違うのだ。自分で気をつけるしかない。
それはともかく、今日の守備練習はまずみんなの適性ポジションを見定めることが目標だ。
連合チームゆえにポジション被りや誰もいないということもあるので……最初にある程度決めておかないと、夏の大会までそれほど余裕はない。
「サード、強い打球をよく受け止めた!」
「へへへ、あざっす!」
サードは埜邑工業の田白が一歩リードというところか。守備範囲は広いとは言えないけど、ホットコーナーであるサードで強い打球に物怖じしないのはピッチャーとして心強い。
「いやいや、サードなら僕ちんも忘れちゃいやんですよぉ〜!」
おっと松花高校の新入生、近海もいるんだった。こちらはむしろ深めにポジション取って動きの良さで強い打球を処理してる。
口調は生意気だが言うだけのことはやってるし、競争があるのは良いことだと思う。
さて内野では意外にもファーストがまだ決まらない。送球の的として、できれば背が高く身体がしなやかな方がいいのだが。
と、ここでオレの頭に思い浮かんだのはあの人。それは古池監督も同じらしく、その人がウォーミングアップが終わったタイミングで声を掛ける。
「原塚くん! ちょっとファーストやってみない?」
「でも自分は旧連合チームでは外野手でしたが」
「まあ試しにやってごらんよ」
そしてファーストミットをしょーたから受け取った原塚さんはちょっと緊張しながらファーストベースを踏んで構える。
「それじゃもう一回サード行くよ近海くん!」
「バッチコイだっぴょ〜!」
アレな掛け声とは裏腹に強い送球がファーストへ。ちょっとキツいかと思ったのだが。
バシッ! と小気味良い捕球音でボールがミットに収まった。
「な、なんとかうまく捕れた!」
「いいぞ原塚くん! それじゃ今度はショート中地くんに行くぞ!」
「しまった、送球がワンバウンドになりそう!」
「えっと、こうすれば取りやすそうだ!」
バシッ! と原塚さんは見事にワンバンした低い送球を捕ったのだが、その姿勢はオレたちみんなを驚愕させた。
なんと前後に180度開脚で姿勢を低くして捕球……これは凄すぎて少し間をおいてみんなの声が出た。
「すげー! さすが元体操選手!」
「これもうファースト決まりじゃねーの!?」
確かに原塚さんならどんなクソ送球でもどうにかしてくれそうだ。
まあ決まりかどうかはともかく、有力候補に浮上したのは間違いない。
「オージロウくん! 気になるのは分かるけどそろそろ投球練習に集中しないと」
「あ、すみません勝崎さん」
さて、投球練習の方もちゃんとやらないと。特に轍くんの力量を早く見てみたい。




