第95話 5校連合で合同練習
「よぉ〜。久しぶりだなぁオージロウ、しょーたぁ!」
「うっす」
「阿戸さんに大岡! おはようっす」
「おはようです」
「あ、あの〜。お、おはようございます〜」
「あ〜? その坊主がそっちの新入部員か。声が小せえぞコラァ!」
「ひいっ! オージロウさん、あの怖い人はなんなんですか? ホントに野球部員なんですか?」
「大丈夫だよひょ〜ろくくん。阿戸さんは確かに見た目と喋り方はいかにもチャラいヤンキーだけど、根は面倒見がいい気さくな先輩だよ」
「おいコラァ! 誰がチャラいヤンキーだぁ!」
えっ! 自覚してそのキャラを通してたんじゃなかったのかよ。今更ながら驚かされたぜ。
でもまあそういうのはひとまず置いといて。
オレたちは久しぶりに練習の場で再会できたことを喜び合い、自然と挨拶の声が弾む。
今日はゴールデンウイークが終わってから2週間後の土曜日。
つまり早くも5月の中旬なのだが、遂に新たな5校連合チームによる初の合同練習に臨めるのだ。
場所は連合チームの1つである埜邑工業高校のグラウンドで行う。
元々はスポーツが盛んだった私学だけあって広くて遠慮なく活動できるのと、位置的に松花高校や御野ヶ島高校の移動の負担を最も少なく抑えられるからだ。
おっと、まだ言ってなかったけど……御野ヶ島高校の原塚さんも参加を決意してくれたのだ!
本人曰く、あの打球の感触が忘れられない、また打ちたいんだと。
やっぱりバッティングは野球をやる上での醍醐味の一つだし、それに目覚めてくれたのは誘った側としてとても嬉しい。
「おーい! オージロウくーん!」
後ろからオレを呼ぶ声……振り向くと埜邑工業の3人が校門まで迎えに来てくれている。
「あっ。そっちが松花高校の人たちっすか? おはようございます、俺は埜邑工業2年の田白です」
「同じく能町っす。で、コイツが1年生の轍。よろしくお願いします」
「よ、よろしく、です……」
「俺は阿戸だ、よろしく……それにしても今年の1年は元気がねえヤツばっかだなぁ、オージロウよぉ」
「それはたまたま2人がおとなしいってだけですよ。それを言うなら松花だって新入部員が1人いるって聞いてますけど?」
「もしかして僕ちんのこと話してる〜? 僕ちんは近海。よろしくですぅ〜!」
「お、おう。こちらこそよろしくな」
「オージロウくんってさあ、すげー球投げてゴッツいホームラン打つんだよねえー? 阿戸くんから聞いて会えるのが楽しみで……実物はなんかずんぐりむっくりだけど、これはこれでなんかいいよね〜!」
「あっそう。でも姿だけじゃなくてさ、あとでいろいろ見せてやるよ」
うーん。某暴走族マンガとかで先輩をくん付けで呼ぶヤンキー文化を垣間見たことはあるが、それを体感することになるとは。
まあ今のところはヤンキーというよりも生意気キャラってとこだけど、松花の生徒なので阿戸さんや大岡がそれでよければオレがどうこう言う筋合いはない。
それに連合チームはいろいろな奴が集まるのが面白さでもあるわけで。
「あらまあ。賑やかなのが集まって楽しそうやねぇ〜」
おっと。いつの間にか埜邑工業野球部顧問の笹木先生も迎えに来ていた。
全く気配を感じなかった。剣道経験者らしいが気配を消す術でも会得してるのだろうかというぐらいに。
はんなりした雰囲気の女性だが、実は一番油断ならない相手だったりして。
「おはようさん。悪いね、ウチのワルガキどもが騒がしくて。調子に乗りすぎたらアタシが一喝するから」
「いえいえ上中野監督、若い子は元気なくらいがええと思うんで」
「おはようございます。連合に参加して早々にグラウンドを使わせていただいて感謝してます」
「古池監督、なんか見た目より堅苦しいお人やねえ。そんなん気にせんでええよ。ところであとの人たちは」
「升田高校の人たちと原塚くんかい? アタシらもまだ会ってないよ」
「原塚くんは、定期連絡船のダイヤの関係でちょっと遅れてくるって連絡を受けてます。升田高校の人たちは分からないですね」
何やってんだあの3人……ウチから比較的近い距離にある学校なのに同じ電車で見かけなかったし。
「す、すみませーん! 電車1つ乗り過ごして、おまけに途中で道を間違えちゃって!」
やっときたか……まあいいけどさ。
「こっちですー! もう集まってますから早くー!」
やれやれ。とりあえず予定通りに始められそうでなによりだ。
さて、今回の練習でこの連合チームの骨格をどれだけ形作れるのか……夏の大会まで2ヶ月切ってるし、少しでもチーム造りができればいいんだけど。




