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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
連合チーム再結成編

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第93話 キャッチボールしながら相手を知る

 パシィッ!!


 狭いバックネット裏の空間に革の甲高い捕球音が響き渡った。


 オレは埜邑工業野球部のわだちくんとキャッチボールをしている。


 今日は元々、顔合わせだけの予定だったので轍くんは制服姿なのだが、それでも投げたボールの質がとても良い。


 手首が柔らかいのか回転数が多いのも一目でわかるっていうか。


 背丈が185センチくらいと高いのもあって、左腕から軽く投げているのに途中からピュッと伸びてくるような軌道で向かってくるのだ。


「めっちゃいいボール来てるよ轍くん!」


「あ、あざっす」


「なんかキャッチボールだけだと勿体ないなー。やっぱりマウンドから投げたボールを受けてみたいぜ〜!」


 オレはわざとらしく大きな声で催促したあとにチラチラと周りを見回した。


 だが古池監督からはイマイチな反応しか返ってこない。


「制服姿でウォーミングアップが十分できない状況では無理させないほうがいいと思うよー!」


「だけどオレだってこの前、御野ヶ島高校に行った時にそんな感じで投げましたよー!?」


「そうなんだけど……轍くんは何年かブランクがあって野球を再開したばかりなんだろ? 無理はしないほうがいい、肩や肘を痛めてからでは遅い」


「……轍くんはどうなの?」


「すみません……ちょっとすぐに投げるのは」


「わかったよ。また今度、合同練習の際に見せてもらうから」


 ちぇ〜っ、見れないとなると余計に見たくなる。だけど監督の言う通りで、何かあったら取り返しがつかないから潔く諦めよう。


 でも本当に楽しみだ。夏の予選が始まる7月までまだ2ヶ月あるし、その間に中継ぎで2、3回だけでも投げられるようになってくれれば……。


 オレは継続してスタミナ強化の練習に取り組んでいるが、コールドゲーム以外は完投できるかまだまだ未知数だ。


 以前の連合チームでは頼れる先輩の石元さんにいつでもバトンタッチできるという安心感があったけど、これからは大岡に継投するまでを考えながら投げないといけない。


 だから間を繋ぐピッチャーはウチの連合チームではとても重要なのだ。


 って、相手が試合で役に立つかどうかばかりを考えてるなオレ。そうじゃなくて、まずは公式戦に出れることが連合チームの目的なのだ。


 だからもっと楽しくいかないと。しょーたとひょ〜ろくくんも田白と能町たちとで談笑しながらキャッチボールしてるし、オレも轍くんと楽しく会話しよう。


「轍くんはどんな持ち球があるの?」


「えーと……一応、スライダーだけっす。カーブっぽく横に流れていくのと、縦に落ちていくのと投げ分けてました」


 横に流れるのは左投手がよく投げるヤツっぽいな。変化が大きくてちょい緩いボール。


 キレが良ければそれだけでも結構抑えられるヤツじゃないか。ますます期待が高まる……のを我慢して話を続ける。


「じゃあ実質2つだね。リトルリーグだったらそれだけでも十分だと思う。いや高校でも結構いけるんじゃないかな」


 相変わらず質のいいボールをグラブで小気味良くパシッと受け取りながら思ったまま喋ったのだが、轍くんの反応はイマイチ要領を得ない。


「それなら、いいんすけど」


「なんか自信なさげだけど、ホントにいいボール投げてるんだって」


「はあ。でもこうやって今日初めて会った人とキャッチボールするだけでも緊張するのに、全然知らないバッターと対戦するなんて気が重いっていうか」


 そういや人見知りって言ってたな。その上慎重過ぎるというか。


 でもピッチャーって時には思い切った投球も必要なんだよなあ。少しでもみんなと一緒に練習に参加して慣れてほしいもんだ。


 などと考えながらボールを投げようとしたところで背後から唐突に聞き慣れた声がした。


「あれ? この人たちってもしかして埜邑工業の……今日は顔合わせだけって言ってなかったかしら?」


「うわっ! 姉ちゃん、後から急に声かけるなよ! って、今日は女子硬式野球部は練習休みなんじゃ」


「ええ、それで間違いないわよ。それでゆかりんと街に遊びに行くところなんだけど、ついでにオージロウの様子を見てからと思って」


「あっ、雛子様! ぼくに是非アドバイスをお願いします!」


「おれを差し置いて何を勝手に! 雛子さん、おれをビシビシ鍛えてください!」


 姉ちゃんの姿を見たひょ〜ろくくんとしょーたはキャッチボールを放り出して我先にと近づいてくる。


 姉ちゃんはちょっと困り顔でオレに視線を向けるが、既にオレが言って聞きいれる状態じゃねえ。


「……わかった。少しだけ相手してあげるけど……覚悟はできてるんでしょうね!?」


「はい、コーチ!」


「ぼくも、もちろんです!」


「じゃあとりあえず素振り500回!」


 やれやれ、これで2人ともとりあえず大人しくなるだろう。田白くんたちが呆れた様子で見ているが、オレはあえて何事もないかのように振る舞う。


「あらまあ。えらい綺麗な子がいてはるけど、もしかしてそちらのマネージャーさん?」


「……な、なによあの女。しょーたのヤツ、だらしのない顔でデレデレしちゃって……!」


 今度はお手洗いに行ってた埜邑工業顧問の笹木先生と女子マネの鯉沼さんが戻ってきた。タイミングとしては最悪かな……。


「あの、彼女はオレの姉ちゃんで女子硬式野球部のキャプテンなんだ。だからしょーたにちょっとアドバイスしてるだけで」


「……とてもアドバイスされてるだけに見えないんですけど? あたし、もう一回お手洗い行ってくる!」


「あらまあ、青春どすなあ」


 あーあ。結局こうなったか。オレは知らねーからな、しょーた。


「オージロウ、ちょっと!」


 姉ちゃんがなんか小さく手招きしてる。なんだよもう。


「どーしたのさ」


「道路側からこっちの様子を見てる怪しいのが3人いるんだけど」


 ホントだ。なんか覗き見してるような。もしかして他校のスパイ?


 オレはその方向をチラ見したが……しまった、気づかれて逃げ出しやがった!


「待てこらあっ!!」


 オレは思わず大声を出しながら追いかけ始めた。校門……いやグラウンドの通用口へ回らないと間に合わない。


 続いて監督たちも走り出して行方を追う。絶対に逃さねえぞ!

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