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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
春季大会編

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第80話 決着

 パシッ!


「ストライク! バッターアウト!」


「石元さん、ナイスフォークです! あと一つ、締まっていこー!」


「おーっ!!」

「オージロウくんもナイスキャッチ!」


 橘商業との試合も既に9回裏ツーアウト。


 そしてオレはDH解除してキャッチャーボックスに立っている。


 というのも8回表にしょーたが太ももに死球を食らって、大事を取って交代となったのだ。なにせ相手エース山之口さんの豪速球だし。


 オレは今まで控えキャッチャーとして練習してきたことを思い返しつつ石元さんのボールを受けている。


 特にブロッキングの練習は大いに役立っている。


 石元さんのフォークのワンバウンド処理を自信を持ってできているからだ。


 松花の上中野監督に課せられたノルマはキツかったけど……おかげで考えるより先に身体が動いてボールを止められている。


 確かに数をこなすことも必要な練習もあるんだなってこの場になって実感させられた。


 まあその辺りのことはともかく、これから勝利への最後の難関が立ちはだかる。


「まだ終わっとらんぞ……ここからウチが大逆転するんじゃからのう! ぬううんっ!」


 4番の谷下さん……強力な左のプルヒッターである。そして橘商業が得意とする集中打の起点になる選手だ。


 9回表に1点追加して4−1とリードはしてるものの油断ならない。


 基本的に配球の組み立ては石元さんにお願いしてるけど……ピッチャーとして対戦したオレの考えも混ぜていきたい。


 というわけで初球はこうだ!


「ボール!」


「なんじゃい小僧! マウンドでは強気だったがマスクをかぶると途端に外角にあからさまなボール球……へっぴり腰のリードではワシは打ち取れんぞ!」


 谷下さんから罵倒されたが無視。


 こういうのを受け止めるのもキャッチャーの役目……ピッチャーには気持ちよく投げてもらわないと。


 次も外角低めにボールとなるフォーク。


 ちなみに石元さんのフォークはややシュート方向に左打者から逃げるように落ちていく。


 そして3球目……。


「ボール! スリーボールノーストライク!」


「フンッ! ワシとの勝負を避けおったか。こんな見え見えの内角高めの釣り球、引っ掛かる道理などないわ!」


 まあ、一応振ってくれたら儲けもんだと思ってたけど……これで予定通り。


 そしてもちろん歩かせる気はない。


 4球目、オレは姿勢を低く構えてボールが来るのを待つ。


「内角低めか、カチ上げてくれるわ!」


 ブンッッ!!


「ストライク!」


「スライダーか、小癪な!」


 普通ならここは様子見で待つ場面だが……得意の内角に来たらこの人は振らずにいられないと思ったとおりだった。


 それでもコントロール抜群の石元さんだからできる配球……少しでも甘く入ったらスタンドまで一直線だったと思う。


 まあでも次が一番難しいな。


 思い切ってストレート……ストライクゾーン内だと合わせられそうな気がする。


 カーブは……中に入ると引っ張るのに絶好球となる。


 じゃあ5球目はこれで行こう。頼むぜ石元さん!


「内角ボール球……いやフォークか!」


 ブンッッ!!


「ストライク! スリーボールツーストライク!」


 ふうっ! 絶妙なところに決まった。


 フロントドアっぽく内角ギリギリからストライクゾーンの中へ入っていく、シュート変化のフォーク!


 一瞬迷ったのでスイングの軌道を合わせられなかった……というか迷わせる場所に投げきった石元さんの制球が光るボールだった。


 さあ最後はどうしよう。


 どこならバットを振らせることができるのか……ここで行こう。


 オレはコースを絞るように低く小さく構える。


 スリーボールから一転して後が無い状態で追い込まれたバッターが振らざるを得ない場所に。


「真ん中低め! どれじゃい!」


 迷ってる暇はないと思うよ。振るか見送るか決めないと!


「……ここじゃあ!!」


 ブンッッ!!


「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!」


 おっしゃあ! 外へ逃げていくフォークを空振りさせての三振!


 谷下さんは迷って結局カットしようとしたが……キレのいいフォークを追いかけても間に合わなかった。


 オレはワンバウンドしたボールをキッチリブロッキングし、しまったという表情の谷下さんに難なくタッチ。


 オレたちの、連合チームの勝利が、夏のシード権獲得が決定したのだ!


 すぐにはしゃぎたかったが……まずは整列して互いに礼をして健闘を称え合う。


「小僧……いやオージロウ! お前にはやられっぱなしになったが悔いはない。完敗じゃあ!」


「あざっす谷下さん」


「それにしても無茶苦茶じゃのう。まさかの三刀流とは」


「いや、単にウチは人手不足なだけです、吉高さん」


「おーい大根、お前も何か……あいつは気難しいから勘弁してやって」


「問題ないっす。それより山之口さんは8回で降板しましたけど」


「ああ、全力出し切って背中と腰を痛めたんで休んでる。まあいつものことで特に背筋に負荷がかかりすぎるんでな、あの投げ方は」

 

「そうですか。次こそはストレートをキッチリ打つと伝えておいてください」


「言うねえオージロウくん。まあ夏はこの借りを返すからそっちこそ楽しみにしておいて」


 こうして勝利とシード権を手に入れたオレたち。


 何もかも怖いくらいに上手くいってる……だけどこのあと思わぬ展開になることをオレたちはまだ知らなかった。

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