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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
春季大会編

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第79話 ストレートの正体

「オージロウくん、今のうちにちょっと聞いてほしいんだけど」


 8回表のウチの攻撃、先頭打者の大岡が打席に入ったところでウチの古池監督……この連合チームでは『部長』の役割でベンチ入りしているが、唐突に話しかけられた。


「なんすか急にあらたまって」


「橘商業のエース山之口のストレートの正体について……と言えば興味が湧くかな?」


「そ、それは是非とも!」


「すみません、俺たちにもお願いします」


「もちろんだよ別府くん。で、まずはジャイロ回転は知ってるよね?」


「はい。銃の弾丸みたいに回転軸が正面になるやつです。空気抵抗が少なくなって真っすぐ飛んでいく作用が強くなる、でいいですよね?」


「でもそれじゃスライダーみたいに落ちるボールになるはずですけど?」


「うん。マグヌス効果、つまりホップする要素が無いからね。で、ここからが本題。俺が大学で色んな文献やら計測機器での実験で研究したことからの推測なんだが……」


「は、はい」


「ジャイロの回転軸が右に傾いてフォーシームのバックスピンの要素も加わったボールが山之口のストレート」


「えっ……」


「で、同じ傾きでツーシームなのがチェンジアップ。いわゆるツーシームジャイロに近い感じで強いブレーキがかかってる」


「……イメージが湧かないんですけど?」


「まあ、ストレートの方は回転だけだとカットボールに近いのかな。バッターが打つポイントで実は少し変化してる」


「は、はあ」


「あと、初速と終速の差がかなり小さい上にあの倒れ込むような投球フォームでリリースポイントをかなり前に置いてるから、余計に加速してくるように見えちゃう」


「それで目がついていかなくて、投げるともうキャッチャーミットに収まっているように感じるってわけですか」


「それと、キャッチャーミットまで初速を維持できる山之口のパワーはもちろん凄まじい。よく体が壊れないもんだよ」


「で、攻略法は」


「……そこは各々工夫してくれたまえ。それじゃ解散!」


「え〜っ! そんな適当な!」


「あえて言えばタイミングの取り方をいつもより違うやり方にするしかないよ。そのヒントになる情報は出したつもりだけどね」


「ストライク、バッターアウト!」


 おっと、大岡が三振してしまった。


 オレもネクストバッターズサークルへ行かないと。それにしてもどうやって打てばいいのか。


 前の打席では一か八かで勝負をかけてホームランを打ったけど……毎回同じように打てるかは分からない。


 どうしようかな。とか考えているとしょーたの悲鳴が聞こえてきた。


「うわあ―――っ!」


「しょーた、大丈夫か! どこに当たったんだ、立てるか!?」


「だ、大丈夫。太ももをかすめただけでそんなに痛くない、心配しなくていいよ」


「スマンな。タケシが珍しく手を滑らせたらしい」


「デッドボール! ランナー1塁へ」


 これまではあの豪快というか荒々しい投球フォームの割にはほとんど制球が乱れなかった相手エース山之口だが、さすがに疲労の色が顔に表れている。


 やっぱり身体に負担がかかる投げ方なのだろう。


 そしてタイムがかかり相手ベンチから伝令が出てきた。もしかしてピッチャー交代だろうか。


 だけどマウンドでの話し声の中から『俺はまだ大丈夫、今度はあの小僧を抑える』と周りに話しかけている山之口の声が聞こえてきた。


 そして伝令はそのまま引き上げていった……ということで勝負は続行だ。


「……フンッッッ!!」


 な、なんなんだいきなり!


 マウンドでは山之口が姿勢を屈めて両拳を握りしめ、まるで気でも溜めるかのように鬼気迫る表情を見せている。


「ウチのタケシが気合い入れ直す時の儀式みたいなもんでな。つまりなんとしてもお前を絶対に抑えるって覚悟ってことなんよオージロウ!」


 キャッチャーの吉高がボソッと、だが語気を強めてオレに話しかけてきた。


 橘商業もここで勝負をかけるってことだ。エースが抑えることで打線にも勢いをつけて勝ちに行く、そんな気構えを感じ取った。


 というわけでオレも重心を低めにしてパワー負けしないように構える。


 さて、どのあたりに的を絞ろうかな。


 山之口はセットポジションで静止する。それだけなのに異様な圧力みたいなのを感じる。


 1塁ランナーのしょーたも隙を見出せないのかあまりリードせずにピッチャーとバッターの勝負を静観している。


 おもむろに左足を踏み出した山之口は、そこから一瞬で身体ごと右腕を振り下ろす!


「えりゃあああっ!!」


 内角ちょい低めかな。やっぱりさっきストレートをホームランにされたら初球はこうするのが投球術のセオリーだよね。


 オレは泳がないようにギリギリまで重心を後ろに残す。


 ボールの曲がり始めで重心を下げつつ踏み込んで。


 ボールゾーンに落ちてきたチェンジアップを思いっきりすくい上げる!


 バッシィ―――ンッ!!


 この前のWBC前の調整試合で某2刀流選手が片膝つきながら打ったシーンをイメージして振り切った。


 ボールになるチェンジアップ、早くスイングしたくなるのを我慢して……!


 高々と舞い上がった打球はライト後方のスタンドへと吸い込まれていく。


 ホームラン! 今日2発目、しかも2ランだ!


 ストレートも打ちたかったけど、確実に来そうなところでチェンジアップを攻略させてもらった。


 ストレートは次回の対戦まで楽しみに取っておくよ、山之口さん。


 これで2点リード。石元さんならこのまま試合を締めてくれる、そう確信する一撃となった。

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