表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
春季大会編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/185

第78話 球数と継投のタイミング

「オージロウくん。できれば左の中軸2人のトコまで行ってほしいけど……そういえば投球数はどれぐらいかな、古池監督?」


「えーと。6回裏までで95球ですね。これまで100球を超えて投げていないなら、そろそろ交代を考えてもいいのではと。蒼田監督」


「うーん。オージロウくんはどんな調子?」


「まだいけそうです」


「それじゃあ……行けるところまで行ってもらおうかな。石元にはもう準備始めさせるから、苦しくなってきたら何か合図出して。しょーたくんも頼んだよ」


「「わかりました」」


 回はもう終盤に入って7回裏。


 1−1の同点なのは変わらず……それにしても夏のシード権を獲得するのは、わかってはいたけど簡単じゃないぜ。


 さてこの回は相手の3番打者から。とりあえずサクッとアウトにして4番5番の中軸との勝負に専念しよう。


 と軽く考えていたのだが。


「ボール! フォアボール!」


 なんか急にストライクが入らなくなった。


 まあ3番打者には前の打席でプッシュバントを決められて出塁を許したから……なんとなく投げづらかったのかも。


「オージロウ!」


 しょーたが心配そうにこっちを見て声を出してきた。まあそりゃそうだよな、先頭打者にフォアボールって危険な兆候だし。


 でもオレはここから気持ちが高ぶってきてるのが自分でもわかって、むしろワクワクしてきてる。


 そういうわけで左腕で握りこぶしを作って大丈夫だと返すとそのままキャッチャーボックスに戻って座ってくれた。


 その信頼に応えなきゃ……と考えていると騒々しい声がバッターボックスから聞こえてきた。


「ぬううんっ! 勝ち越しのチャンス……今度こそは確実に捉えてスタンドに放り込む! 覚悟せい小僧!」


 4番のプルヒッター谷下の登場だ。向こうももちろん気合いが入って集中力MAXって感じだ。


 ここまでは外角でも引っ張りにかかるのを利用して打ち取ってきたけど……ここはなんとなくダメな気がする。


 ホームラン狙いで引っ張ると匂わせて外角にきたボールを逆らわずに打ち返す、そういう意味だと受け取った。


 終盤だからなりふり構ったり意地を通し抜くよりもチームの勝利優先の強い気持ちだと思う。


 しょーたは……幸いにも同じ考えのようだ。


 では初球はこれだ!


「ストライク!」


「……ぬうう!」


 内角ベルト付近に投げ込んだストレート、谷下はバットを振らずに見送った。


 これでこちらの考えは伝わったかな。


 その上で力でねじ伏せてやる。


 相手が集中打を放つのに必要な押せ押せムードの起点になるのを断ち切るにはこれが一番。


 オレはここでまずは谷下との勝負をつけるべくボールを握った左手に力を込める。


 だけど投球モーションではあえて全身を軽く踏み出して、そこから一気に左腕を振り抜く!


「うりゃあああっ!!!」


「続けて内角! ナメた真似を! ぬうううーんっ!!!」


 バシィーッ!!!


 互いの気持ちと気合がぶつかり合うように内角高めでボールとバットが衝突する音が激しく響く。


 ボールが押し込み続ける……が谷下も引き下がらない。


「負けられるかあああっ! ぬうううんっ!」


 バコーンッ!


 振り切ったバットからは快音……とはいえないどこか詰まり気味の打球音を残してボールは上空高く舞い上がった。


「ぬううっ! しくったわ! このワシが内角を引っ張り切れんなどと!」


 そんなことねーよ谷下さん。


 オレの全力ストレート……高回転でノビていくボールを捉えて打ち返したんだから。


 でもやっぱりバットの芯よりも少々上っ面だったかな、当たったのは。その分多く押し込めさせてもらった。


「アウト!」


 打球は右中間、ややセンター寄りでフェンスからは5メートルくらい手前かな。そこで阿戸さんがしっかりキャッチしてワンアウト。


 しかし油断できない。次は5番打者の大根おおね


 強い打球を放つ中距離打者で、前の座席では器用にもオレのストレートがノビ上がるところにバットのヘッドを合わせてサードの頭を越されてしまった。


 そして先制点の起点となった……その借りを返すためにもキッチリアウトにさせてもらう。


「どこにでも投げて来いや小僧! お前のボールなど、必ず外野まで運んでやるからのう!」


 相手の荒っぽい口調にはだいぶ慣れてきたが、それでもやっぱり一瞬心が反応してしまう。


 だがカッとならずに落ち着くんだと自分に言い聞かせる。


 それにオレはさっきの対戦で全力を出し切った……球数も101球と公式戦では未知の領域に達した。


 次の102球目で決着をつける。


 しょーたもオレの表情を見て悟ったようで、オレと同じ答えを出してきた。


 さあ行くぜ今日最後のボール!


 オレは自分を落ち着けるようにゆったり目の投球モーションで……最後も力の入れ具合を間違えないように全集中で投げ込んだ!


「うりゃあああっ!!」


「もうその雄叫びは聞き飽きたわ! しかもど真ん中に失投、もらいじゃああっ!!」


 ガッコォーンッ!


 失投じゃないよ、ちゃんと狙い通りに投げることができたんだから。


 これまで練習してきた中で最も実戦で使えるレベルになったボール……シュートがバットの根本にキマった!!


「し、痺れて堪らん! きさまぁ〜!!」


 大根さんも素晴らしい打撃技術だったよ、変化に気づいて反射的に内角打ちに変えてきたんだから。


 でもオレのシュートのキレが上回った。


 バットの根本で更にボールの上を叩いた打球はファーストの正面へ転がっていく。


 勢いがなくて1塁ランナーには進塁されてしまったけどキッチリこれでツーアウト!


 と、ここでウチのベンチからタイムがかかって石元さんがマウンドに向かってくる。


「オージロウくん! さすが、見事な投球だったよ! あとは俺に任せて休んでくれ」 


「いえ、ランナー残しちゃってすみません」


「いやいや、俺にも見せ場残してもらわないとさ」


 石元さんの場を和ますひと言でマウンドに集まった野手たちから笑いがこぼれる中、オレは安心してマウンドを降りた。


 そして……。


「ストライク、バッターアウト! スリーアウトチェンジ!」


「そんな〜。あのピッチャーがこんなボール持ってるなんて聞いてないよ〜!」


 6番打者吉高さんを新しく習得したフォークボールで仕留めた石元さんはどこかホッとした顔でベンチに戻ってきた。


 やっぱりランナー残ったままのリリーフは緊張するよね……でも本人の言う通りに見せ場でもあったのかベンチ内でみんなとはしゃいでいた。


 あとはウチが勝ち越すだけ。オレは打席でまたあの感触を味わいたい……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ