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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
春季大会編

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第75話 気負いすぎ

「うーん。まともに当てられずに前に飛ばせないとなると、手の打ちようが無いねえ」


「山之口がここまでの投手とは……今のところみんなボールが見えてないみたいです、蒼田監督」


「古池監督ならどうやって攻略します?」


「うーん。ストレートに狙いを絞ると変化球で絶妙にタイミングを外してきますし……セーフティーバントで揺さぶるのも難しそうで。ちょっと今すぐは思い浮かばないですね〜」


「ですよね……まあそれはこちらも同じなので。ここはしょーたくんに任せましょう」


 5回表のウチの攻撃中、ネクストバッターズサークルに向かおうとベンチを出ようとしたところで蒼田監督とウチの新監督古池先生の話し声が聞こえてきた。


 どうにもできない、か……まあ策を考える以前の状態ではある。


 相手エース山之口を攻略するどころか既に二者連続……前の回から合わせて連続三振を5人に伸ばされているのだ。


 そして打席のしょーたも既に追い込まれているが、なんとか出塁してくれ。そしたらオレが……しかしその願いは叶わなかった。


 ズバンッッ!!


「ストライク、バッターアウト!」


 結局、連続三振を6に伸ばされてしまった。


「残念だったなしょーた。バットを短く持ってなんとか当てようとしたのにさ」


「……とにかくボールの軌道を捉えきれない。8割……いや9割ストレートだってのに目が追いつかねーんだよ。はあ……」


「ため息とはらしくねーな」


「ああいう相手と対戦すると自分が凡人だって思い知らされる。打てる気がしねーんだ」


「そうか? 目が慣れてくれば打てないことはないんじゃないかな。6回表に仕留め……てやりたい」


「そう思えるのはオージロウだからだって。まあとにかくしっかり守って無失点でいこうぜ」


 マウンドに向かう途中まで一緒に歩いていたしょーたがサッと方向を変えてキャッチャーボックスへ向かっていく。


 なんかぶっきらぼうな言い方されたが……オレもそんなに自信があるわけじゃない。『仕留めてやる』って断言するのを思わずやめちまった。


 だけどどうにかして打たなきゃ勝てない。橘商業も夏のシード権を得るために必死で向かってきているのだから。


 さあ、これ以上こんなことで悩むのはやめよう。相手打線は細身だが静かな気迫で強烈な打球を放つ5番打者・大根おおねから始まるから全然油断できない。


「小僧。谷下を打ち取ったくらいで調子に乗るなよ」


 別にそんなわけじゃ……確かにさっきの回は仕留めてピンチを脱したが簡単ではなかった。


 でもまあ相手チームからはそう見えるのは仕方がない。それなら開き直って調子に乗ってビシッと抑えてやろうじゃないの。


 さてどこを攻めよう。しょーたからの要求は……外角低めか。


 前の打席ではショート大岡の守備でアウトにはしたけど、内角高めをいい当たりのライナーで飛ばされたからなぁ。まあ妥当な線か。


 ではまずは初球!


「うりゃああっ!」


「……」


 ズバンッ!


「ストライク!」


 うーん。手が出なかったのか狙い球と違うのか、表情ひとつ変えずにそのまま見送ったので見分けが全くつかない。


 でもこういうタイプは早く追い込んで考える余裕を無くさせるほうがいい。こっちが迷って考え過ぎるとむしろ危ない。


 というわけで続けて2球目!


「ストライク!」


 今度は内角低めいっぱいに決まった。そしてさっきと同じく反応せずに見送り。


 いや構わずに勝負を決めよう。相手の意図は分からんが力でねじ伏せれば済む。


 3球目は外角高めに強烈なバックスピンでノビるストレート……途中まではストライクに見えるボール球で三振に仕留めてやる!


「うりゃあああっ!」


 ビシッ! と指がかかり強い回転をかけたボールがノビ上がって……。


「……おりゃあっ!」


 バコォーン!


 なっ!? 軽くスイング……というかバットのヘッドをホップし始めたボールに最短距離でぶつけて、その打球がサードの頭上に飛んでいく!


 そして越えていった打球はレフトの横をフェンスまで転がっていき……。


「セーフ!」


「おっしゃ二塁打ぁー! さすが大根!」

「続け吉高ぁー!」


 ちくしょう、なんだよあの打ち方!


 いや打ったというより弾き返したというべきか。とにかくこっちのボールの力を利用されたようだ。


 ノーアウト2塁……ハッキリ言ってピンチだが、でも後続を抑えれば問題ない。


 大根はあまり足が速くないし、連続三振でセカンドに足止めしてやる。


「ボチボチと先制点……いや決勝点を取らせてもらおうかいのう〜! フフフッ!」


 ふざけんな、そう何度もマグレは通じねえんだよ。絶対に打たせるか!


 吉高への初球、オレは全力を込めて内角高めにストレートを投げる。


「うりゃああっ!」


「予測通り! 気負いすぎちゃうかなオージロウくん!」


 ガコォッ!!


 詰まらせたが打ち返された! クソッ、思ったように回転がかからずに棒球になっちまった!


 フラフラと上がった打球はセカンドを越えていってセンター前にポトリと落ちた。


 セカンドランナーは……こうなるのが分かってたように既に三塁ベースを回っている。


 このままじゃあ……!


「セーフ! ランナーホームイン!」


「遂に取ったぞ先制点ー!」

「これでウチの勝ちは確定だー!」


 橘商業のベンチはもう勝ったかのように盛り上がり、吉高はベース上でガッツポーズで応えている。


 やられた……これが橘商業が得意とする中軸の連打ってわけか。


 いや、その前に相手の意表を突いた打ち方でヒットを打たれてカッとなってしまって……。


 山之口の攻略法が見えない状況での失点はまさにどん底に突き落とされた気分だ。


 でもこれで抑えないと。さっきのは反省するが今は気持ちを切り替えてキッチリ回転をかけた強いボールを投げ込んでいこう。

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