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第7話 練習メニューを考えてもらう

「なあ、姉ちゃん。効率がよくて、あまりキツくなくて、だけどすぐに実力がメキメキと伸びていく練習メニューを考えてくれよ」


 オレは帰宅してから晩メシ食って、風呂入って落ち着いてから、先にリビングでくつろいでいる姉・雛子ひなこに声をかけた。


 それにしても風呂上がりでノースリーブ短パン姿の姉ちゃんは弟から見てもこう、健康的な色気を感じるというか……まあどうでもいい話だけど。


 それはともかく、姉ちゃんはオレの話を聞いた直後から眉間に少しだけ皺を寄せて怪訝な表情を見せると、つっけんどんに言い返してきた。


「あのね。そんな都合が良すぎる練習なんてあるわけないでしょう? そもそも、何故わたしが考えてあげないといけないのかしら?」


「だって言ってたじゃないか。『必要な時は手伝う』って」


「そりゃそうだけど……だいたい、そんなことは監督に相談すべきじゃないの?」


「監督っていうか、顧問の中原先生はスポーツ経験ゼロの国語教師なんだけど。相談するだけ無駄だろ?」


「そういうことか……。うーん、どうしよっかな」


「先に言っとくけど、練習場所はグラウンドのバックネット裏のスペースだけだから。それも込みでよろしく〜!」


「まだ引き受けるなんて言ってないでしょ! それよりもバックネット裏だけって、何それ。いくらなんでもひどいじゃない!」


「元はマウンドだった場所まで均されちゃって、今はサッカー部がそこを使ってるんだよ。で、オレたちはそこへ行けって」


「そんなこと言われて黙って引き下がったっていうの?」


「無茶言うなよ。こっちは2人で多勢に無勢だし、顧問はやる気無しで頼りにならないし。その上、活動再開直後に余計なトラブル起こしたら廃部待ったなしだぜ」


 姉ちゃんは基本的にしっかり者だが、時々こうやってムキになるっていうか。それをオレがなだめるってのがいつものパターンだ。


「……それで、部員はもう集まったの?」


「全然見込み無し。だから他の高校との連合チームに参加させてもらおうかって」


「そのあては?」


「まだ何もしてねーよ。だって秋季大会はもう間に合わないし、次の公式戦は春季大会まで無いんだ」


「それくらい知ってるわよ! でも今から声かけておかないと。のんびりしてたら間に合わないかもよ」


「わかったけど、その前に練習をだな」


「……わかりました。じゃあ、練習メニュー考えとくから。明日の放課後にバックネット裏で待ってて」


「引き受けてくれるか? サンキュー姉ちゃん!」


「わたしの弟をグラウンドの隅に追いやった人たち……いえ学校を見返してやらないとねぇ、ふふふ」


「なんか言った?」


「何でもない。それよりも授業の予習復習ちゃんとやるのよ!」


「……わーってるよ」


 と返事したものの、久し振りの練習で疲れたオレは、自分のベッドに寝転ぶとあっという間に眠りの世界に落ちてしまったのであった。



 そして翌日。早くも放課後となり、しょーたと2人で体育倉庫室から用具と防球ネットを出してきて、バックネット裏で待機している。


「お姉さん、どんな練習メニュー考えてきてくれるのかな? あ〜、早く会いたい!」


「しょーたは目的を履き違えてねーか? メニューを見せてもらうんだよ」


「いいじゃないかどちらでも。はぁ〜!」


「なんかコイツと会わせるのイヤだな」


「お待たせ! オージロウ、田中くん」


「遅いぞ姉ちゃん……何だその格好は!?」


「ふふふ。やるからには気合い入れないとね」


 そう言って腕組みして胸を張る姉ちゃんは……制服のシャツの上からジャージをマント代わりに羽織り、どこから持ってきたのかわからんグラサンを顔にかけ、何故か◯ューヨーク◯ンキースの帽子を深くかぶって現れたのであった。

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