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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
春季大会編

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第67話 春季大会開幕

 バシィーーンッ!!


 2打席連続で打球がライトスタンド中段へ……!


 4月上旬から始まった春季大会だが、まずは県を4地区に分けてのトーナメント。


 それに勝ち上った16校が県大会の本戦を戦い、ベスト8に夏の地方予選のシードが与えられるのだ。


 今日は我らが連合チームの主体である多岐川高校が所属する地区同士の対戦。


 ちなみに球場は多岐川高校のグラウンド内球場である。県の中でも田舎の地区なので設備が整った球場が少ないからだが、オレたちにとっては慣れた場所でありがたい。


 そして勝てば本大会出場というこの試合……5回表で既に10点差がついている。


 オレも2打席連続ホームランだが、それだけでなくウチの打線の勢いが止まらない。


 春のセンバツ補欠校であった強豪私学、多岐川第三との練習試合に勝ったことはみんなに想像以上の自信を与えてくれた。


 3月中に行った練習試合は全勝……そんな状態で大会に臨めているのだ。


 さて、そういうわけでこの試合の先発であるオレがそのまま締めくくって、相手には悪いがコールドゲームにさせてもらおう。


「うりゃあああっ!」


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!」


「いよっしゃあ!」


「オージロウ! 今日は気合いが乗って1安打13奪三振、ナイスピッチングだった!」


「マジかよしょーた!」


「おれが嘘言って何の得があるのさ!」


「これで本大会出場……オージロウくんとしょーたくんが入ってチームが順調に強くなっている。2人が頼もしくて仕方がないよ」


「そんな褒められると照れますよ別府さん」


「いやほんとーにスゲー活躍だったからもっと胸張りまくれってオージロウ!」


「あ、あざっす阿戸さん」


 チームメイトたちに褒められまくってなんかもうたまらない気分だぜ。


 いや大岡は相変わらず『まあまあやるじゃん』としか呟かないけど。アイツはそれでもかなり褒めてるらしいのだが。


 それはともかく……5回で終わったから1安打合わせても16人しかバッターボックスに入らなかったはず。


 オレのストレートは自分が思っているよりも凄い威力なんだな。みんな振り遅れていたし。


 なにせ今日も変化球は投げてない。右打者の内角に投げ込む際に微妙にしか変化しないカットボールもどきは投げてみたが大して意味はなかった。


 次からはアレを使うか……でもまだ試験段階だしどうしようかな。


「みんなおめでとう! 秋季大会の時は想像もしていなかったが、遂にベスト16……俺はもう嬉しくって……!」


「まだ泣くのは早いですって蒼田監督!」


「アタシも気持ちはわかるよ。ウチのワルガキどもがここまで野球に打ち込めるなんて……」


「だから最初に言ったじゃないっすか上中野監督! 俺らやるときゃやるんで!」


 多岐川、松花それぞれの監督と選手たちがお互いをねぎらってほっこりした空気が漂う。


「オージロウくん、しょーたくん。ここまで頑張ってきたのが報われましたね。本当に良かったです」


「これも中原先生が顧問を引き受けてくれたからです。おれ、本当に感謝してます」


「いえ、私は何も……」


 おっと、ここらが頃合いだな。オレはしょーたが中原先生と喋っている合間に石元さんにブロックサインを送った。


 そして……。


「あの、中原先生。今日で野球部の顧問から離れると聞いてますので。これをどうぞ」


「え!?……あ、ありがとうございます。こんな綺麗な花束いただいて……こんな風にねぎらってもらえるなんて夢みたいです」


「石元さんあざっす! お陰でサプライズ成功しました!」


 オレとしょーたは小遣いから石元さんに費用を渡しておいて代わりに用意してもらったのだ。


 4月から新卒だが野球経験者の先生が赴任したので、野球部の監督はその人に引き継ぐことになっている。


 そして今日の試合の終了をもって離任となったというわけだ。


「オレたち中原先生がいなかったら今どうしてるか想像もできない。だからせめて感謝の気持ちだけでもと思ったんです」


「ふふっ。私の方こそ感謝しています。実は部活の顧問なんてやりたくないと思ってたのですが……やってみるとオージロウくんたちの成長の様子が楽しくて」


「土日もオレたちに付き合ってもらって、本当にありがとうございました」


「まあ、大変なこともありましたけど。今ではいい経験になったと思っています」


「我々と一緒に甲子園を目指していただけると思っていたので残念です」


「アタシもさ。でもこれまで一緒に過ごせて楽しかったよ


「そんな、私には勿体ないお言葉をいただいて……蒼田監督、上中野監督」


「まあ、そちらの新任の監督とやらもこっちでついでに鍛えてやるから安心しな」


「あの、それは程々でお願いします」


 上中野監督の冗談でみんな笑いをこらえきれず、しんみりした空気が程よく和やかになった。オレはいい仲間たちと指導者に恵まれたよ本当に。


「でも完全にお別れじゃないんだろう? またいつでもおいでよ」


「はい。とりあえず女子硬式野球部の立ち上げが一段落したらまたお邪魔させていただきますね」


 実は中原先生には姉ちゃんが立ち上げ中である女子硬式野球部の顧問を引き受けてもらったのだ。


 だからこれからもグラウンドで顔を合わせることもある。


 それでもオレとしょーたは気持ちを伝えずにいられなかったのだ。


 それからしばらく中原先生を中心に話が盛り上がったあと、オレたちは帰路に着いた。


 次の対戦相手も気になるが……まずは休息だ。


 オレたちは先生のクルマに乗り込んで。今日だけは何も言うまいと誓ったのだが……。


「ぎやああああああっ! 先生! あ、安全運転でお願いしますぅ!」


「ちょっと! いつもよりギリギリ攻めてませんか?」


「……ふふふっ」


 上機嫌の中原先生は峠道のコーナーを鋭く攻めて抜けていくのであった。

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