第61話 スイッチヒッター
「うりゃああっ!」
ズバンッ!!
「ストライク! バッターアウト!」
ふう。これで11人連続で三振を奪った!
4回表の多岐川第三の攻撃中でツーアウト。
さすがにこの回はセーフティーバントを仕掛けられたりもしたんだけど……目いっぱい左腕を振って、球威で押しまくってバントさせなかった。
それはいいけど額から顔に伝ってくる汗が止まらない。ちょっと息も切れてきたしスタミナが心配になってきた。
だけどオレは今日の目標……5回までリードを保って投げきりたいんだ。
それにはこのあと対戦する3番木崎、4番津々木を抑えないと。ここが踏ん張りどころってわけだ。
「しょーたく〜ん。やっぱりキミのリードじゃなくてあのピッチャーが良かっただけなんだね」
「……ああそうさ」
「なんだあっさり認めるのか。まあ仲間に恵まれるのだけがキミの取り柄だし。中学時代なんて特にさ〜!」
「だからその仲間たちをもり立てるように頑張ってるよ」
「……ボクたちの活躍にタダ乗りしてたクセに。何が仲間だ!」
「……」
また木崎のヤツがしょーたに絡んでやがる。さっき2塁打を打ったのにまだ文句あんのかよ。
まあいい、今回も三振に打ち取ってグウの音も出ないようにしてやる。
さて初球は……何かおかしいな。
あっ! 木崎のヤツ!
スイッチヒッターなのは知ってるけどわざわざ左打席に立ちやがって。
しかもオープンスタンスか。左足はベースの方に寄せてるけど。
ナメた真似を……しょーたはどうする?
初球は外角低めか。それはいいけどボールゾーンに外せだあ?
馬鹿言え、こんなヤツは力で捻じ伏せる。
「うりゃああっ!」
バシィーッ!!
嘘だろっ! レフト線にほぼ平行に低いライナーが飛んでいって……。
「ファウル!」
危ねえー! ギリギリでファウルゾーン側に落ちた。
「オージロウー!!」
おっとしょーたが怒ってる。まあ指示通りじゃねえもんな。
そういや思い出した。しょーたが木崎について説明してた内容を。
木崎は小学生時代にテニスもやっていてバックハンド打ちが得意だったとか。
だから左打席はそれを生かした打ち方をしてくるって……今のはダウンザラインっぽいな。◯織選手がよくやってたやつ。
そうか。まあそれがわかってればもう大丈夫。
2球目は一応外角のボールゾーンにはずしたが予定通り見送られた。
あとは内角攻めだ。テニスならフットワークが使えるが野球ではバッターボックスの中しか動けない。
というわけで3球目は胸元目掛けてズバッと!
パシーン!
うわっ! なんだあれ、バットを寝かせ気味にしてボールの下を切るみたいな!
でもショートが取れそうなフライ……いや打球がなかなか落ちずに結局レフト前にポトリと落ちてしまった。
「しょーたく〜ん。ボクはもう内角でもスライスが自在に打てるのさ。常に進化してるんだよ、キミと違って。あっはっはっ!」
クソッ! 最初から内角に誘導する狙いだったんだ。もちろん外角に甘く来たらそれは打つつもりで。
今回は木崎にしてやられたぜ……。
連続三振も途切れたし。でも津々木は打ち取って、意地でも無失点は継続してやる。




