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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
初めての練習試合編

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第55話 配球を任せる

 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 キャッチャーミットの革から乾いた捕球音が大きく鳴り響き、続いて甲高く力強い女性球審のコールが聞こえた。


 なお今日の球審は松花高校の上中野監督が、塁審は多岐川第三高校の1年生部員が務めている。


 ウチは選手の人数がギリギリだし、バランスを取るという意味合いもあるのだ。


 ちなみに明日の多岐川第三と県内の強豪校との練習試合は連盟から審判員に来てもらうらしい。


 まあ、わかってたことだけど多岐川第三にとってウチとの試合は『ついで』でしかないのだ。


 それはともかくとして、オレは1回表の投球で既に相手の1番、2番を空振り三振に仕留めた。


 プレイボーイ直後は和やかな雰囲気で談笑も聞こえてきた多岐川第三のベンチ内だが。


 オレがボールを投げるごとにざわめきが大きくなってきているのがマウンド上にいてもわかる。


「……控えの1年生主体のスタメンとはいえ、ストレートしか投げてない投手に連続三振なんて」

「なんで連合チームなんかにあんなボール投げるピッチャーが?」

「あいつナニモンだよ?」


 へへへ。この勢いで三者連続三振をキメて更に驚きのリアクションを取らせてやるぜ!


 そして結果で奴らを見返してやるまでさ。


「ナイスボール! この調子で行こう、オージロウ!」


「おうよ! 次の3番打者もしっかりリード頼むぞしょーた!」


「おやおや。えらく調子に乗ってるじゃあないか、しょーたく〜ん。しかも扇の要であるキャッチャーを任されてるなんて……よっぽどこのチームはまともな選手がいないんだろうねえ」


「……」


「配球もボールの勢い任せの単純なリードで笑えるよね〜。まああの球速ならそれだけで雑魚どもには通用するだろうけど……ボクには通用しないからさ〜!」


「……」


 しょーたと中学時代にチームメイトだった木崎の野郎が右のバッターボックスに入って準備しながらつまんねー煽りを呟いてやがる。


 対するしょーたは黙ってその戯言をやり過ごしている。挑発に乗って感情を乱すとヤツの思う壺だからだ。


 だからオレも我慢して黙ってマウンドを踏み固めて次の投球に備える。


 しょーたからあらかじめ聞いた情報では、木崎はタイプとしては中距離打者らしい。


 といってもウチの白城さんみたいにボールを巧みなバットコントロールで打ち返すのではなく、抜群の運動能力と反射神経で感覚的に打ち返してくるんだとか。


 なので狙い球が何なのか読みづらく、速いボールにも強いということでなかなか厄介な相手だ。


 あと利き腕は右だがスイッチヒッターでもある。オレに対しては当然そのまま右打席に入っている。


 さて、情報を思い返しつつもオレは配球を完全にしょーたに任せる。


 何故ならしょーたの方が木崎を良く知ってるからだ。


 もちろん木崎もしょーたを知っているが……ヤツが思っているのと今のしょーたは恐らく全然違う。それはヤツ自身の言葉がそれを示している。


「こっちはいつでもいいから、さっさと投げてきたらどうかな〜?」


 木崎はもう打席で構えて待っている。


 じゃあオレもプレートを踏んでしょーたからのサインを見て……すぐ頷いてから投球モーションに入る。


 それから右足を踏み込んで左腕をしならせ、力を込めて振り抜く!


「うりゃあっ!」


「真ん中高め! ボクをナメるな!」


 バシィッ!


 厳しくないコースとはいえ初球から芯で捉えてきたか。


 控えとはいえさすがセンバツ補欠校の選手……でもねえ。


「ファウル!」


「イテテ……芯で捉えたと思ったのに!」


 打球はそれなりに外野の方まで勢い良く転がっていったが、そこは1塁側ファウルゾーンだ。


 まずはオレのボールがヤツのバットを押し込んでワンストライク。


 2球目は……へえ、しょーたのヤツそう来るか。


 木崎はまだ余裕が残っている表情でブツブツ言いながらバットを構え直す。


「久しぶりの実戦で感覚が戻りきってなかったか。でもしょーたの単純なリードなら、次は合わせられる……!」


 そいつはどうかな、と心の中で思いつつもオレは左腕を振り抜く。


「うりゃああっ!」


 ガコォッ!


「ファウル!」


 今度はキャッチャーの後ろへ飛んでいったファウルで、さっきよりボールを捉えきれず明らかにバットが押されている。


「て、手が、痺れる〜! 続けて同じコースで同じ球種だったのに……そんな馬鹿みたいな配球で。いや、むしろボクが考えすぎてしまったか」


 またブツブツ言ってるが、お前がそう思ってる限り打てやしねえんだよ。


 そして最後は……思った通りですぐに頷いてモーションに入る。


 これで仕留めにいく……だからオレはしならせた左腕を全力で振り抜いた!


「うりゃあああっ!!」


「調子に乗りやがって馬鹿が! 今度こそ……うわっ!」


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト! スリーアウトでチェンジさね!」


「うっしゃあ!」


「……おしっ!」


「そんな……このボクが3球同じコースのストレートを仕留められないなんて」


 オレとしょーたはあまり派手にならないように小さなガッツポーズだけでベンチへと引き上げていく。


 最後は一応、3球連続で同じ真ん中高めストレートが来ると読んでバットを振り抜いた木崎だったが。


 途中まではストライクに見えて最後はボール球になる、ノビのある高めストレートであったことに気づいてないようだ。


 それに何より木崎はしょーたのことをナメすぎた。


 しょーたは木崎の性格も、ヤツが自分を見下していることも、そしてオレが投げるごとにギアを上げていくことも全て計算に入れてあの配球を要求したのだ。


 呆然と立ち尽くす木崎……ざまあ見さらせ。


 だが木崎のヤツもようやく理解したのか、引き上げていくしょーたの後ろ姿をキッと睨むのが見えた。


 まあ、もちろん次の打席も返り討ちにしてやるが……ちょっと不気味だな。


 そしてあちらのネクストバッターズサークルから引き上げていく津々木マイクの姿も見えた。


 ヤツとの対決はあとの楽しみとして……オレたちはベンチに戻ってすぐに1回裏の攻撃の準備を始めたのであった。

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