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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
冬の合同合宿編

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第50話 狙い球を絞る

 スパーン!


「ストライク!」


 6回裏の姉ちゃんとの対戦、初球はど真ん中から切れ味鋭く内角へ切れ込みながら沈むスライダーだった。


 昔はこんなに大きく曲がってたかなあ?


 それに気持ちいいくらい見事な捕球音。こんなに球威があったけ。


 記憶は曖昧だが現実としてボールは内角の膝上の高さでキャッチャーミットに収まっている。


 とはいえ、それほど厳しいコースではなかった。しまったな……様子見せずに打ちにいけばよかった。


 まあでも過ぎたことは仕方がない、次に行こう。


 普通に考えれば次もストライクを取りにきてフォークを決め球に……でもしょーたはど真ん中ストレートで仕留められた。


 じっくり考えたいがピッチャーが既にプレートを踏んでるのにいつまでも構えないわけにはいかない。


 バットを構えてマウンドへ視線を向けると、見計らったかのように姉ちゃんの声が届く。


「オージロウ〜! 2球目はどれか当ててごらん〜?」


「どれかってどういう……!」


「行くわよっ!」


「うわっ、言いっ放しかよ!」


「うりゃあっ!」


 またもやど真ん中!


 くそっ、姉ちゃんの性格からして……得意の外角に流れるフォーク!

 

「うりゃああっ!」


 スパーン!


「ストライク! カウント、ノーボールツーストライクさね!」


 やられた……。


 といってもヤマがハズレたのではない。むしろ大当たりだ。


 でも、落ちるより外側に流れる変化のほうが大きかった!


 真ん中からホームベースの外の角をかすめながら右打者の膝下あたりに向かってスライドしながら落ちるなんて。


 こんなのフォークでもシンカーでもないよ! 落ちるシュートじゃん!


「ふふん。だから昔から言ってるじゃない、わたしは。フォークじゃなくてチェンジアップだって」


 ちくしょう〜! 心の中が見透かされてる!


 姉ちゃんが言いたいのは、要するにフォークとかシンカーとか分類できないからチェンジアップっていうことなんだろう。


 それにしても昔はあんなに外側に変化してたかな……勘違いしてるのか?


 いや過去のことはやめよう。これでわかったのはしょーたが三振した理由だ。


 同じ配球だったんだ。最初にスライダーを見せられて次にこのフォーク。


 途中まで軌道が同じだから2球目に踏み込んだけど当たりそうになりながら思わず空振りしたのが意識に残ったんだろう。


 それが最後の『迷いながらの腰砕けスイング』に繋がったというのが目に浮かぶようだ。


 そして……オレは一気に追い込まれた。


 あのフォークはオレのリーチじゃまともに届かずカットも難しい。


 そしてストレートも途中まで軌道が同じはず。


 どうすりゃいいか分かんないよ!


「混乱してるのねオージロウ、可哀想に……でも安心して。これでトドメだから、もう迷わなくて済むわ!」


 その仰々しい挑発やめてくれ!


 そんなオレの心の叫びなど知ったことかとばかりに姉ちゃんは容赦なく3球目を投げようとしている。


 膝を勢いよく上げた左足を大きく踏み出して一気に右腕を振り下ろす!


「うりゃあああっ!」


 ど真ん中だがマジで見分けがつかん!


 いや落ち着け、姉ちゃんの球速はそんなに速くないから見極める時間はある。


 それにしょーたと同じ配球というなら……!


「うりゃっ!」


 ガコッ!


「うわっ! ファ、ファウル!」


「すみません! イテテ!」


 ひええ! ノビのあるストレートを辛うじて真後ろにファウルで逃れた。


 バットを握る両手に痺れが……球速以上に威力がある。


「あら残念。でも、いつまで3つの選択肢から正解を当て続けられるかしら?」


 確かにその通り、このままじゃ……いや待てよ。


 よく考えたら姉ちゃんの言葉に振り回されてる。何で必ず3つから選ばないといけないんだ?


 オレはふうっと一息ついてからちょいと打席内の位置を変えて、おもむろにバットを構え直す。


 勘の鋭い姉ちゃんは余裕だった表情が少し引き締まった。


 お互い沈黙のまま4球目。


 バコォン!


 内角に食い込んできたスライダーを1塁線の外に転がしてファウル。


 次は同じくスライダーを捉えて1塁線を襲うがファウル。


 そして6球目……。


 バコォーンッ!


 強い打球がレフト側ファウルゾーンのスタンドへ飛んでいった。


 外へスライドして逃げていくフォークを捉えたのだ!


 オレが急に姉ちゃんの変化球を捉え始めて、守備についているOBチームもベンチにいる現役チームもどよめいて不思議がってる。


 当の姉ちゃん以外は。


 オレは狙い球を1つに絞ったのだ。


 そしてそれ以外はとにかく反射的に捉えられるように打席での位置をいつもより前の方に、ベース寄りに移動した。


 内側のボールはちょっと窮屈だが、これで外のボールも十分に打ち返せる。


 もっと球速が速かったらかなり難しい対応だけど、姉ちゃんの球速なら……。


「ファウル!」


 もう一度フォークをファウルにした。


 姉ちゃんは失敗した……なまじ『ど真ん中からの3択』なんてクイズみたいなことを仕掛けてきたから、もうど真ん中以外は投げにくい。


 だって今更コースを変えたら変化球が甘いところに入るか、ボールになる球種以外に絞りやすくなるしかないからだ。


 そして粘ってるうちに投げた瞬間の回転も見えてきて、スライダーとシュート方向の回転は見切れた。


 もう全ての球種を打つイメージは頭の中にできている。あとは……。


 迎えた8球目、左足を踏み出す瞬間の姉ちゃんの視線はこれまでと異なる場所に向いている。


 そして振り下ろした右腕の2本の指からビシッ! とボールを弾く強い音が聞こえた。


「うりゃあああっ!」


 来たっ!! オレが待っていたボールが!!


 見えた回転は強烈なバックスピン……そして投げ終わった後のフォロースルーが他よりも躍動して輝いている。


 内角高めストレート!


「うりゃああああああっ!!」


 バシィーーーンッ!!


 ボールが潰れんばかりの打撃音を残して打球はセンターの少し右へと放物線を描いて飛んでいく。


 我ながら凄い打球速度であっという間にフェンスの向こう、小型バックスクリーンまで飛び越えていった。


 サヨナラホームラン!!


 遂に、遂に姉ちゃんから初ヒットを……ホームランという最高の形で打てたのだ。


 欲を言えばもっとライト方向に引っ張りたかったけど……姉ちゃんの高めにノビるボールは下手に引っ張ると詰まらされるのでやむを得なかった。


 どうだ、見たか!


 とガッツポーズを決めようかと思ったが、いつまでも打球の行方を呆然と眺めている姉ちゃんを見て、やめにした。


 淡々とベースを周り、ホームベースで待ち構えていたしょーたや別府さんたちにくしゃくしゃにされて手荒い祝福を受けたのであった。

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