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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
冬の合同合宿編

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第45話 左キラー

「それじゃあ、あと頼むわ鐘吉かねよし! 俺、アイツはどうも苦手なンだわ〜」


「はいよ! それにしても高校時代みたいな左バッター相手のリリーフを今日やるとは思ってなかった」


「オージロウくんが相手ならカネの方が相性は良いと思う。ここはビシッと抑えるのを期待してるぞ」


 マウンド上でOBチーム先発の池下さん、ライトから交代のために駆けてきた『鐘吉』という人、そして蒼田監督が話しているのが聞こえてきた。


 鐘吉さんは確か、OBたちがここに着いて間もなくの時に『実家の豆腐屋を手伝っているから草野球もままならない』とか呟いてた人だから、ブランクがあるってことだよな。


 それでも本人も監督も左打者を相手にすることにかなり自信を持っているようだ。


 もちろん左対左は基本的に投手有利なのもあるだろうけど、単にそれだけではないと感じる。


 どんな感じのピッチングをするのか、なんとなく想像はつくけど……。


「オージロウくんだっけ〜? 1回に池下から打ったホームラン、すごかったね〜。場外行っちゃうかと思ったよー!」


 考え中に鐘吉さんから話しかけられて、ちょっとまとまらなくなった。かといって無視するわけにもいかないので愛想笑いで返答する。


「あははっ、あざっす鐘吉さん」


「今日は久しぶりの硬球で、しかもあんなの見せられたら内心ビビリまくってんだけどさー。でも俺、これでも現役時代は『左キラー』で一応通ってたんだよねー」


「はあ」


「だからちょい厳しーとこついていくけど……練習試合だし怖い顔しないで楽しくやろうぜ〜? なっ!」


「えっ……は、はい」


 おかしいな、愛想笑いしてたはずなのに。そういうの苦手だから顔が引きつってたのかな。


 ……いやそうじゃない。まあ表情はともかく、会話中のオレの反応で攻め方変えるつもりなのかも。


 もう腹の探りあいは始まっているのだ。


 それはさておき、投球練習はこれからだから球筋を見定めさせてもらおう。


「じゃーまずは剛球ストレートいくぜー!」 


 パシッ。


 うーん。サイドに近い角度のスリークォーターから投げたストレートは130キロ台有るかないかってところで剛球とは程遠い。


 正直速くはないがハッタリも投球術のうちということで。


 しかし続けて投げたカーブ2球……いや後のはスライダーか、変化が大きくてキレもある。


「もうこれくらいでいっかな〜。審判、プレー再開をお願いしますー!」


「3球でいいのかい? それじゃ、プレイボール!」


 ということでオレも打席で構える。不思議と緊張感は少なく自然体みたいにスッと打席で落ち着いている。


 初球だが……まずはこっちに来るに違いない。


「ボール!」


 予想通り内角ストレートで胸元を突いてきた!


 鐘吉さんはプレートの1塁側端っこを踏んでほぼサイドで投げてくるから、ストレートでもオレの背中から出てくる感じに見えるんだよなー。


 もちろん変化球だともっと見えづらくなる。


 そしてさっきのは見せ球だとわかってはいるが、このあとの向こうの攻め方が予想つくだけになかなか厄介だ。


「2球目はそこだー!」


 叫びながら投げる鐘吉さんのボールは外角低め一杯……だがスライダーで振らせる気がミエミエだ。


 これはもちろん見逃す。


 それで悠然とボールの行方を眺めてたら!


「ストライク!」


 やられた……ストレートでズバッと。


 しかし初見とはいえこの球速で見極めつかなかったとは、さすがに調子に乗りすぎたか。


 次は慎重に……そう思って見極めたと外角ストレートを振ったら。


「ストライク!」


 またやられた。今度は逆にスライダーを見事に空振りだ。


「よっしゃ! 悪いけど次で終わらせるよ〜オージロウくん!」


 なんでだ!?


 どうして見極めが……スライダーといえども速度差が……って、ああそうか。


 鐘吉さんのストレートとスライダーの速度差が小さいんだ!


 というかストレートが遅いから……。


 次はどっちを投げるんだ? というかどこに投げる気だ。


 考えがまとまらないのに4球目が来る。


「これでフィニッ〜シュ!」


 そう宣告して鐘吉さんが投げたのはやっぱり外角低め!


 最後にされてたまるか! しかし見分けがつかん!


 いや落ち着け。見分けられないなら……自分なら配球をどうするかで判断する。


 カウント1−2だから、ここは……見逃す!


「ボール!」


「あぁ〜。振ってくれんかった」


 ふー。オーソドックスにボールを一つ使ってスライダーを投げてくれた。


 だから鐘吉さんの声にはまだ余裕が感じられる。


 でも次はどうするか。そろそろ内角に……は無さそうだ。


 次の外角高めストレートをカットしてファウル。


 続けて外角に投げてくれたおかげで慣れてきた。もうスライダーをストレートと間違えて振ることはなさそうだ。


 さあ、鐘吉さんは決め球に何を選択するのか。


 6球目は、真ん中……?


 いや違う。ボールが少し浮きあがって外角低めギリギリに流れ落ちるカーブ。


 でもこうやってストライクゾーンに入れてくれる緩めのボールを待ってたんだよ!


「うりゃああっ!」


 バシィーッ!!


 引っ張らず、逆らわずに落ちきったところを捉えた!


 左に切れながらレフトポールへ向かって飛んでいく打球は……。


「ファウル!」


 惜しかった……思わず声を出しそうになったがここは沈黙。


 それよりも鐘吉さんとキャッチャーの顔色が一気に青ざめたのが目に入って、もう余裕を無くしたのを感じ取った。


 だから次の7球目、オレは余裕で見送れた。


 外角ボールゾーンに流れていくスライダーを。


「ボール! カウント3−2!」


 もうオレに外角でのボールの出し入れは通じないことは分かっているはず。


 それでも貴重なもう一つのボールを外で使ったのだから、『左キラー』はまだオレに見せてないものがあるはずだ。


 だいぶ粘ったけど次の8球目で決着がつく。


 軽口で揺さぶらなくなった鐘吉さんが投げたのは内角低めというには中途半端に甘いボール。


 となれば、ここだっ!


 更に内角に食い込みながら落ちていくシンカーの軌道を読んで、バットを縦にして振り抜く!


 バシィーーンッ!!


 気持ちいいくらいのゴルフみたいなアッパースイングが決まった!


 打球は低い弾道でライトの頭上をあっという間に越えていき、フェンスを……。


 ドーン!! と直撃して跳ね返ってきた。


 打球にラインドライブがかかってしまったらしい。


 処理をもたついている間に1塁ランナーのしょーたはホームへ突っ込む!


「ここは俺に任せて!」


 大声で味方を制したのはシンイチさん。


 ライトからの返球の中継に自分が入ってセカンドにベースカバーに行かせる。


 ボールを受けた瞬間に素早くホームへレーザービームのような送球を……タイミングはどっちもギリギリだが果たして。


「セーフ! しょーたくんが上手くまわりこんだよ!」


 うっしゃあ!!


 オレたちがとうとう勝ち越して1点リードしたことを、オレも1塁ベース上で喜んだ。


 なぜ2塁ベースじゃないのか……確信歩きやらかしちゃいました。すみません。


 なにはともあれ『左キラー』を攻略できたことは大きな自信を与えてくれた。


 もう一度打席が回ってきたら今度こそは……!

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