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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
冬の合同合宿編

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第38話 夜の会話と多岐川OB到着

「オージロウよぉ〜。お前の理想のオンナって……やっぱ自分の姉ちゃんなんじゃねーのか?」


 今は合宿2日目の深夜……今回は寝落ちせずに雑談に参加できてワイワイと楽しく喋ってる。


 普段の生活のこと、将来のこと、趣味のこと……。


 ちなみにみんなの趣味だが……エース石元さんはジョギング、キャプテン別府さんはWeb小説の読書、阿戸さんは筋トレと日焼けサロン通い、大岡は釣りでしょーたは飼い猫と遊ぶことだと話してくれた。


 中でも饒舌に話してくれたのは常日頃は寡黙な爽やか風イケメンのサード白城さん。


 漫画とアニメ鑑賞が趣味ということで推し作品とキャラについての語りが凄かった。


 昔のことは知らんがオレたちの世代はゲームやアニメにそれなりに馴染みがあるので、それぞれが知ってる作品のことで話が盛り上がって面白かった。


 その一方で興味のない話題には我関せずな人なので結果的に寡黙になっているだけらしい。


 こうやって相手の意外な一面を知ることができるのも合宿の醍醐味なのだが。


 阿戸さんが突然女子絡みの話題に切り替えたのが冒頭の台詞というわけだ。


 オレはここまでのことを思い返しつつ沈黙を保ってやり過ごそうとしたが、みんなの視線は消えるどころか益々強まる一方だ。


 仕方がない、落ち着いて切り返そう。


「そ、そ、そんなわけないでしょ。や、やだなぁもう〜!」


「そうかな〜。傍から見てる限りオージロウくんは雛子さんの姿が見えると仏頂面から笑顔に変わって駆け寄ってる姿ばかりなんだけど」


「ん。まああれだけ綺麗で性格も明るいお姉さんが常に傍にいたら、彼女が理想の女性になるのも無理はない」


「ちょ! 石元さんと別府さんまで何言ってんすか!!」


「……今思ったけどよぉオージロウ。お前ってもしかしてシス……」


「うわああああーっ!! あ、阿戸さん! システムがどうかしたんですか!?」


「ホント、オージロウがうらやまし過ぎる。雛子さんとひとつ屋根の下で暮らせるなんて……1日でいいからおれと代わってくれよ〜!」


「しょーたまで! あのさ、言っておくけど! 姉ちゃんは外面が良いだけで、家の中じゃ無駄にお喋りで細かいことにうるさくてウザ絡みばっかしてくるんだから! それにトイレだって普通に」


「や、やめろおおおおーっ!! 男の夢を、ロマンをブチ壊すんじゃあねえーっ!!」


「雛子さんはっ!! トイレになんか行ったりしないっ!! 行ったりするものかあーーっ!!!」


 オレは真実を言おうとしただけなのに、阿戸さんとしょーたがやかましくて遮られてしまった。


 というかコイツら女子にどんだけ幻想を抱いてんだよ……。


 でもこれでこの話は収束かと思ったところで、大岡のヤツが爆弾を投げてきやがった!


「……そういえばコイツ、昼間のキャッチャーの練習の時に泉さんから話しかけられて顔真っ赤にしてたぜ」


「おおーっ! お姉さん以外の女性にも興味あったんだね!」


「んんっ! 思ってたよりも気が多いじゃないか!」


「オージロウ! お前は泉さんと仲良くすればいいじゃん! だから雛子さんをおれに譲ってくれ〜!!」


「バカ言ってんじゃねえぞしょーた!」


 もう収拾つかないな。


 だけど阿戸さんはさっきの話でショックを受けたのか放心状態なのが幸いだ。


 とにかく話をはぐらかし続ければそのうち何とかなるだろう。



 あー、もう朝か。


 あれから30分は話が紛糾したんで疲れが取り切れなかったよ。


 とにかく起きて散歩して、朝食を自分で用意して、と。


「よぉオージロウ、今日は……ブラック飲んでるじゃん、感心感心」


 うっしゃ、阿戸さんの目を誤魔化すことに成功した!


 トーストを焼く時にみんなの目を盗んでシュガースティック数本を抜き取って、手のひらに隠しながらさり気なくコップに注ぎ込んで。


 スプーンでかき混ぜれば美味しくて甘いコーヒーの出来上がり。


 今日の朝食は非常に満足した……そういうわけで午前中は昨日に引き続きフレーミングとブロッキングの練習を頑張っているのだが。


「それじゃオージロウくん、ボール投げるよ!」


「あ、は、はい。お、お願いします」


「……なんだか顔が赤くない? 大丈夫?」


「だ、大丈夫だから続けて!」


 みんなが変なこと言うから泉さんの顔が見れないじゃないか。


 なんか姉ちゃんとも顔を合わせづらいし……練習が終わる頃には何とか元に戻ったけど精神的に疲れた。


 だけど今日の午後はこの合宿で最大の楽しみが待っているのだ!


 多岐川高校野球部のOBたちが来て紅白戦をやる予定なのである。


 ちなみに毎年12月1日から3月第1金曜日までは対外試合禁止期間なのだがチーム内の紅白戦や対OB戦は許されている。


 つまり冬場の練習続きのマンネリ感を打破する貴重な実戦を体験できるのだ。


 朝のミーティングではOBの誰が来るのか別府さんたちも知らされていないと言ってたが早く顔合わせしたいぜ。


 気持ちがソワソワしながらも昼ごはんのおにぎりと温かいうどんでお腹を満たし、早めにグラウンドに入って準備運動しながらその時を待つ。


 だけど13時を30分以上経過してもまだ来ない。


 まさかの中止か? とみんなに不安が広がりかけていた瞬間であった。


「いや〜、お待たせしてすみません! 道路が混んでたんで」


「蒼田監督! お久しぶりです」


「ご無沙汰しております! っていうかなかなか来れなくてすみません」


 ぞろぞろと6人の男たちがグラウンドへと入ってきて蒼田監督に向かって口を揃えて挨拶している。


 この人たちがOBか! でもオレが想定していたよりもずっと若いな……大学生くらい?


「みんな久しぶり! 元気そうで何よりだ。まあ渋滞は仕方ないよ」


「ありがとうございます。あっ、しょーたくんじゃん! 久しぶり〜、っていうか大きくなったね!」


「あれ? お兄さんたちのこと忘れちゃったのかな〜!?」


「……いえ、もちろん覚えてます。皆さん、お久しぶりに会えて嬉しいです」


「おいしょーた、何でお前がこの人たち知ってんだよ?」


「この人たちは……ウチの兄貴と同世代のチームメイトの方たちだよ」


「マジかよ? で、兄貴さんはどの人?」


「今この場にはいない。正月は3日間だけ帰省して飽きたからって大学へ戻ったはずだし」


「おい、アイツどこ行ってるんだ?」


「監督、それがここに入る直前にトイレ行きたくなったって」


「相変わらずのマイペースっぷりだな……おっ、あれじゃないか? メガネかけてるし」


「あ〜。監督さ〜ん、お久しぶりで〜す!」


「おう、待ってたぞシンイチ!」


「え? なんで兄貴が」


 後からグラウンドにゆっくりと入ってきたあの人がしょーたの兄貴のようだが……監督が好打者だっていうくらいだし、これは楽しみなサプライズだぜ。

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