第33話 まずは初日のウォーミングアップ
「ご無沙汰しております、監督。というかしょーたがお世話になっているのにご挨拶が遅くなってすみません」
「いえいえ、こちらこそしょーたくんが連合チームに参加してくれたお陰でキャッチャー不足という致命的な弱点が補強されました。大変助かっています」
「それならよかったです。それにしてもあの多岐川野球部が……球場もちょっと傷んできていますね」
「まあ、これも時代の流れですから。ところで積もる話もありますので、あちらで中原先生と松花高校の上中野監督も交えて……あっ、時間は大丈夫ですか?」
「問題ありません。むしろこちらからお願いしたいと思っていました」
「では行きましょう。おーい別府! 悪いがランニングと準備運動とキャッチボールまで頼んだぞ!」
「はい、おまかせを!」
なんか監督もしょーたの親父さんも正月早々から何度もお辞儀しながら丁寧に挨拶して……大人って大変なんだなあ。
オレはそういうの面倒だからさっさと練習に入りたい。けど一言挨拶くらいはしておこう。
と思ったら松花高校2年の阿戸さんの方からこっちに近寄ってくる。
「よぉ〜オージロウ! あけおめ!」
「あけおめです。ってLINEでも挨拶したじゃないですか」
「いいだろ〜別に。何回やったってよー。それより年末年始はどっか旅行とか行ったのかよ?」
「いえ、オレは近所の神社に初詣に行ったくらいです」
「……お前の姉ちゃんはどうだったんだよ?」
「さあ? 友だちいっぱいいるみたいだから連日スケジュールぎっしりでほとんど家にいなかったですけど」
「そーじゃなくてよー。その、彼氏と上手くいってんのかってハナシだ!」
「あー。えっと……年末の格闘技イベントを一緒に衛星放送で見てキャッキャウフフしてた……ような」
「チッ……まあいいや、あとのキャッチボールで組もうぜ!」
「よろしくです!」
ちなみに姉ちゃんに彼氏なんていない。阿戸さんがうるさいので空手部主将の彼氏がいるってハッタリかましたのが今だに有効なだけだ。
でもそれ以外はオレにとって気を使わずに話せる先輩って感じで意外と気が合うのだ。
「よお、大岡! ことよろ!」
「……うっす」
大岡は相変わらずぶっきらぼうで一言だけで向こうへ行っちまった。
「石元さん、白城さん! おはようございます!」
「やあオージロウくん! 今年もよろしく!」
「……」
多岐川の先輩たち、石元さんはいつも爽やかだけど白城さんとはまだマトモに話せてない。
「別府さん! よろしくお願いします!」
「ん! こちらこそ。オージロウくんには期待しているよ!」
そして連合チームキャプテンの別府さんはまさに頼れる先輩だ。
しょーたも含めて全員が揃ったところでまずはランニングから合同合宿の練習が開始した。
◇
「うおっ! オージロウの遠投、また低く速くなってねーか!?」
「どーですかね。自分はよく分かりませんけど」
「俺も外野手だしこのメンバーの中じゃ肩強え方だと思ってるけど。お前が投げたあとに投げ返すと悲しいほど山なりで緩く見える」
「へへへ」
「てめー今笑ったな? くそっ、負けるかっ!」
「おーい阿戸! 遠投の目的は全身を使って投げることで身体をウォーミングアップすることだ! ちゃんと正しいフォームで投げないと怪我するぞ!」
「いいじゃねーか別府、これくらいよー!」
「ダメだ。もう少しゆったりやろう!」
阿戸さんと別府さんが意見を戦わせているが、ぶっちゃけオレにはどうでもいいことだ。
人それぞれのやり方がある。ただ無理はしないほうがいい、怪我をしたら意味がない。
オレは7、8割くらいの力で投げている。
それが一番身体がスムーズに動いて程よく汗をかけると自分でも感じているからだ。
それにしても我ながらいいボールを投げることができているなと思う。
キャッチャーの練習は下半身の鍛錬が多いけど、その成果が出てるんだろうか。
全身、つまり下半身が安定してボールを投げる瞬間に連動できている……気がするのだ。
「おっ、みんなちゃんとやってるな〜! ありがとうな別府!」
「あっ、監督! もうお話は終わったんですか?」
「ああ、しょーたくんのお父さんはもう帰ったよ。それよりも今日は始動が中途半端な時間で昼食時間も近いし……午前中はボール回しで締めようかと思う」
「わかりました。それじゃあみんな、4つのベースに分かれて」
「その前にチーム分けして。ちょっとしたゲームといこうじゃないか」
うーむ。こういう場合のチーム分けって当然競争みたいのがありそうだよな……楽しみ半分、不安半分。
でもせっかくの合同合宿なんだし、こういう要素もないと面白くないよね……!




