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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
連合チーム参加編

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第29話 またキャッチャー?

「うーん。これならいけるかな〜」


 オレは今、球場内の用具置き場で探し物をしている。


 何かというとキャッチャー用のマスクとプロテクター一式……170センチ弱のオレの体格にあったのを、だ。


 兄ちゃんは高3の時点で190オーバーだったのに、何で同じように伸びてくれないのか。ピッチャーやるならやっぱりマウンドで上から見下ろしたいよね。


 って、余計なことを考えてる暇はない。


 そもそも何でこんなことしているのかといえば、キャッチャーをやってほしいと蒼田監督に頼まれたのだ。


 あくまでシートバッティングでしょーたが打席に立つその時だけという約束だけど。


 でもオレじゃなくたって、これまでチーム内でキャッチャーを務めてた人がいるはずだろ……と思ったが、こんな立派な設備で練習に参加させてもらってる身としては断りづらい。


「オージロウ! ぼーっとしてないで行くわよ!」


「へいへい」


 一緒に探してくれた姉ちゃんとグラウンドに戻って、更に中原先生も加わってプロテクターの表面を拭いていく。


 それから全て装着し終わった頃に丁度しょーたの順番が来た。というかしょーたが最後なのだ。


「キャッチャー準備できました〜!」


「オージロウくん、ありがとう! それじゃあノーアウトランナー1塁の想定で行こうかしょーたくん!」


「はい!」


「シンイチくん……キミのお兄さんみたいなバッティング期待してるよ!」


「……はい」


 しょーたの兄貴は多岐川のOBで走攻守揃った好打者だったと聞いた。


 それをここで持ち出すなんて蒼田監督も結構いやらしいなあ。


 まあ、そういったプレッシャーへの対処も含めてのテストなんだろう。


「オージロウくん。もしかしたらランナー走るかもしれないけど。無理しない程度に送球してくれたらいいから」


「わかりました!」


 1塁ランナーは足が速い阿戸さんか。ピッチャーも含めて実戦想定のシチュエーションで練習ってわけだ。


 もちろんしょーたも状況に合ったバッティングができるかどうか。


 そしてオレがキャッチャーボックスに座ったところでプレイ開始だ。


「オージロウくん、好きなトコ構えていいから! こっちで合わせるよ」


「あ、はい。石元さん!」


 オレがド素人だから仕方なくだろうけど、すげえやり方だな。それだけ石元さんはコントロールに自信があるんだろう。


 というわけでとりあえず外角低めに構える。


 ピッチャーの時はガンガン強気に行きたくなるが、立場が変わるとまずは安全策となるから面白いもんだ。


 クイックモーションで投げてくる石元さんの初球はズバッとストレート!


 バシィッ!


 い、痛ってえ!!


 球速はオレより遅いハズなのにキレと威力が半端ない!


 オレは左利きだからファーストミットで間に合わせてるけど、やっぱりキャッチャーミットじゃないと……まあ今だけの我慢だ。


 ところでいちいち立つのはやっぱ面倒だ。午前中にブルペンでやったのと同じく両膝立ちで返球しよう。


 これを覚えたらもうやめられんなあ。


 それに、おお〜っと羨望の眼差しと声が届いてちょっとした快感が味わえる。強肩を授けてくれた両親に感謝だ。


 さて2球目だが。やっぱり外角、それもボール気味の位置に構える。


 オレにはまだ内角へと要求する覚悟がないよ。


 石元さんは気にする様子もなくテンポ良く2球目を投げた……のはいいが要求より中に入ったボール!


 ミットを動かさないと……あれ? 初球とはなんか違う。


「ランナー走った!」


 今度はいきなり蒼田監督の声!


 うそ〜ん! こんなタイミングで!


 気持ちは焦るがとにかく捕球しないと。


 結局ミットは元の位置で構えたままだが、そこへ吸い込まれるようにスライダーが曲がってきた。


 これなら……と思ったところで目の前をブンッ! としょーたのバットが回る!


 これが盗塁を助ける空振りってやつか!


 いや単に空振りしただけかもしれんが、確かに気になってしまう。


 バシッと捕球してから改めてランナー見て……立って投げたら全く間に合わん。


 まあどうせオレは臨時のキャッチャーだ、こうなりゃMLBみたいな膝立ち送球してやるよ!


「うりゃあっ!」


「うわっ!」


 しゃがんだ石元さんの頭上をボールが矢のように飛んでった……ゴメンなさい石元さん。


 でもその代わり間に合いそうなタイミングでセカンドベース上に……!


「セーフ!」


「ふぃ〜。ヤバかったぜコノヤロ〜!」


 ベースに滑り込んだ阿戸さんがホッとした表情で叫んだ。


 その通りでタイミング的には微妙だったんだけど……ボールがセカンドの顔付近に届いてタッチが遅れてしまったのだ。


 それでも、うおおーっ! と歓声が上がったのはメッチャ気持ちよかった。これで悔いはない。


 さて、追い込んだしょーたをどう攻めるか。


 状況的にはやっぱりこっちかな。オレは思い切って内角低めに構えた。


 石元さんのコントロールなら狙ったところに来るだろう。そして3球目……!


 バコッ! と鈍い打球音でファーストの正面に打球が飛んでいく。


 しょーたはキレのある内角低めストレートを右方向へとおっつけた。


 やや窮屈な姿勢でバットを振ったせいか打球に勢いはなくあっさりとアウト。


 しかし2塁ランナーは3塁へ進塁できたから蒼田監督も納得の表情だし、最低限のチームバッティングはできたと評価すべきなんだろう。


 そしてしょーたが続けて打席に立つ。3打席セットの練習なのだ。


 初球はどのあたりを攻めようかな。


 しょーたの方をちらっと見る。


 オレの方は全く見ずに石元さんの投げるボールに全集中って感じだ。


 でもちょっと硬いかな、表情が。やっぱり兄貴の件のプレッシャーが効いてるのだろうか。


 だからって手を抜くつもりはない。それはしょーたに失礼というものだ。


 オレは外角低めに構えた。何となくだがしょーたは外へ逃げるボールが得意ではない気がする。


 そして石元さんは程よい脱力感のフォームから右腕を鋭く振り抜いた。


「えいっ!」


 掛け声と共に速いボールが……でも少し浮き上がって手前で鋭く変化する。


「でやっ!」


 ブンッ!


「ストライク!」


 小さな変化で速いカーブにタイミングが合わず空振り。悪いが想定通り。


 2球目は内角高めストレート、振り遅れで後ろにファウル。


 じゃあ3球目は……。


 ブンッ!


「ストライク、バッターアウト!」


 スライダーにバットが泳いであえなく三振。


 しょーたと出会ってから一番悔しそうな顔を見てしまったが……なんか、やりすぎたかな?


 といってもオレはコースを指定してるだけで球種は石元さんが決めてるんだし。


 3打席目、オレは密かにしょーたを応援しつつも口に出せないもどかしさで辛い気持ちだ。


 だがしょーたは外角変化球を意識するあまり2球続けてストレートを振り遅れてしまう。


 追い込んだ以上は狙いに行くので……外角低めにミットを構える。


 パターンとしてはわかりやすいのだからあとは自力でなんとかしてくれよ相棒。


 そして最後は石元さんの決め球スライダーが来た!


「でやああっ!!」


 しょーたがヤケクソ気味に左足を踏み込んでバットを大振りした結果……!


 バコォッ!


 フラフラと詰まりながらもレフトの前に打球を落としたしょーた。


 形はともかくヒットはヒットだ。3塁ランナーの阿戸さんも自動スタートで既にホームインしたし、打点もついた!


 それと同時に蒼田監督からシートバッティングの終了が告げられた。


「それじゃあこれでサヨナラ勝ちの得点ということで。しょーたくんが今日のMVPだ!」


「よっしゃ! やったなしょーた!」


 思わず叫んでしまった……恐る恐る石元さんの顔を見る。


「気にしなくていいよ。おめでとう、しょーたくん」


 石元さんが爽やかな笑顔で返してくれて救われた。


 そしてしょーたもようやく笑顔を見せてくれたよ。


 これで一応だが結果を残せたんじゃないかな、オレもしょーたも。


 今日の合同練習はこれにて終了。片付けを手伝わないと……と動きかけたのだが、蒼田監督に呼び止められた。


「オージロウくんたちと、中原先生もこちらへ来てください。お伝えしたいことがあります」


 これはもしかして連合チーム参加の可否についてだろうか?


 イケるという手応えは掴んでいるが……結果を聞くまではやっぱりドキドキする。

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