第24話 ロングティーで大飛球
パシーンッ!
強い打球音とボールがネットを突き破る勢いなのが気持ちいい!
これだよこれ、こういうのがティーバッティングの醍醐味だよなあ。
竹バットのヘッドの重さと狭いミートポイントにやっと対応できて狙った通りに飛ばせるようになってきたというか。
芯を外して手の痺れを味わうことも徐々に減ってきたのだ。
それにしても、リトルリーグ時代にコーチから口うるさく言われたことが役に立つとはなあ。
インサイダー取引……じゃなかった、インサイドアウトだっけ。身体の内側からバットを出してヘッドを走らせるスイング。
ヘッドが重くて後から出てくる竹バットで振ってるうちにこれを思い出してやってみると、面白いようにヘッドが走るようになった。
調子に乗って何度もパシーン! と打球音を響かせると、みんながこっちを見るからそれがまたたまらない。
そろそろオレもロングティーに……と思い始めた時だった。
バシィッ!!
「うおおーっ! 右中間真っ二つだ!」
な、なんだ? ホームベースの方から強烈な打球音と歓声が!
振り向くと、強烈なライナーが勢いよくバウンドしてフェンスに向かってるのをボール拾いのメンバーたちが追っていた。
その後も蒼田監督がトスするボールを左打席から面で打つかのようにバットで捉えまくり、右に左にセンターにと自在に打ち分けているのは、あの人だ。
昼休憩でベンチの端っこで黙々と昼メシ食ってた人……名前は出かかってるんだけど。
いつの間にかホームベースの方へ歩いてきてたオレだが、せっかくだから近くにいる大岡に聞いてみよう。
「あの人は、多岐川高校2年生でサードの白城さん……。お前、こんな少ない人数なのに名前も覚えらんねーの?」
コイツ、悪気はないんだろうけどホント腹立つ言い方しやがるぜ。
だけどありがとうとお礼を返して、そのまま白城のバッティングを眺めていたのだが。
「オージロウくん、次のロングティーいってみるかい?」
「だけど上中野監督、オレの前に順番待ちしてるんじゃ」
「大丈夫、任せときな。おーいみんな! 先にオージロウくんに打たせてもいいかーい!?」
「ああ、いいよー!」
「俺も早く見たいと思ってたんだ」
「みんな異存はありませーん!」
「さあ、遠慮せずにバッターボックスに……って、竹バットでやるつもりかい?」
「はい、せっかくコレに慣れてきたところなんで」
「まあいいだろう。それじゃあ蒼田監督、お願いします!」
「オージロウくん、打席に入ったら行くぞ!」
決まった以上は打つのみだ。
まあ、これもテストのようなものなのだろう。
左打席に入ると打席の周囲だけでなく外野で球拾いで待っているやつらからの視線も感じる。
ここは一つ、大きいのを打たなきゃな……!
「それっ!」
蒼田監督からトスされたボール……絶妙に緩いというか、だからこそ飛ばすには芯をきっちり食わないと。
身体の内側からバットを出してきて、ヘッドをブンッと走らせる!
スカッ
あー、空振った。
一気に期待が沈むというか緩むというか。あ〜って声が若干聞こえてきた。
でも何かを掴んできたところなんだ。そう確信があるオレは不思議と声が気にならずにバットを構える。
「オージロウくん、もう一丁!」
監督の声と共に放たれる緩いトスを振り続ける。
2球目はカス当たり、3球目はボテボテのピッチャーゴロ、4球目は3塁側へのファウルフライ。
徐々にボールが前に飛ぶようになって、そろそろって自分でも感じる5球目。
「うりゃっ!」
バシィッ!
遂にきた! ヘッド側のスポットで手に痺れを感じない場所に当てたって感触が!
竹バットはしなるから、そこから更にヘッドを押し込む感覚で……一気に走らせる。
「うりゃああっ!!」
バシィーンッ!
センター方向に大飛球、そのまま行っちまえ!
しかし残念ながらフェンスを越えずにその手前で捕球されてしまった。
「惜しいー! 次こそは!」
捕ったのは球拾い役で外野にいた姉ちゃんだった。
オレの気持ちを鼓舞するかのように、なかなかの返球を投げながらさらなる大飛球を要求する姉ちゃん。
コツは掴めた、あとはタイミングだけだ。
バシィーッ!!
今度こそ完全に芯を食った打球は、ライト定位置の遥か頭上を越えていって今度こそフェンスを越えていった。
「おおおっ!」
「今の、入った……!?」
「竹バットであそこまで飛ばすか!?」
周囲の視線と声も変わってきたのが、気持ち良すぎる!
でもまだまだ、もっと放り込んでぐうの音もでなくしてやるぜ!




