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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
連合チーム参加編

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第20話 投げ込み

 遠投の自己ベスト更新で幸先良いスタートを切ったオレは勢いに乗って練習メニューをこなしていく。


 そうすると徐々にだが周りのメンバーが声をかけてくれるようになった。


 それは阿戸さんも同じで、姉ちゃんの件で根に持たれるかと思ったが野球については結構真面目にやってるらしい。


 さて、続いては守備練習……つまりノックの時間だ。


 ピッチャーも野手の一人、オレは内野のグラウンドへ向かおうと歩き出したのだが。


「おーいオージロウ君! ちょっとこっちに来なよ!」


 松花高校の上中野監督に呼び止められた。


 その声の方向へ振り向くと、1塁側というか正確にはライト側ファールゾーンにスタンドへ食い込む形で設けられているブルペンが見える。


 なんと、この多岐川高校の球場はライトレフトどちらのファールゾーンにもそれぞれ2組分のブルペンが設けられているのだ。


 あまり高くはないがきちんとフェンスで区切られて安全対策もされており、そこいらの地方球場顔負けの設備と言っても過言じゃない……さすがは元強豪校。


「なんでしょうか監督」


「せっかくだからちょっと投げてみないかい? ピッチャーだったんだろう?」


「えっ、いいんすか?」


「もちろん。アタシらもアンタたち2人の実力を早いところ把握しておきたいしね」


 スゲー前向きな話で、オレは思わず小躍りしそうになった。


 実力をもっと知りたいってことはオレとしょーたにかなり興味を持ってるってこと。もう連合チーム参加は決定的だなこりゃ。


 いや、これで油断すると落とし穴にハマるというのが野球マンガとかでよくあるパターンだ。気を抜かずに頑張らねば……!


 監督に連れられてブルペンに入ると、既にマスクとプロテクターを身につけたしょーたが待っていた。


 よぉーし、オレたち黄金バッテリーの力を見せつけてやろうじゃねーの! と意気込んだオレだが、しょーたの正面のマウンドには別の選手の姿が。


「ああオージロウ君、悪いけど今日は相棒を借りてるよ〜!」


 マウンドから話しかけてきたのは多岐川高校2年で連合チームのエース格、知的な印象の石元さんだ。


 エースと組ませてしょーたのお手並み拝見ってところか、それじゃ順番を待つしかない……と思ってたら。


「オージロウ君、なにを突っ立ってんのさ?」


「だって監督、キャッチャーが」


「キミのボールはこの子が受けるから安心しな。さあマウンドに登って準備して」


 この子って……確かにしょーたの隣のボックスには松花高校女子マネの泉優子いずみゆうこさんが座っているが、まさか?


「泉さんが受けてくれると」


「うん、この子はソフトボール部でキャッチャーやってたんだ。けど、右肘を痛めちゃって選手としてはもう続けられなくて。それでこっちを手伝ってもらってるのさ」


「あの、よろしくお願いします、山田君」


「は、はあ」


「彼女は合同練習の時はいつも石元君のボールを受けてるから大丈夫。遠慮しないで投げ込んできな!」


 そこまで言われると断れないよな。今日初めて会った女子に投げ込むのはちょっと気後れするが……オレはマウンドで投球の準備に入る。


 泉さんはキャッチャーにしては細身というか。まあ体格だけじゃなくリードや肩の強さとかいろいろ条件があるから、おかしくはないけど。


 そして泉さんがど真ん中にミットを構えてからオレもノーワインドで投球動作を開始して、右足を踏み込んでから左腕を振り抜いた!


「うりゃあああ!」


 気持ちいいくらい指にかかったボールがキャッチャーに向かって飛んでいく。


 ズバンッ!


これまた心地よい乾いた捕球音がミットから轟いた。だけど、ど真ん中めがけたはずが右打者の内角側へ食い込んじゃった……。


 これまでの練習の成果で制球は良くなってるはずなんだけどなあ。


「ナイスボール! とても速いので驚いちゃいました!」


 泉さんから声と同時に返球が……コロコロと転がってくる。まあ、これだと確かに選手としては厳しいのかもしれん。


 だけどキャッチングは本物だ。オレのボールはストレートでもクセがあると姉ちゃんから言われて、しょーたも最初のうちは苦戦してたが……彼女は初見で普通に捕ったのだ。


 そんなことを考えてたら、隣からパーン! と小気味よい捕球音が。石元さんは右の本格派でキレのいいストレートを投げ込んでる。


 オレも負けじとどんどん投げ込んでいく。


「うりゃあああ!!」


 ズバーン!


 もう50球投げ込んだかな。さすがに汗が額を伝って落ちてくる。


 石元さんはテンポよく投げ込んでもっと球数いってるのに。まあ、オレは普段の練習では週に2、3回で多くても80球しか投げてないしなー。


 投手としてのスタミナの差を痛感しつつ、思い切り全力を込めて右足を踏み出し、左腕を素早く振り下ろす。


「うりゃああああ!!」


「ちょっと、速くて捕れない!」


 しまった、暴投になってボールが後ろへ。


 真ん中高めあたりを狙ったはずが……だけどここまで投げた中で一番手応えがあってボールがノビていくような気持ち良い球離れだった。


 おっと、泉さんは投げられないんだった。オレの方からもらいに行かないと。


「ゴメン、なんか力が入ってしまって」


「ああ、いえ……でも見た目よりも優しいんですね」


 女子から『優しい』だなんて初めて言われた……!


 ひゃっほう! と喜びかけたが、よく考えると女子からは無愛想な顔だと思われてるってことか。


 モテないわけだと落ち込みかけると、上中野監督から声が。


「お疲れー、オージロウ君! 今日はそれぐらいにしとこっか!」


「……はい」


 さっきので限界に来たと思われたんだろうな。まだ投げ足りないけどクールダウンしつつ石元さんの投げ込みをしばらく眺める。


 そして石元さんも100球で終了となり、監督から休憩の後に守備練習へ回るように指示され、オレもブルペンを出かけたのだが。


「オージロウ君、ちょっとお願いがあるんだけど。ウチにはもう一人ピッチャーがいてさ。キャッチャーやってもらえないかな?」


「えーっ!? お、オレっすか?」


 急に何を言うかと思ったら……どういうつもりだよ?

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