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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
連合チーム参加編

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第19話 遠投

いつも読んでいただきありがとうございます。

主人公の高校名ですが、設定したもののしっくりこないので変更することにしました。

尾羽毛高校→大化おおばけ高校

既出分は修正済みです。よろしくお願いします。

「いーちいっちいっちいちにっさんしーっ!!」


「いちにっさんしーっにーにーさんしーっ!!」


 多岐川たきがわ松花まつはな両校の選手たちとマネージャーさんがひと通り……プラスで姉ちゃんの自己紹介が終わると、早速合同練習が始まった。


 といってもオレとしょーたは建前としては『顔合わせ』……練習もあくまでゲスト参加だ。


 だけどっ!!


 このみんなで掛け声出しながらランニングするっていう、まさにこれこそがっ!!


 チームで練習しているという実感が湧いてくるのだっ!!


 いつもしょーたと2人だけでバックネットをグルグル回るだけとは違う。なんかこう、やってる感が半端ない。


 しかし結構ペースが速いな。


 しょーたは平気な顔してついていってるがオレは早くもバテそうだ。


 ただでさえキャッチャーができるということでしょーたはチーム内の注目を浴びているってのに、初っ端から引き離されるわけにはいかない。


「いっちにーさんしーっ!!」


「にーにーさんしーっ!!」


 オレは負けじと声を張り上げて食らいついていく……のだが。


「はあ、はあ、はあ〜っ!」


「おいおいおい〜! まだ始まったばかりだってのに、大丈夫かよお前〜!?」


 なんとか最後までついていったが息を切らして動けないオレに声をかけてきたのは、松花高校2年生の阿戸あとさんだ。


 見た目や喋り方はチャラい感じだが実は面倒見の良い先輩なんだな……と一瞬思ったんだけど。


「なーなー。オージロウ君の姉ちゃんってさぁ〜、滅茶苦茶カワイイよな〜! それでさあ。今度、俺とデートしてくれって頼んでくんねーかなぁ?」


 ついさっき会ったばかりだっていうのにそういうこと言ってくるかフツー?


 こんな野郎をオレの姉ちゃんに近づけるわけにはいかねーな。


「あー、そういえばつい最近、彼氏ができたとか言ってたなー。空手部主将の」


「……マジかー。それじゃあさ、彼氏と別れそうになったら俺に真っ先に教えてくれよな。頼んだぜー!」


 へっ、誰が教えるかってーの。


 それはともかくストレッチを入念にやって、その後はキャッチボールなわけだが。


 しょーたは他の人たちに声をかけられてしまい、オレは相手が……。


「オージロウ君。俺とキャッチボールしようか、ん?」


 声をかけてくれたのは多岐川高校2年生で連合チームのキャプテンを務める別府べっぷさんだ。


 顔はゴツくて威圧感がある。だけどさすがキャプテン、温和で面倒見が良さそうな先輩だ。


「お願いします!」


「それじゃ最初は軽く……なかなかいいボール投げるねー、オージロウ君!」


「野球に復帰してから毎日みっちりキャッチボールやってるんで」


「それは素晴らしい。ところでピッチャーやってたんだっけ。やっぱり肩は自信があるの?」


「はい。小学校6年生でソフトボール投げした時、たぶん90メートルくらい投げました」


「……ほ、本当ならすごいな。だけど何で『たぶん』なのさ」


「計測ラインが70メートルまでしか引かれてなかったんです」


「ふーん。じゃあ今日はどこまで投げれるか、試してみるかい?」


 よし来た、遠投が!


 なにせウチのグラウンド……というか割り当てられた場所ではとても遠投なんてできない。


 3年経ってどれくらい伸びているか楽しみだ。いやブランクで逆に落ちてるかも。


 不安も混ざりつつ、50メートル、70メートルと徐々に遠投キャッチボールの距離が伸びていく。


 そして遂に90メートル。さすがに遠く感じる。


 別府さんはあまり肩が強くないのかワンバン、ツーバンでボールを返してきた。


 さあいくぜ、新たな記録に向かって!


「うりゃあ!」


 余裕でノーバンで届くだろう……その自信はあっさりと崩れ去った。


 別府さんの手前で失速してドスッと地面をバウンドしてから彼のグローブに収まったのだ。


「ドンマイ、もう一丁!」


 別府さんから返ってきたボールを思わず握りしめたが、落ち込んでいるヒマはない。


 もう一度左腕を目一杯の力で振って山なりのボールを返す。だがまたもや届かない。


 3年の間に衰えてしまったのか。まさか小学生でピークを迎えていたなんてことはないよね?


 しかし何度やっても結果は変わらない。


「オーケー! もう終わりにしよう」


 別府さんから終了の声が。2ヶ月の練習は何の成果もなかったのかと身体がこわばるのを感じたその時だった。


「オージロウ! 遠投だからって投げ方を普段と変えちゃダメでしょー!? 手投げで山なりになってるよー!」


 ね、姉ちゃん! 練習場に響き渡る声にみんなの視線が集まる中、指摘はまだ続く。


「普段のキャッチボールを思い出して、全身の動きで下半身も使って投げる! それで低く強いボールを投げてみて!」


 言われるがまま、全身を連動させるように気をつけて、まっすぐ相手の胸もとに届かせるくらいのつもりで力を込めて投げてみた。


「うりゃああ!」


「えっ……マジで低い弾道で、ノーバンで届きそうだ……うわっ!」


 パーン! と小気味よい捕球音が聞こえてきた。あんな角度で90メートルを……我ながらスゲーと思わず見入ってしまうほどだった。


 同時に姉ちゃんのアドバイスの的確さに、オレだけでなくこっちを見つめていたチームメイトたちがおおーっ! とまさに感嘆の感情がこもった歓声を上げたのだった。


「そーそーその調子ー!」

「あんがとよ、姉ちゃん!」


 思わずいつもの調子でやりとりするオレたち姉弟。少し気恥ずかしさもあったが、それ以上に力をもらった気がして、オレはその調子で3球低い軌道でボールを別府さんに投げ込む。


 そうして、そろそろ遠投が終わるというタイミングで、オレは思い切って角度をつけて左腕からボールを放ってみた。


「うりゃああっ!! これでどうだ!」


「おいおい、何処まで投げたんだ……うわああっ!」


 ボールは別府さんの頭上を越えて外野フェンスにドーン! と直撃してしまった。


 120メートルくらい行ったかな……大幅に自己ベスト更新となって、オレは思わずニンマリして静かに喜びを噛み締めた。


 姉ちゃんは……なんだよー、多岐川の女子マネと談笑してて肝心なところを見てやがらねえ。まったくもう。


 そしてオレは、両監督がさっきのに視線を送っていたことを見逃さなかった。


 ウチは、大化おおばけ高校はしょーただけじゃなくオレもいるんだって、これでちょっとはアピールできたかな……!

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