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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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183/186

第183話 勝利への執念

「あぁ〜! 両手の痺れが、まだ取れんので!」


 1塁ベースから聞こえてきたのは多岐川の4番バッター田村の声……さっきオレの渾身のストレートを打った時にそうなったらしい。


 それでも162キロのボールを引っ張って打ち返したんだから素直にすごいバッターだと思う。


 だがオレの球威に押されてサードの正面にゴロ……ただ、こちらの予定通りにゲッツーが取れなかったのは残念。


 というわけで現状はワンアウトでランナーは一三塁。


 右打席には5番バッター本所ほんじょが、何やら思い詰めたような顔で……。


 ちなみに本所はDHで先発投手なので、マウンドを石元さんに譲ったあとも大谷ルールで打席に入り続けられる。


「……絶対に打ってやる……でなきゃさっきオージロウと勝負させてくれたみんなに申し訳が立たねェ!」


 なんか悲壮な覚悟って感じで呟いてる。


 やっぱりあの時はオレを敬遠……少なくともまともに勝負しないって指示が出てたんだ。


 それでも選手の意思を優先してくれるのは蒼田監督らしいとも言えるが……つまりこの打席の本所は今まで以上に必死になって食らいついてくる。


 田村との対戦で全力投球ストレートを連発したからさすがに肩が疲れてるけど、もう一度それをやるしかない。


 額から流れ出てくる汗をユニフォームの袖で拭って。


 セットポジションから……気持ち的に一息つくためにファーストへけん制球を投げて。


 ふう〜っと息を吐き出してから右足を踏み込んで、左腕を振り下ろす!


「うりゃあああっ!!」


「どあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


 無事に外角低めのストレートで空振りを奪った……のはいいんだけど。


 これまでとは明らかに違う点がある。


 本所のヤツ、もろにアッパースイングで振り回してきたのだ。


 絶対に点を取るという決意のもとでこれってことは、最低でも外野に飛ばして犠牲フライ……と考えてるのだろうか。


 まあ下手に内野に転がしてゲッツー取られるよりはいいのかもしれんけど。


 それとも……。


 オレは一塁ランナーの田村を見る。


 すぐにベースに戻ったが、なんとなく慌てていたような気もする……。


 もちろん多岐川もゲッツーは避けたいのだから盗塁を狙っていてもおかしくない。


 三塁にランナーがいるからうっかりセカンドに送球できないし。


 あとは勝崎さんの肩について情報を持っているのか。正直言えば弱くはないが強くもない。


 つまり田村の足なら十分にセカンドを奪える。


 オレはセットポジションにつくと、静止をいつもより長くした。それから右足を上げて。


 大きくリードを取る田村を監視するように視線をむけたまま、ファーストへ足を踏み出す!


「おっと!」


「セーフ!」


 んにゃろ〜。見た目より俊敏に戻りやがる。


 しかし、あまりランナーに気を取られてピッチングに影響が出ては本末転倒だ。


 じっと見ておきつつも……サッとホームに顔を向けてクイックモーションで投げる!


「うりゃあああっ!!」


「どあ゙あ゙あ゙あ゙ーっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 アッパースイングには高めの方が合わせにくい……外角高めで連続の空振り!


 それはいいけど勝崎さんがいきなり立ち上がって!


 オレは反射的に身体を屈める……がボールが上を通過する気配がない。


「セカンドもらっちゃうんで!」


 なんか子供がお菓子でももらうかのように楽しそうな声で、田村がセカンドへ悠々とスライディングもせずに到達するのが見えた。


 サードは……別府さんが様子を伺うかのように中途半端な位置で止まっている。


「サード!」


 勝崎さんが声を上げると即座にサードへと引き上げて……つまりはダブルスチール狙いと見せかけるセカンド盗塁が成功したというわけだ。


 いや、セカンドへ送球したら別府さんがホームを突いた可能性もあるけど。


 まあその気があってもなくても、そうキャッチャーに思わせた時点で別府さんの勝ちだ。


 そういう判断力というか、記録には残らないが確実に相手を揺さぶるプレーが上手い……さすがはキャプテンというべきか。


 もう終わったことは仕方がない。


 こうなりゃ本所と次のバッターを連続三振に仕留めるのみ。


 本所のスリーバントスクイズ……は無いだろうな。そもそもヤツは顔に出るからそういうプレーに向いてない。


 ではいつものコースで行きますか。


 これでトドメだ!


「うりゃあああっ!!!」


「絶対に当てる……どあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーっ!!!」


 バコォーーッ!!


 詰まっていはいるがそこそこ強い打球音……。


 本所のヤツ……内角高めストレートを、まるで下から大根切りするかのようにメチャクチャなスイングで無理矢理当ててきた。


 打球そのものはフラフラしたフライなのだが……ファーストの後方に落ちそうだ!


「落としてなるものか! うおおーっ!」


 ファーストの原塚さんが必死に追いかけるが背面キャッチとなる……これはダメかも。


「そらああーっ!」


 ほぼ追いついたところで原塚さんは前後に180度開脚しながら滑り込んで……。


 パシッ!


 なんと、そのままの体勢でキャッチしたのだ!


 確かにあの方が立ったままよりはギリギリまで打球を見ながら捕球できる。


 元体操選手の彼にしかできない芸当だが……。


 しかしこれではすぐに送球できない。つまりタッチアップされる!


「こっちにくださいです!」


 カバーに走っていたひょ〜ろくくんが原塚さんにトスを要求し、ホームに投げる体勢に……。


「こっちに投げろ!」


 オレは必死に手を振って知らせて自分に中継させる。


 そしてボールを掴むとホームを一瞥して……セカンドに投げる!


「思わず飛び出したので!」


 田村が慌てて帰塁するところにしょーたのグラブへ送球して……。


「セーフ!」


 残念……アウトは取れなかった。


 ホームはもう間に合わない状況だったので、一か八かでセカンドに投げたのだが。


 クソッ……本所の勝利への執念の前に勝ち越し点を許したオレはさすがにショックを覚えた。


 でもそんなことを言っていられない。次の打者をキッチリ抑えて反撃しないと。

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