第181話 膠着状態……?
バッコーン!
バットの芯を外して詰まった打撃音……多岐川の1番バッター蒼田カケルをポップフライに仕留めたところだ。
「オーラ〜イ!」
マウンドからやや左斜め前に落ちてくる……オレは精一杯の声を出して周囲に自分の守備範囲だと知らせつつ捕球体勢に入る。
内野手に任せてもいいのだが……連合チームゆえに守備の連携も全てが十分に練習できるわけじゃなく、ピッチャーフライのカバーまでは行き届いていない。
というわけで自分で捕った方が確実だ。
チームメイトを信頼してないわけじゃないが、こういうのは話が別なんだよな。
最後はオレのグラブに収まって無事スリーアウト、7回表の守備を無失点で終えた。
しかし捕球してから周りを見回すと……オレを囲むようにファースト以外の内野手と捕手が集まっていたのには思わず苦笑いだ。
「なんだよいったい! ちゃんとベースの方をカバーしとけよ!」
「だってよぉ、なんだかふらついてて危なっかしいから」
「心配でハラハラドキドキしたです〜!」
「オージロウが頼りないからこうなる」
コイツら好き勝手言いやがって……。
それはともかく、この回から守備位置に変更があった。
ファーストは代打で出た原塚さんがそのまま入って。
中地さんはお役御免となり、その打順に控えキャッチャー勝崎さん、しょーたはショートに回った。
最後にひょ〜ろくくんがセカンドに移って、これが今の内野陣である。
これでショートの不安が無くなったのはいいのだが、勝崎さんがオレの160キロ超えを問題なく捕球できるのかが少し気になる。
今のところは問題ないが……自分でもどこまで球速が出るのかわからないだけに。
あとは蒼田カケルのバッティングも。
これまではテイクバックをあまりしていなかったのだが……いきなりやり始めた。
その際にトップの位置もやや後方に動かして、その反作用で肩に乗せたバットのヘッドが前に向いてくる、という変化も。
今さらの急造フォームが明らかに影響して振り遅れたのだが……なぜか不気味に感じるんだよな。
まだ2回残ってるし、まだ対戦する可能性も無いとは言えないから余計に。
で、その裏のウチの攻撃は下位打線が石元さんに手も足も出ず三者凡退。
お互いにラッキーセブンとは程遠い結果となったのである。
やれやれ、オレの打順が回って来るまでこのまま膠着状態が続くのか。なんだかダルいなあ。
そんなことを考えて、どこか気を抜いたのが良くなかったのだろうか。
8回表の多岐川の攻撃……2番の別府さんから始まる好打順でオレはピンチを背負うことになろうとは……。
「ん! ここが良さそうだ!」
別府さんは虚を突いてセーフティバント……しかしオレのボールに押されたのかファースト側へ転がっていく。
失敗だなこりゃ……と思ったのは軽率だった。
「スマン! 出遅れた!」
ファーストの原塚さんが完全に遅れてしまい、別府さんに出塁を許したのだ。
まあ、オレもファースト任せでほとんど打球を追わなかったのが悪いのだが。
原塚さんにもバント処理の練習はしてもらっていたはずだが……こういう場面こそ実戦経験不足が響いてくる。
というか別府さん……いや多岐川ベンチにそれがバレているのでは?
その懸念はおそらく当たっていた。
コンッ!
続く白城さんまで送りバントを! 別府さんもそうだがオレのボールをどうすれば上手くバントできるか、彼らはよくわかっているのだ。
しかもオレとファーストの間に転がすような感じ……オレはダッシュで捕りに行ったのだが。
「うわっ!」
「またスマン!」
今度は原塚さんもさっきの挽回とばかりに突っ込んできて、オレがファーストに送球するのを邪魔する形になってしまった。
「……本当にスマン」
「いえ、オレが声出しするの忘れたので、ドンマイです」
互いに声を掛け合ってあとには引きずらないようにしたけど……ノーアウト一二塁で4番の田村。
マジでヤバいぜこりゃ……!




