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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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第180話 エースナンバー

「おらああっ!!」


 グワッシーン!


 オレの後ろを打つ阿戸さんが本所ほんじょの三段ドロップを捉えて、レフト後方のフェンス直撃弾!


 余裕で2塁まで到達して、一気に勝ち越しのチャンスだ。


「うおおっー! どんどん続いてビッグイニングいこうぜー!」

「ここはピッチャーがなんとか踏ん張ってくれ〜!」


 両側スタンドの盛り上がりも最高潮って感じで、ベンチ内の会話も聞き取りづらい時がある程だ。


 しかし……マウンドの本所はオレにスリーランを打たれたショックなのか覇気がなく、ドロップも明らかにキレが悪かった。


 恐らくワンバウンドするくらいのボール球を振らせるつもりが、甘く入ってしまった……これはもうキツいんじゃないかな。


 そう思っていたら、やっぱり多岐川ベンチに動きが。ということはあの人の出番か。


 そして出てきたのは多岐川の背番号1を背負う石元さんであった。ちなみに本所は11番。


 阿戸さんの打席の間に急遽ブルペンで肩をつくったと思うけど……本来なら7回のアタマから出したかったはず。


 投球に悪い影響がなければいいけど。今は敵チームだが、つい3ヶ月ちょっと前まで一緒にプレーした仲間だけに気になってしまう。


 それと、良くも悪くもインパクトの強い本所の後に投げるのはどうなのかな……石元さんはキレのあるストレートと変化球、そして精密なコントロールが持ち味だが派手さはない。


 順番が逆のほうが良かったんじゃ……まあ今更言っても遅いのだが。


 ちなみに本所は泣きそうな顔でベンチに引き上げ、蒼田監督が肩を抱いて労っているのが見えた。


 生意気ではあったがやっぱり1年生、こらえきれなかったのだろう。


 さて、右打席には中地さん。強敵続きでなかなか活躍の場面が少ないけど、ウチの中ではパンチ力のあるバッティングが魅力の先輩だ。


 代わったばかりの石元さんを攻めるのに不足はない選手……ここで一気に突き放せれば。


 そして注目の初球……!


「ストライク!」


 内角の胸元を突く、糸を引くようなキレのあるストレートでスパッとストライクを取ってきた。


 相変わらずの精密なコントロールで、あれはちょっと手が出ないな……そういえば球速は。


 150キロ! 恐らく石元さんの最速更新のはずだ。


 さて次は何を投げてくる。やっぱりストレートかスライダーでストライクを取りに来るのか、それとも。


 対する中地さんは、どちらであっても振り遅れないように集中しているのがわかる。


 石元さんの指から放たれたのは……。


「お、遅い!」


 中地さんの困惑した声が聞こえてからワンテンポ置いて、キャッチャー田村が真ん中低めに構えたミットにポスっとボールが吸い込まれるのが見えた。


「ストライク! カウント0−2!」


 まさかのスローカーブ……!


 ただ遅いだけじゃなくて変化量も大きく、タイミング的にも視覚的にも惑わされる。


 中地さんは呆気にとられた感じでバットを振ることもなく見送ってしまった。


 石元さんが元々投げていたカーブはもっと小さい変化だったはず……これを習得中だったからこの前の練習試合で投げなかったってわけだ。


 これはヤバい……そして3球目にその嫌な予感は現実となった。


「クソッ、初球より速い!」


 中地さんはど真ん中近くのボールを振りにいったのだが……。


 ズバンッ!


「ストライク! バッターアウト!」


「おっしゃああ! さすがエースナンバー、すげーキレ味のスライダーで三振取った!」

「あー、せっかく押せ押せだったのに」


 スタンドがどよめく中、石元さんは飄々とした雰囲気でベンチへ引き上げていく。


 スライダーも進化してる……途中までストレートと見分けがつかなかった。


 初見では対応が難しい組み立てのピッチングを見せられて、中地さんを責める気にはなれない。


 うん、やっぱり多岐川のエースは間違いなく石元さんなんだ。


 同点に追いついたとはいえ、まだまだ簡単に勝たせてくれそうにない。


 オレも気を引き締めて多岐川打線を抑えないと。

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