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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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第178話 代打と走塁

 6回裏の攻撃も既にツーアウトというところで古池監督は思い切った策……1番バッターの近海ちかみに代えて原塚さんを打席に送った。


 そして入れ替わりにベンチへと戻ってきた近海を監督はねぎらった。


「今日はお疲れさん、近海くん!」


「ふぅ〜! 疲れたっぴょ〜! しばらく奥で休憩させてもらうだびゃら!」


 普段は疲れていてもあまり口に出したりしないのに珍しいな。ひょっとして……!


「近海くん! もしかして熱中症になってるんじゃないのか? それならお医者さんに診てもらわないと」


 今日も太陽光線は容赦なく照りつけ、梅雨明けから一週間も経っていないせいか蒸し暑い。


 そしてここまでは多岐川打線の攻撃時間が長く、野手は打球が飛んでくるのを待っていなければいけないのだ。


 しかし近海はスッと左手を上げてオレの話をストップさせてそれを否定した。


「ちがうんだっぴょ! 今日はなんていうか、精神的に疲れがたまったんだっちゃ!」


「今日はショートがひょ〜ろくくんだったから、セカンドの近海くんが随分とカバーしてくれてたんだよ。たぶんその気疲れじゃないかな」


「なるほど……それじゃ監督はそれに気づいて交代を」


「ああ、ネクストバッターズサークルで目線がどこか上の空って感じだったから。それと原塚くんならここでヒットを打てそうな気がして。その両方だよ」


 そういうことか、それなら安心だな。


 じゃあ、あとは原塚さんが多岐川の本所ほんじょを打てるかどうかってところに焦点が集まる。


 原塚さんは元は体操選手だったのだが背が高くなり過ぎてそちらを断念し、野球に転向したという経歴を持つ。


 アスリートだけあって特に上半身は胸板が厚くムキムキなのだが……。


 その胸板が内角打ちを窮屈なものにしており、事実上外角のボールしかヒットにできないというのが現状だ。


 しかし芯に当たった時はその筋力で凄まじい打球を放つ。


 そんな特徴を活かすために、打席を少なくして相手チームにデータを集めさせずボロが出ないようにする目的で、主に代打としてこの大会に臨んでもらっている。


 あとはファーストの守備固め……背が高く柔軟性に富む身体はまさにファースト向きだ。


 余談が長くなったけど、右打席に入った原塚さんは集中して本所のボールを待っている。


 そして初球は……。


「ストライク!」


 うーん。内角をストレートで攻めてきたか。


 まさか多岐川のあの記録員男子が既に分析済みなんじゃ……だとすると監督の賭けは失敗に終わる。


 そして続けて内角にストレートを投げ込まれてあっさりと追い込まれてしまった。


 まあ、まだ3回残っているから気持ちを切り替えよう……そう思った瞬間だった。


「そりゃああーっ!」


 原塚さんの気合の入った声……そして両ひざを屈めて。


 バットを地面スレスレで振り回すと、そこへ目掛けるように外角へと落ちてきた三段ドロップが!


 バッシィーンッ!!


「んんっ! とんでもない速度でライナーが頭上を!」


 キレイに芯で捉えた打球はセカンドの別府さんが反応する暇もなく右中間へ!


 これならセカンド行ける! と思ったのだが。


「ひえ〜! 何とか追いついたけど危なかった〜!」


 ライトの蒼田カケルが、打球がツーバウンドしたところで追いついたのだ。


 そしてその強肩でセカンドベースをカバーしている鬼石くんのグラブに直接返球して……ホントコイツ、野球センスの塊みたいな選手だな。


「あ゙あ゙あ゙〜! 何で俺の必殺技がオージロウ以外のザコに!?」


 本所がまたマウンドで騒いでる……というか思っていてもそういうのは口に出さないほうがいいんじゃないかな。


 でも不思議と憎らしく思われないのは得な性分してやがるぜ。


 そういやあんな打ち方と狙い方……古池監督の顔を見れば一目瞭然、フフンとドヤ顔の笑みで一杯だった。


 後で聞いたら、データが出回ってない代打ということで田村のリードなら……。


 最後は念の為に外角へ落ちる三段ドロップを要求して仕留めにくるんじゃないかと。


 で、原塚さんには落ちきった地点を狙わせるためにあんな振り方を……。


 まあ、上手くいってラッキーだったねとしか言いようがないけど。


 そして塁に出てからも原塚さんの活躍は続く。


「この野郎っ!」


「セーフ!」


 一塁ベースから大胆な距離でリードを取っているのだ。


 それに苛立った本所が素早い牽制を送るも、原塚さんは素晴らしい反応で塁に戻る。


 オレはネクストバッターズサークルでヒヤヒヤして見ていたが、古池監督は以前から原塚さんにリードの取り方と走塁練習に力を入れてもらっていたらしい。


 代打で出塁する場面は大抵僅差で競り合っている……そこで相手バッテリーにプレッシャーをかけられたら……!


 そして打席のしょーたに三段ドロップが投げられた瞬間を狙ったように盗塁を仕掛ける!


「ここで盗らせないんで!」


 ワンバウンドして捕球すると、田村は座ったままバズーカ送球をセカンドに送ったが。


「セーフ!」


「スゲー! あのバズーカをかいくぐってセカンドもぎ取りやがった!」

「誰なんだよアイツ! よく見ると結構ムキムキだし!」


 スタンドからもどよめきが。


 原塚さんは体操競技の中でも跳馬が得意種目だったそうで……跳ぶ前のダッシュが速かったらしく、それを走塁するフォームに直す練習にも取り組んでくれていたらしい。


 結果、筋力のある走力とドロップの遅い球速が相まって田村は盗塁を許したのだ。


 そして更に。


「フォアボール!」


 すっかりリズムを崩した本所は粘るしょーたを塁に出してしまった。


 というわけでツーアウトながらランナー二人……いい場面でオレに回してくれてありがとよ、しょーた、原塚さん。

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