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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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第176話 口論のち一歩前進

「オージロウ! お前なあ!」


 5回表の多岐川の攻撃を無失点で切り抜けたオレだが、ベンチに戻る途中でしょーたから怒気を含んだ声をかけられた。


 まあ、サインに首を振りまくったからそうなるわなあ。と自分にツッコミを内心で入れつつ、一応は釈明に努める。


「あー、サインの件なら悪かったよ。だけど結果的にはオレの直感通りで良かっただろ?」


「それこそ結果論だろうが! おれだってちゃんと組み立てを考えて出してるのに、もうグチャグチャだ!」


「そうはいってもさあ」


 うーん、しょーたはかなり頭にきている様子で口論がなかなか終わりそうにない。


 少年マンガとかだと、こういう時はキャッチャーの方が……まあ◯カベンの◯中が◯田のリードを全面的に信頼するといった例外パターンもあるにせよ、『お前をとことん信じる』といった感じで丸く収まるハズなのだが。


 現実の男子野球部はこんなもんだよね。女子はどうだか知らんけど。


 などと考えながらベンチに戻ってきたところで、古池監督が見かねて間に割って入ってきた。


「オージロウくんもしょーたくんも、いつまでも言い争いしない! 中心の二人がそんなんじゃチームに悪い影響が出るよ!」


「だってですね、オージロウのヤツがおれのサイン無視しまくりで」


「でもしょうがないだろ、サイン通りに投げたらピンチを広げるか打たれるかだったんだから」


「わかった。不満はあとで聞こうじゃないか。だからしばらくおとなしくしてて」


 監督からそう言われちゃ仕方がない。とりあえずオレたちはベンチの端と端に座ってお互いに顔を見ないことにした。


 そうだ、アンダーシャツを着替えないと。暑さと全開投球で汗びっしょりだ。


 そう思って立ち上がると、この回先頭バッターの中地さんがベンチを出たところで監督が一言だけ話しかけるのが見えた。


 中地さんはそれに頷いてから打席へと向かう。何かアドバイスでも出たんだろうか。


 その次の打順の田白にも何か言ってからネクストバッターズサークルへ送り出した……オレは内容が気になって仕方がない。


 こういうもったいつけられる感じはイライラしてくるんだよな。我慢できない……ダイレクトに聞いてしまおう。


「監督、さっきのはいったい」


「で、お互いにどう不満に思っているのかな?」


 いや、その話よりも今は……と言いかけたところでしょーたが先に口を開いた。


「あの、さっき中地さんたちに言ったのは相手ピッチャーの攻略法か何かですか?」


「あー。それなら一応はそうかな。さっきやっと考えがまとまったからね」


 ふーん。で、具体的には……と聞く前になぜか記録員の松花高校女子マネ泉さんが謝ってきた。


「ゴメンね遅くなって。私がデータをまとめるのに時間かかっちゃったから」


「いやいや、泉さんはそれだけじゃなくてオレたちのサポートもこなしてるし、遅くなんてないよ! だから気にしないで」


「うん、オージロウの言う通り」


「……ありがとう、オージロウくん、しょーたくん」


「まだ試合の中盤なんだから大丈夫。それに責任は全て監督である自分にあるのだから。じゃあ説明するけどいいかな二人とも?」


「もちろん」

「いいですよ」


 ここでオレとしょーたの返事がかぶってしまい、お互いに苦笑いしながらも黙って説明を聞く。


「とりあえずは各打者に狙いを絞っていこうって言った。中地くんには小さい方のカーブ」


「なんでそっちなんですか? 別のストライクを取りにくるボールのほうがいいんじゃ」


「彼の場合は本所ほんじょのストレートにもドロップにもついていけてないから……まだバットに当てられそうなボールに絞ってみてはというわけさ」


 へえ〜、と正直なところ半信半疑で聞いていたのだが、グラウンドから快音が!


 バシィーッ!


 おっしゃ! 三遊間を抜いてヒット!


 と一瞬思ったけど、多岐川の打球予測シフトで左に寄っていたショート鬼石くんに追いつかれてあっさりアウト。


 なんだよダメじゃん……と言いたいがこらえて次の田白に期待をかける。


 こちらも3球目のストレートを振り抜いてセンター前に落ちる……かと思ったらやっぱりやや前進していたセンターにキャッチされてしまった。


「監督、さっきのも指示通りなんですか?」


「まあ、指示通りというか。中地くんが小さい方のカーブを前に飛ばせたら、ストレートかドロップの打ちやすい方を狙ってみてって言っただけだよ」


「それは田村くんのリードの傾向でってことですか?」


「ああ。捉えられたボールでストライクを取るのを、次の打者にはやっぱり避けてる傾向があるから。こっちが狙い球を一つに絞ったのか様子をみてるんだろうね」


「すげー! さすが監督!」


「いや、こんなの自慢するにはまだまだだよ。もっと複雑な分析をする監督なんていっぱいいる。だけど」


 古池監督はそう言いながらも最後は胸を張って言い切った。


「今までの全然手に負えないって感じからは一歩前進しただろう?」


「はい!」

「おれもそう思います!」


 またまたしょーたと返事がかぶってしまった。でも今回は苦笑いせずにそのまま受け流す。


「で、二人のお互いへの不満を聞こうじゃないか」


「いえ、なんかもういいです」

「おれはそろそろプロテクターを着ける準備を始めないと」


「なんだよ、せっかく仲裁しようって張り切ったのに」


 今度は監督から不満が出たが、時間を置いたのもあってオレたちはこれ以上罵り合うのが馬鹿らしくなったのだ。


 それになんと言っても閉塞感があった本所の攻略に光が見えてきたというか……。


 オレがホームランを打つだけではここから3点差を追いつくのは厳しく、みんなの協力が必要だからこそ。


 残念ながら結果的に三者凡退に終わったが、希望を抱いてオレは6回表のマウンドに登る。


 まずはその本所の打席を抑えないとな。

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