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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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第171話 必殺技

「ここまではやられてばっかだったがァ、今回こそリベンジ果たすぜェ! なァオージロウさァん!」


 本所ほんじょくん。リベンジは別にいいんだけど、さっき呼び捨てにしてたじゃん……今さら『さん付け』してもなんだかなあ。


 とは一応思ったけど、まあオレ自身もそんなに上下関係とかやかましく言う方じゃないし。


 そもそもモノローグだけならオレだって先輩を結構呼び捨てにしてるもんなあ。


 というわけで呼びかけには普通に返しておこう。


「いいから、とっととかかってこい!」


「……なかなか言うねェ。自信満々っつーか、そこまでいくともはや傲慢ごうまんだなァ! そいじゃまァ、遠慮なくリベンジさせてもらおっかァ!」


 あれ。普通に返したつもりが挑発的に受け取られたらしい。言葉って難しいなあ。


 そして本所はワインドアップから左足を伸ばしたまま勢いよく上げると。


 少し捻りを効かせたフォームから力を解放するように左足を踏み出し、力を凝縮した右腕を振り下ろす!


「ドりああああっ!!」


 暴投……いや、いったんボールが浮き上がって。


 バッターの手前で達した頂点で静止するかのようにブレーキがかかって。


 そこから一気に下へと突き刺さってくる!


 だが悪い、落ちきる地点を見切った!


「うりゃあああっ!!」


 スカッ!!


 パシッッ!! と地面スレスレでミットが受け止めると球審がすかさずコールする!


「ストライク!」


「うわーっ! 豪快に空振ったーっ!」

「今の変化球、キレがスゲー!」


 両側のスタンドが一斉に騒ぎ出して、まだ打席の途中なのにざわめきが収まらない。


 それにしても今のは本当に何だったんだ?


 もちろんカーブ……いや本所が言うところの『三段ドロップ』だというのはわかるんだけど。


 見切ったと思ったら、そこから更にまたキレを増して落ちるみたいな。


 右ピッチャーのカーブだけど、ほぼ下に落ちて少しだけ左バッター側に変化する『縦カーブ』って感じの軌道もイメージしづらい。


 だけど次は当てて……もう2球目を投げてくる!


「ドりああああっ!!」


 外角低めストレートがもう手前に!


「うりゃああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


「どうだァ! 今度こそ俺の最速ストレートの勝ちだァ!!」


「うおおーっ! オージロウが続けて空振りなんて!」


 本所はまたもや勝ち誇り、スタンドからはオレの連続空振りへの反応でざわめきがまた大きくなってる。


 球速表示は……154キロで確かにヤツの最速。


 だけどもっと速く感じたのだが……いやこれって緩急が効いてるってことじゃん。


 ヤバいな。このままじゃあ……!


 とにかく狙いを絞って……それ以外は全集中して見極めるかファウルで逃げるしかない。


 しかし相手バッテリーはオレにじっくり考える猶予を与えまいとしてくる。


 バットを構えるとサイン交換を一瞬で終わらせて田村がミットを前に出し、本所はすぐにモーションに入る。


「これでオージロウにトドメじゃいィ!」


 また呼び捨て……はどうでもいいとして、投げてきたのは……内角低めストレート!


 ドスンッ!!


「ボール! カウント1−2!」


 ふう〜!


 ホームベース手前でワンバウンドするほど低かったが、追い込まれるとうっかり振ってしまいそうなノビのあるボールだった。


 実際バットは出掛かったけど、ピクッと腕が動いた程度で何とかこらえた。


 これで一息つきたいところだけど……やはりそうはさせてくれないらしい。


「続けて行くぞ、ドりあああっ!!」


 今度もストレート、外角低め!


「うりゃああ……あああっ!」


 ドスンッ!!


「ボール!」


 ひええっ! 危なかった。


 速い方のカーブだった……まさにこんな時に振らせるためのスプリット代わりに使えるボールだ。


 ちなみに田村は三塁塁審にハーフスイングの判定を求めたが、オレのバットは止まったとしてセーフ。


 まあ命拾いしたってのが本音なのだが……だからこそ次は何とか打ちたい。


 ここでサッと内外野を見渡してみると、やっぱりシフトが敷いてある。


 全体的に右寄りだが極端には片寄ってない。


 まあオレは広角に打てるから当然だよな。


 だけど最も特徴的なのは外野手3人がフェンスベタ付きだってこと。


 つまりヒットは仕方がないってわけだ。


 まあ、本所はそんなつもりもないだろうけど。


 さて次はどう来る?


 空振りを狙うなら……そして本所の性格なら……。


 でも田村はどう考えるのか。


 いや、やはり狙うはアレしかない。


 オレは更に集中して打席で構える。


 対する本所も次が決着の時と悟ったのか。


 真剣さを増した表情でモーションに入って、少し捻ったフォームから左足をドスンと踏み出して。


 一気に右腕を振り下ろす!


「ドりあああああーっ!!」


 やっぱりキメにきた。自信のある必殺技で。


 内角高く浮いてから更に内側へ落ちて。


 更に落ちる予測地点を縦に振り切る!


「……うりゃあああっ!!」


 バシィーーッ!!


 低いライナーの打球は、狭くなってる一二塁間へ……!


「んんっ! 速すぎる!」


 セカンドの別府さんがほぼ動けないまま、ライナーはゴロとなってライト前へと転がっていった!


 外野手が深い、一気にセカンドへ行くぞ……!


「そうは問屋がさせねーよー!」


 なんか間違ったことわざが聞こえてきたと同時に、レーザーみたいな送球が来るのがチラリと見えて、オレは慌てて引き返す。


 バシッ! と音が聞こえてくるほどの勢いのボールがセカンドベース上に到達したのを確認したのは、その直後だった。


 ライトは確か蒼田カケル……とんでもねえ強肩、それに出足の速さ。


 ホント、この多岐川高校がついしばらく前までオレたちと連合チームを組んでいたなんて今となっては信じられないなあ。


「と、とんでもねー打球速度だったー!」

「あのすげー変化球を……こっから反撃だー!」


 スタンドからの声援は嬉しい……しかしオレは釈然としなかった。


 全ての打席でホームラン……有言実行を果たせなかった。クソッ、何とか打球の角度を上げていたら。


 まあ、あのドロップをそうするのが難しいのはオレ自身がよくわかってるのだが。


「チキショーめェ〜! あれで打ち取れねーのかよォ!」


 本所は悔しがってるが、飛んだ方向が悪ければアウトだった。これは運が良かっただけ。


 まあそれはともかく、今は次の打者……阿戸さんがオレをホームに返してくれるのを祈ろう。 

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