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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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170/191

第170話 粘って対抗する

 多岐川高校との準決勝は4回に突入して試合は中盤へと進み、スコアは1−4と多岐川の3点リードで変わっていない。


 少しでも早く同点に追いつき逆転するためにも、不要な失点は避けて得点を重ねる必要がある。


 そして4回表はオレが三者凡退に抑えたので、今から裏の攻撃に入ろうとするところだ。


 先頭打者のしょーたはプロテクターを急いで……いや慌てずに外しながらオレに話しかけてきた。


「おれが必ず塁に出るから、もう一発頼んだぜオージロウ! それで1点差だ!」


「ああ。っていうかその口ぶりだと、本所ほんじょのボールを打つ算段がついている、ということだな?」


 オレの冷静な問いかけに、しょーたはまず自信の笑みを返してきた。こ、これはイケるというのか……!?


「いーや、なんにも。でもおれはいつも通りに粘って、なんとか道を切り開くだけさ!」


「え……ああ、そう」


「じゃあな! オージロウも近くでヤツの変化球を眺めて、それを見切る算段をつけといてくれよな!」


 結局、特に根拠が示されないまま話は終わった。


 それはさすがに楽観的過ぎるだろ……と呆れかけたが、でもよく考えると。


 本所のボールは確かに素晴らしいけれども、抑えられている要因はそれだけじゃなくて。


 多岐川にウチのバッターたちが分析されて、打球が多い傾向がある場所にシフト……というには小規模だが、それが敷かれているからだ。


 そんな状態では粘りながら相手の失投を待つというのも立派な戦略なのかもしれん。


 で、しょーたに対してはどんなシフトが……と思っていたが、特に動きはないな。


 強いて言えば、二遊間が若干狭くなってるかな。確かにセンター返しが比較的多い。


 ここから見えてくるのは、しょーたは状況に応じて打ち分けるバッターなんだってことだ。まあ結果的にかもしれんけど。


「さあ、来い!」


 そして右打席に立つと元気よく構えて声を出す。キャプテンらしく少しでもチームをもり立てたいのだろう。


 これは期待できる。そう考えて打席を見守っていたが……多岐川はそれで押し通せるような甘い相手ではなかった。


「でやあっ!」


 スカッ!!


「ストライク!」


 本所はしょーたに対してカーブを多投してくる。


 特にストライクはブレーキが効いて大きく鋭く曲がる……というか落ちる方のカーブで取りに来るのだ。


 なんだろうなあれ。曲がり方が独特っていうか、でもどこかで見た覚えはあるような。


 そして同じボールであっさり追い込まれたしょーた。


 最後は……ストレート、いや今回も小さく速い方のカーブで仕留めにきた!


「んなろうっ!」


 バコッ! とファウルで粘るしょーた。


 前の打席では速度差で振らせたが、何度も同じ手は食わないってんだ。


 プラン通りにいかなかった本所は面倒くさそうな表情で返球を受け取ると、さっさと終わらせたいとばかりに間を置かず投球モーションに入る。


「どうせ打てんからこれだけ投げとけば良かったのに! どあああっ!」


「まだまだ! でやぁ!」


 必死で落ち際を当ててファウルを続ける。


 続くストレートもファウル、と集中力を持続して粘り続けるしょーた。


 しょーたはオレのボールをずっと受けている男……少しくらい速いストレートだって、前には飛ばせなくてもフルスイングで粘ることはできる。


 ここまで見てきて、しょーたにカーブを多投する理由がわかった。大きい縦変化の方がむしろ慣れてないから振らせられるという分析なのだろう。


 これは本当に期待できるのでは?


 いよいよ1点差に……と思ったところで本所がキレ気味に叫ぶ。


「俺はさっさとオージロウと勝負つけたいってのにィ……これで終われよザコがァ!」


 ん? そう言いながら投げたボールはちょっと高く……カーブがすっぽ抜けたか?


 そんな高い軌道で、しょーたは完全に見送る体勢に入ってしまった。


 そこから頂点に達したボールは、落ちるというか『下に向かって突き刺さる』かのように変化して……!


 それだけの縦変化にもかかわらず、ボールはキチンとストライクゾーンを通過していって。


 パシッ! とキャッチャー田村のミットに収まった。もちろん地面にバウンドはしていない。


「ストライク! バッターアウト!」


「あーもう! 対オージロウでとっておきの『三段ドロップ』出しちまったじゃねーかァ!」


 ドロップ!


 ◯ワプロでしかお目にかかることがなかった、昔のピッチャーがよく投げてたカーブじゃないか!


 まあ、オレが目にしてないだけで実際には現代でも投げるヤツがいるのかもだけど。


 しかも三段ってなんだよそれ。ロケットじゃあるまいし……。


「スマン、オージロウ。大口叩いといて三振だった」


 未知の変化球を見せられて三振という結果に、バツが悪そうに引き上げてくるしょーた。


 しかしオレはしょーたに明るく声を掛ける。


「ドンマイだ! というか十分に頑張ってくれて助かったよ!」


「ならいいけど。まあできれば今回もゆっくりベースランニングしてきてくれ」


 ホームランのおかわり要求ってか。相変わらずオレには厳しいキャプテンだぜ。


 まあ、最初から打つつもりだけど。


 なにせ『とっておき』ってヤツはしょーたがその正体をあばいてくれたからな。

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