表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/192

第166話 お互いに手の内を知る対戦

「きゃーっ! 白城くーん!」

「あたしのためにホームラン打って〜!」


 こ、これはッ! 噂に聞く『黄色い声援』ってヤツじゃあないかッ!!


 多岐川高校の3番バッター白城さんが左打席に立つ前から、相手側スタンドの熱気が明らかに雰囲気を変える。


 まあ、白城さんはイケメンだもんな……背も180以上あってシュッとしたスタイルだし。


 そして普段は寡黙でミステリアス……そりゃあモテるわな。


 だがッ! オレたちは知っている……白城さんの本当の姿を……ッ!


 白城さんはただのマイペース野郎であり、自分が強く興味のあること……マンガの事となるとやたらと饒舌だが、そうでなければ我関せずとばかりにほとんど喋らないだけ、なのである。


 旧連合チームの冬合宿でそれを知るまでは正直言ってとっつきにくい人だと思っていたが、それ以来オレも親しみを覚えて話しかけられるようになった。


 余談はこれくらいにして、その白城さんをツーアウトながら一塁ランナーがいる状況で迎えている。


 その前に蒼田カケルのソロホームランで、折角の追い上げムードを断ち切られたというのに。


 ここで更にリードを広げられたらウチのチームとしてもダメージは大きい。


 だから1−4、3点差のスコアのままでなんとか凌ぎたいのだ。


 そしてブルペンから出てきたのは大岡だ。さっきの別府さんの打席の間に勝崎さんと急いで肩をつくったらしい。


 元々肩が出来上がるのが早いのでそこは心配していないが……前の試合で軽い熱中症だったので、いつものようなピッチングができるのか。


 マウンドに登って、足場をならしてから投球練習を開始して。


 ズバンッ!


 アンダースローのフォームから、しょーたのミットで大きな捕球音を響かせるキレのいいストレートが放たれた。


 あれなら大丈夫だろう。少なくともこのワンポイントは。


 ただ、一つだけ気がかりなことがあるんだよな。


「古池監督! アンダースローの大岡をぶつけるなら左の白城さんじゃなくて、次の田村の方が良かったんじゃ」


「いや……わだちくんはもういっぱいいっぱいだったし。それに田村くんの方が相性悪いと思うんだよね。彼の決め球には」


 あー、そういうことか。


 田村は右におっつけて打つのが得意……独特の変化をするとはいえ、浮き上がりながら外に逃げていくスライダーはむしろ見極められやすい。


 というわけで、旧連合チームでお互いの手の内をよく知っている者同士の対戦となったのである。


 そして多岐川側の声援が収まらないままプレー再開。


 初球はどうする?


 白城さんからは甘いボールが来たら即仕留めるくらいの集中力を感じる……安易にストライクを取りに行くのは禁物だ。


 大岡はセットポジションからスッと上半身を沈めて……地面スレスレの位置から右手のボールがビシッと放たれる!


「……らぁっ!」


「……」


 ズバンッ!


「ストライク!」


 今度はウチの側のスタンドから、わぁーーっ!と声援が沸き起こる。


 キレのいい浮き上がるスライダーを、外からバックドアでいきなり決めてきたのだ。


 際どいコースにビシッと入ったので白城さんも手が出なかったらしい。


 しかし2度目は通用しないだろう。


 だけど決め球を振らせるにはあと一つストライクが必要。それをどこでどのボールで取るかが重要だ。


 2球目は……。


「ボール!」


 外角低めにシンカーを決めにきたがハズレた。


 いや正確には、最初からボールにするつもりで、振ってくれれば儲けものってボールだ。


 内角高めのスライダーを決め球にするために逆算しながら組み立てているはずだけど、白城さんだってそのへんはお見通しのはず。


 大岡としょーたはどうするつもりなのか。


 3球目は……。


「ボール! カウント2−1!」


 またもや振ってくれれば……ってボール。


 外角低めのカーブで一応バックドアだけど、ハナからワンバウンドするのがミエミエの低さだったのだ。


 しょーたはキッチリとブロッキングして後逸せずに、キャッチしたあとも立ち上がって一塁ランナーの別府さんをけん制する。


 だけど本当にどうするつもりなんだろうな。


 大岡はコントロールがいいけど、ここでボール先行はあまり良くない。


 次にストライクを取りにいったところを狙われるぞ……と心配するが、大岡は淡々とセットポジションに入ってモーションを開始する。


 4球目は……!


「……らぁっ!」


「……!」


 バシィーンッ!


 ヤバい打球音で打球はレフト線に……!


「ファウル!」


 ふう。切れていってくれたよ。


 ここで大岡は外角高めストレートでストライクを取りにいったのだ。


 ノビるストレートとはいえ、白城さんに待ってましたとばかりに捉えられて……。


 恐らくファウルを打たせたのは狙い通りなんだけど、ベンチで見てるとヒヤヒヤものだぜ。


 でもこれで決め球スライダーを投げる準備は整った。


 あとは、内角に投げたボールが高めボールゾーンに浮き上がるのを振らせられるかどうか。


 もちろん軌道は白城さんも熟知しているのだから、簡単には釣られてもらえない。


 よほどストライクと見極めにくいギリギリを突いていかないと……。


 そしてスッと上半身を沈めた大岡は、渾身の力で5球目を右手から弾き飛ばす!


「……らぁっ!!!」


「……外、高め!!!」


 ズバンッ!!!


「ストライク! バッターアウト!」


 うおっしゃああ!!


 最後は浮き上がりながら変化するスライダーでバシッと三振に切って取った!!


 ただ、いつもと違うのは外からのバックドアだったという点だ。


 それを外角高めギリギリへ……ストライクを取りにいく感じだったのが。


 いつもより変化が激しくて、そのまま上に突き抜けていったのだ。


 予想外のコースでも反応した白城さんであったが、予想以上の変化にバットがついていかなかった。


 それにしても思い切ったリードだったぜ、しょーた。


 内角高めの決め球……相手の手の内知っているだけに、それを逆手に取って内角にいつ投げてくるかと気を持たせつつ、全て外角で勝負して裏をかいたのだ。


 だけどバックドアは中に入ってくるボールだから、僅かなコントロールミスで甘いところに入ってしまい痛打を浴びかねない。


 だけど大岡のボールを信じてあそこに投げさせた。やはりやる時はやる男なのだ、二人とも。


 これでピンチは最少失点で凌いだ。


 次の回からはオレの出番かな。


 攻撃の間に勝崎さんにお願いして、ブルペンで肩慣らしでもしておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ