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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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165/186

第165話 バットを肩に担ぐ

「ストライク! バッターアウト!」


 2回表、我らが連合チーム先発のわだちくんは立ち直りを見せて下位打者を連続三振に仕留めた。


 これならもう安心だな。予定通り試合中盤まで……具体的には5回まで投げてくれれば、前の試合で軽い熱中症になった大岡を休ませられる。


 今日はロングリリーフを務める予定のオレとしても、残りイニングが短いほうが全開で投げられるし。


 まあでも、それを確定するのはコイツとの勝負が終わってからでいいかな。


「さっきは2塁打だったけど、今回はホームランを狙っていこっかな〜?」


 右打席に入るやいなや調子に乗ったことを言っているこの男、多岐川の1番バッター蒼田カケル!


 1回表はコイツに初球を痛打されて出鼻をくじかれ、そこから3失点に繋がったのだ。


 ここでまた打たれたら、それこそ多岐川打線を勢いづかせてしまう。


 だけど逆に言えば、コイツを打ち取ることで轍くんはリズムに乗れるはず。


 なのでここは勝負!


 あとはしょーたが上手くリードできさえすれば。


 さて注目の初球は……。


「ボール!」


 右打者の内角に食い込む横滑りスライダーでまずは様子見ってところか。


 でも蒼田はそれに反応することもなく構えを崩さずにボールを見送った。


 狙い球と違っても少しは動きがあってもいいのに……なんだか『いつでも打てる』みたいな無言のプレッシャーを感じるんだよな。


 まあ、蒼田の構え方が余計にそう思わせるのかもしれない。


 その構えとは……バットを右肩に乗せて、そのヘッドはキャッチャー側でやや下を向いている。


 肩に担ぐフォームは普通だと思うが、大抵はピッチャー側にヘッドを向けて倒してるのに。


 あれだと余裕がありそうに見えるのとは裏腹にヘッドの遠心力を効かせにくそうに思うんだけど……。


 人によって打ちやすいフォームは様々だから、蒼田にとってはあれがベストなんだろう。


 などと考えている間に、轍くんが2球目を投げる動作に入っている。


 今度は……さっき打たれたコース、外角低めでストレート!


「そこ待ってた!」


 ヤバい、簡単に配球を読まれてるじゃん!


 本当に打たれると覚悟した瞬間だった。


 スカッ!


「ストライク! カウント1−1!」


「しまった〜、ボール球だったか〜!」


 上手くボール球を振らせることに成功した。


 しょーたは投球の組み立てにちゃんと意味を持たせてる。この調子なら……!


 できれば次で仕留めたいところだ。それで試合の流れを一気にこちらへ傾けたい。


 そして3球目は……今度は内角高めに横滑りスライダー!


 その次に外角へ縦スラを投げて仕留めようってところかな。その前フリには丁度いい。


 見逃せばストライク、打ちにいってもせいぜいファールのいいところに決まった……はずが。


 スパァーンッ!!


 まるでボールをはたくかのような打球音……クソッ、スイングが速くて打つ瞬間が見えなかった!


 蒼田はあの担ぐフォームから、バットのヘッドを最短距離でボールに合わせてきたっていうのか!?


 だけどヘッドはキャッチャー側を向いたまま始動したから遠心力が……と考える間もないくらいに打球は速く、ライナーでレフトフェンスへと……いや!


「よっしゃーっ! そのままホームランだぁ!」

「1点返された直後にお返しで突き放したー!」


 多岐川側のスタンドから怒号のような歓声が沸いて、オレたちもベンチ内で会話しづらいくらいだ。


 応援の生徒も多いが、やはり伝統校だけあってOBらしき人たちもかなり駆けつけている。


 この球場は市街地に近いのでブラスバンドの応援は控えるように注意が来ていたけど……それでもこの盛り上がりだ。


「それにしても厄介なバッターだね、あの蒼田カケルは。オージロウくん?」


 古池監督がオレの横まで来て話しかけてきた。


 何が厄介か、それはたぶんオレと同じ認識だと思うが一応確かめる。


「ボールに最短距離でヘッドを合わせられて……なおかつ遠心力少なめでもホームランにできるパワー、っていうか腕力。ってことでしょ?」


「うん。で、蒼田監督に聞いたんだけど。中学ではシニアでやってたが……野球に飽きて、高校ではバレーボール部に転向するつもりだったらしいよ」


「春季大会で旧連合チームがベスト4に入って、多くの多岐川高校新入生が野球部に希望を変えたって聞いてますが……そのままバレーボール部に行ってほしかったですね」


「うん。それで相談なんだけど。予定より早く登板してもらってもいいかな?」


 いや確かに一発打たれたけど、出会い頭と割り切れば轍くんはまだいけるでしょ。


 と返そうとしたが、監督はもう覚悟してるかのような雰囲気だったので曖昧に返事することにした。


「まあ、いいっすよ」


「ありがとう。あとは、勝崎くんと……」


 なんか言いかけてオレの元を離れていく監督。


 そしてその予感は現実となってしまう。


「ボール! フォアボール!」


 続く別府さんをストレートで塁に出してしまったのだ。


 轍くんは完全に自信を失ってる……このままじゃ。


「オージロウくん! 球審にタイムかけて、選手交代を告げてきて!」


 古池監督からの指示でオレは球審のもとへ駆けていって、そして言われたとおりに話す。


「ピッチャーを轍くんから大岡に交代します」


 完全にプラン崩壊だけど……監督は思い切って勝負をかけてきた。


 あとはそれが吉と出るのを祈るのみ。

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