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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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163/186

第163話 原因とその対策、そして打ちたくなる相手

「ゴメン、わだちくん。おれのリードが……いや、試合前に考えたプランがダメだった」


「い、いえ。自分がしょーたさんの要求通りに投げきれていないのが悪いんです」


 オレは伝令として1回表のマウンドに駆けつけたのだが、やはり轍くんは浮足立っている。


 このままじゃ……とにかく落ち着かせないと。オレはそのためにやって来たんだから。


「しょーたも轍くんもさ。今はお互いに自分を責めるよりも、どうやったらこのピンチを終わらせられるか考えようよ」


「そりゃそうだけどさ」

「やっぱり自分には、この試合のマウンドは荷が……」


 ああ、もう!


 こいつは気持ちを立て直すのに苦労しそうだ……と頭を抱えそうになった瞬間にサードの田白が軽口を差し挟んできた。


「轍、そんなに堅苦しく考えなくていいぞ。オージロウとしょーたくんなんてさ、マウンド上で相手をかばい合うどころか、いつも責任を擦り付け合ってるんだぜ」


「そうそう。お前が話を聞いてないからとか、そんなの知るかってな」

「です〜!」

「だっぴょ!」


「ちょっ! どさくさ紛れに轍くんにそんなことをバラさなくてもいいだろ!」


 田白のあとに中地さん、ひょ〜ろくくんと近海ちかみまで賛同しやがって!


 オレが必死で抗議するとなぜか笑いまで起きて……何なんだよもう!


 でも、おかげで轍くんも笑顔になって、若干緊張がほぐれたと思う。


 田白は轍くんと同じ埜邑のむら工業の先輩だけあって、さすがに扱いが上手い。


 準々決勝では坂平さかひらとの因縁でおとなしくしていたが、それも払拭できているみたいで安心したぜ。


 それじゃあ本題に入ろうかな。


「オホン。ここからどうするかなんだけどさ……」


 オレと古池監督で気づいた修正点を2人に伝えると、もう時間が来てしまった。


 オレはそそくさとベンチに引き上げたが、轍くんの顔にはだいぶ自信が戻っていた……ように思う。


 そしてまだ一死で二塁ランナーが残っているというピンチで迎えるバッターは5番の本所ほんじょ


 まだ1年生だがヤツも先発マウンドを任されており、しかもDH……つまり石元さんへの継投後も大谷ルールで打線に残されるほどの打力があるってことだ。


 しかし立ち直った轍くんはそう簡単には打たれない。


 初球はストレートでボールだったけど、そのあとは変化球でポンポンと追い込んで……。


 バッコーンッ!


「クソッ! 思ったよりも食い込んできやがった!」


 轍くんがほぼサイドの腕の位置から投げる横滑りのスライダーに本所は詰まらされて、ショートフライ……と思ったが。


「なかなか打球が落ちてこないです〜!」


 今日はショートに入ったひょ〜ろくくんとレフトの間にポトリと落ちてしまったのだ!


 本所には明らかにパワーであそこまで持っていかれた。


 二塁ランナーの田村はいかにもキャッチャーなガッシリ体型なのだが意外にも足は速く、その上に打球の落下地点の見極めが早くて一気にホームインされてしまった。


 二人共に1年生ながら十分に手強い相手だと再認識させられるプレーだったよ。


 そして0−3と点差を広げられてしまった……だけどオレは大声でマウンド上の轍くんに言葉掛けをする。


「いいぞ轍くん! 今回は飛んだ場所が悪かった! 十分に相手を詰まらせて打ち取れてるから!」


 轍くんはこっちへと一瞬振り向くと、落ち着いた表情で軽く頷いてくれた。もう大丈夫そうだ。


 その期待通りに後続のバッターはキッチリ抑えてスリーアウトチェンジ。守っていた選手たちもベンチ内もようやく一息つけたぜ〜。


 マウンドをゆっくり降りる轍くんにしょーたが後ろから声をかけに行って、どちらも笑みを浮かべながらベンチへと戻ってくる。


 ふう。残念ながら得点を与えてしまったが、この点差なら十分に追いつける。


 なにせまだ1回裏に入るところなんだ……オレが4打数全てソロホームランでも逆転できるんだから、まだまだ勝機はある。


 で、ちなみにしょーたたちへのアドバイスの内容だけれど。


 古池監督の見立てでは、やはり打たれた原因は轍くんよりもしょーたのリードが読まれているから、という結論だった。


 特に先頭バッターの蒼田カケルの初球。


 しょーたは大抵の場合、まずは外角低めストレートでストライクを取りに行こうとする。


 蒼田はそれがわかっていたかのように大胆に踏み込んでフルスイングでボールを捉えて引っ張り、左中間を真っ二つに割ってみせたのだ。


 その二塁打で轍くんは出鼻をくじかれ、そのあとは萎縮して腕が縮こまった投げ方となった。


 そして更にしょーたのリードが読まれ……という悪循環にハマってしまったのである。


 あとはやはり、轍くんの投球フォーム……球種ごとにフォームが変わってバレバレなのもどこかで情報を得ているようだった。


 というのも、多岐川高校との練習試合では轍くんは投げていない。それと関係あるのか知らないが、多岐川のベンチには記録員として練習試合で見かけた制服男子が座っているのだ。


 女子マネの仲尾さんはスタンドで応援しているから、情報分析とかしている男子マネージャーってところか。


 フォームの件は今さらどうにもできないので、対策としてはストレートを見せ球にして変化球の精度を高めるしかない、と。ここまでがアドバイス。


 それにしょーたたちは見事に応えて、変化球のキレと投げるコースで相手バッターを詰まらせてアウトを重ねた。


 というわけで、それをこちらへ流れを引き戻すきっかけとするべく、1回裏の攻撃で少しでも点を返していきたいぜ。



「だっぴょ〜!」


「ストライク! バッターアウト!」


 ウチの先頭バッター近海があっさりと空振り三振に切ってとられた。


 マウンド上でふてぶてしい……もとい自信満々な態度の本所が投げるカーブは、変化が大きくて切れ味鋭く斬りつけてくるような、そんな威力があるボールだ。


 もちろんストレートも速く、それらをコンビネーションで投げるだけでも相当手こずりそうだと直感でわかるほどに。


 続く2番のしょーたはどうする?


 3番のオレはネクストバッターズサークルに座って、自分の前に一人でもランナーが出てくれることを願うしかない。


「クソッ! 簡単に打ち取られてたまるか!」


 バコッ! とカーブが落ちきったところにバットを当てて粘るしょーた。


 これならひょっとして、と期待したのだが。


「俺ァ、オージロウと早く勝負をしてェんだ……いつまでも粘られちゃァ困るのよ!」


 本所はそんな挑発的な言葉を吐きながら、今までよりも力を込めて右腕を振り下ろす!


「カーブか……でもさっきまでとは球速と軌道が違う!」


 ズバンッ!!


「ストライク、バッターアウト!」


「おっしゃァ! さあ、オージロウさんよォ。さっさと勝負を始めようぜェ〜!」


 うわあ……これは本当に……ホームランを打ちたくなるピッチャーだぜぇ……!


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