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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準決勝

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第162話 試合前の会話と、試合開始直後の衝撃

「おはよう〜! みんなもう揃ってるな……オージロウくんにしょーたくんも久しぶり!」


 オレたちは多岐川高校キャプテンの別府さんから、蒼田カケルと本所ほんじょという2人の1年生レギュラーを紹介してもらっていたのだが。


 久しぶりに聞く、覚えのある中年男性の声……多岐川の蒼田監督の挨拶が聞こえてきた。


 集合場所である球場横の広場の入口から手を振りながら入ってくるのが見えたので、オレたちもすぐに挨拶を返す。


 なぜなら旧連合チームでは多岐川高校と共に練習で汗を流し、蒼田監督は実質的に監督不在だったオレたちにも親身に指導してくれたからだ。


「おはようございます〜!」

「こちらこそお久しぶりです、監督!」


「うん、元気そうで良かった……と言いたいが、今日は敵同士だから気分は複雑ってところだな」


 監督の相変わらずざっくばらんな会話で周りから笑いが起きて、和やかでいい雰囲気だ。


 そうだ、あのことを尋ねよう……と思ったが、その前に向こうから結果的に語ってくれた。


「カケル! 今日は遅れずに集合できているが、これからも時間はキチンと守らんとだな」


「はいはい、もうわかったから叔父さん!」


「野球部では『叔父さん』じゃなくて『監督』と呼べといつも言ってるだろうが! 全く、ヤンチャというか自由奔放というか……兄夫婦はどちらも真面目で実直な性格なのに、いったい誰に似たんだか」


「あ〜、それなら親父から『お前は若い頃の弟にソックリだ』っていつも言われてるよ〜!」


 ここで主に多岐川高校の選手たちから一斉にギャハハと爆笑が沸き起こる!


 通りすがりの人たちからはぎょっと反応されて少し迷惑をかけたが、多岐川高校のチーム内はとても明るくて好感が持てるものだ。


 あと、蒼田カケルの性格と、蒼田監督との関係もこれで理解できたし。


 まあ監督はやっぱり昔はそうだったんだなぁ〜と妙に納得してしまったよ。


「どうもお久しぶりです!」

「まさかアタシたちが公式戦で……しかもベスト4で戦うことになるとはねぇ」


 ウチの古池監督と松花高校の上中野監督も現れて、蒼田監督と3人とあれやこれやと話し始めた。一見すると他愛もない話題を会話してるが、いろいろと探り合ってるのが手に取るようにわかってみんな苦笑いだけど。


 そして和やかな雰囲気もいよいよここまで。


 お互いにベンチ入りする時になると、やっぱりそれなりにピリピリした雰囲気が漂い始める。


 それからみんなと一緒に守備練習へと出ようとしたところでオレとしょーた、大岡、わだちくんの4人は古池監督と上中野監督から呼び止められた。


「なんですか監督」


「えっとね。今日の投手陣の起用方針について4人と話しておこうと思ってね」


「どうせオージロウが先発なんでしょ」


「いやそれなんだけどね、しょーたくん。結論から言うと、今日は轍くんでいこうと思っている」


 な、なんだって! それは聞き捨てならねーな。オレは黙っていられずに古池監督に食ってかかった。


「ちょっと! いったいどういうことですか! オレは準々決勝で完投勝利して今は絶好調なんですよ!?」


「それが理由の一つだよ。あの暑さの中で、結構な球数を要して完投してもらったから。それに試合の途中で一度はバテていたじゃないか」


「うっ……それはそうですけど」


「……それは俺にも原因があるんすか?」


「まあ、そうだね大岡くん」


 原因……もしかしたら同じ試合中に大岡が熱中症になりかけて途中からベンチ裏で休んでいた件かな。


 でも試合終了時には回復して最後の挨拶と校歌斉唱では一緒に整列してたはずだが。ここで言いにくそうな古池監督に代わって上中野監督が説明し始めた。


「大岡にはアタシが説明するよ。この前の試合後、お前は一度は回復して大丈夫だって言い張ってたけど、アタシが病院に連れて行ってお医者さんに言われた事は覚えているだろう?」


「……軽い熱中症だったって診断されて、できれば次の試合は休むか、出ても短時間で様子を見ろって」


「そんな状態だったんだ。それなら無理するなよ大岡!」

「下手すると取り返しがつかなくなるよ」


「うっせーな。俺の身体は俺が一番わかってんだよ!」


「とにかくだね。お医者さんにそう言われた以上、アタシはお前をスタメンで出すことは許可しないから。いいね!?」


「……うっす」


 オレとしょーたが心配するのをムキになって言い返した大岡だが、さすがに上中野監督の一喝でおとなしく引き下がった。


 そして再び古池監督から今日のことについて説明が再開する。


「というわけなんで、大岡くんをいつものリリーフエースとして起用するのが難しくなった。それがもう一つの理由さ」


「いや、クローザーで9回だけなら問題ないんじゃ」


「延長線になったらどうするの?」


「あっ……そういうことか」


「とにかく、轍くんを先発として起用する。それで行けるところまでいって……試合中盤で大岡くんをワンポイントか多くて3人までを挟んでから、オージロウくんをロングリリーフとして投入する。それが今日の継投プランだよ」


「……まあ、そういうことなら。でも轍くんはいきなりの先発で大丈夫なのか」


 見ると轍くんの表情はハッキリわかるくらい強張ってる。能力は高いが繊細な性格なので、正直言えば心配だけど。


 彼に蒼田カケルや本所の生意気さが半分でも有ればなあ。上手くいかないもんだ。


「轍くん。とりあえずおれと投球の組み立てについて話し合おう。大丈夫、先に綿密に打ち合わせておけば、君なら抑えられるからさ。あと大岡くんも」


「は、はあ」

「……わかった」


 しょーたはキャプテンとして、正捕手としてチームを引っ張るべく、積極的に轍くんと大岡にコミュニケーションを働きかけている。


 オレはそれを邪魔しないように、勝崎さんにキャッチボールをお願いして汗を流した。



 バッシィーン!


「よっしゃああっ! 先制点取ったぞ!」

「まだアウトは一つだけ、押せ押せでいこう!」


 既に試合は開始しており、今日はオレたちが後攻なので、マウンドには予定通りに轍くんが立っている。


 それはいいのだが……新生多岐川高校の攻撃力はオレたちの想定を遥かに上回っていた。


 先頭打者の切り込み隊長、蒼田カケルには初球をいきなり叩かれてツーベースヒットと出鼻をくじかれた。


 次の別府さんはアウトに仕留めたが進塁打でランナーは三塁に進み……たった今、3番の白城さんに三遊間を綺麗に抜かれてあっという間に先制点をもぎ取られたのだ。


 そして続く4番の田村には……。


「スライダーのキレが甘いんで!」


 バシィーッ!! とこれまた力強いスイングの右打ちで右中間を破られて、白城さんが一気に生還したのだ。


 初回から2点ビハインド……ここで古池監督はたまらずタイムを取って伝令を送ることになった。


 今日はDHのみでスタートのオレは、志願して伝令としてマウンドに行く。


 5番は本所……打つ方でも実力があるってことか。


 とにかく轍くんを落ち着かせないと。オレは急ぎ足でマウンドに向かったのである。

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