第16話 条件付き
「じょ、条件付きでの承認、だって〜!?」
オレは職員室で思わず大声で叫んでしまい、周りから冷たかったり呆れたりといった視線を集中的に浴びる羽目になった。
さすがにシュンとしたオレに代わってしょーたが詳しいことを中原先生に聞き出しにかかる。
「その条件というのをクリアしないとダメってことですか? それとも条件は付けるけど加盟を認めるってことですか?」
「えーとですね。前者です」
「その条件というのは……部員数ですか? 監督不在の件ですか? それとも……」
「ごめんなさい、順番に説明していきますね。まず部員数は、問題にならなかったようです。野球人口が減少している中で情熱のある生徒たちにできる限り野球を続けてほしい、という思惑があるらしくて」
「じゃあやっぱり」
「はい、指導経験者がいないというのは色んな意味で不安を感じたようです。県高野連の方々は」
「うーん。でも部長は先生でないとダメですけど監督はそうじゃないですよね? 監督やってた人をどこかから引っ張ってこれないんですか?」
「急に外部から招くと言っても、ウチにはあてもノウハウもないのでやはり難しいです」
「しょーたは心当たり無いの?」
「残念ながら。兄貴も野球やってるけど現役大学生で別の地方にいるからちょっと。オージロウはどうなんだ……って、この前引っ越してきたばかりだったな」
「どうしてもってなるとリトルリーグ時代の監督さんのツテくらいしか……でも遠いし望み薄だなあ」
「すみません、話を続けますね。一応、あなたたちが普段やってる練習メニューと練習環境も参考に伝えたのですが。メニューはまあまあだと評価されましたが、環境は最低評価でした」
「「そらそうでしょうね」」
思わずしょーたとハモってしまった。まあ、オレたちが最も不満に思っていることだからな。
だが中原先生はそういうのを気にすることもなく話を続ける……冷静なのか淡白なのかよくわからん人だ。
「それで、前フリが長くなってしまいましたが。あなたたちが言っていた連合チームへの参加……これが可能であれば再加盟を認めるとのことです」
「そ、そんなの順番が逆じゃないですか!」
「最後まで聞いてください。県高野連としては……次の公式戦、つまり春季地区大会に参加が可能かどうかで再加盟の可否を決めたいらしいのです。それと……」
「それと?」
「連合チームに参加すれば、例え週1回でも合同練習の際に他の学校の監督やコーチにご指導を受けられるし、場合によっては平日の練習メニューについてもご指導いただけるでしょう。高野連としてもそれなら承認を前向きに検討すると仰っています」
まさかそうくるとは……。
春季大会はハッキリ言って夏の地区予選のシード校を決めるための大会と言っても過言ではなく、重要な前哨戦ではあるが勝ち抜いても甲子園に出られるわけじゃない。
でも4月以降に再加盟できても、それから新入生を勧誘して、連合相手と交渉して……なんてやっていたら夏の地区予選はもう目の前だ。
可能であれば春季大会の前に連合チームに参加して、何度も一緒に練習して公式戦に出たいに決まってる。
驚き疲れているしょーたに代わってここは念押しで聞いておこう。
「一応ですけど、参加できそうになければどうなりますか?」
「来年の春以降、できれば監督と新入生部員を確保した上で再申請してほしい、と」
「……しょーたはどうする?」
「そんなの、聞くまでもないだろう?」
お互いに目で確認し合ったオレたちは、中原先生に向かって頭を下げた。
「僕たち、すぐにでも連合チームに参加して春季大会を目指したいです!」
「先生、ご協力をお願いします!」
「……はい、もちろんです。それではお手数ですが、連合チームを交渉したい相手校をリストアップしておいてもらえますか? できればその学校の簡単な情報も添えて。電話での交渉は私が行いますので」
「「はい!」」
遂に訪れた希望の光。
オレたちは足取り軽く職員室をあとにした。
というのも、実はもう下調べは済ませてある。
そして交渉するターゲットは、秋季大会に参加していた2つの連合チーム。
それぞれに参加している各チームについてリストを作っておかねえとな。




