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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準々決勝

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第159話 怪しい雰囲気と狙い

「すげーなぁ〜、オージロウくん。8回でまだあの威力のボールを投げられるのは。でもよぉ、俺はまだ諦めてねーんだわ。お前をマウンドから引きずり降ろすのをさぁ〜!」


 八ツ頭学園の投打の中心、坂平さかひらは左打席に入ってから何やら挑発めいたことを言ってきた。


 まあ、まだ2点差だし試合を諦めてないってのはわかるけど……要するにオレを打ち崩すって言いたいのだろうか。


 大方、オレを名指しであんな言い方をすればビビって混乱するとでも思っているのだろう。


 だがしかし。オレは……いやオレと勝崎さんのバッテリーは不安が解消してまさに絶好調なのだ!


 そういうわけで当てがハズレたな、ざまあみさらせ。


 ということで初球は……まあ、ここはリードに従って投げておこう。


 それじゃあ行くぜ!


「うりゃああっ!」


「……」


 ズバンッ!


「……ボール!」


 うーん。内角へのボール球の要求だったのでこれでいいのだが。それでも一応、ストライクゾーンをかすめるつもりで投げたので残念だ。


 それはともかく、坂平の狙い球がまだわからん。


 次は思い切って仕掛けるのか、それとも様子見を続けるのか。


 オレは次も勝崎さんの要求通りに投げ込む。


「ボール! カウント2−0!」


 今度は外角へのボール球……これまた全く反応なし。


 さすがにこれ以上はカウントを悪くしたくないな。次は高低で揺さぶってみるか。


 というわけで、ここは最も自信のあるコースで勝負する!


「うりゃあああっ!!」


「内角高め……オラッ!」


 バコッ!!


「ファウル!」


 鋭い打球がバックネットへと飛んでいった。球威で押し込めたがタイミングは合っている。


 というわけで反応があった……のはいいが正直驚いた。


 渾身のノビるストレートを当てられたってのもあるのだが、それ以外にも。


 坂平はこれまでのような力強いスイングじゃなくて、完全に当てにきた軽くコンパクトなスイングだったのだ。


 それだけ必死というか勝利への執念ってことか。


 でもなあ。なんとなく違和感があるんだよなあ。


 今も打席内でミートポイントを確かめるような仕草を何度か繰り返す坂平の表情は、何かを狙っているような。


 そういえばこの感じに覚えがあるというか。


 これは確か……。


 オレは勝崎さんのサインに首を振り続け、4度目でようやく頷いた。


 まあ滅多に使わないサインだからな。


 では勝負の4球目、いざ参る。


 オレはいつもより慎重に右足を踏み出し、そして身体のコントロールに全集中して、最後は左腕を強く振り切る!


「うりゃあああっ!!!」


「高め……だがコースが甘ぇ! オラァッ!!」


 ガギィーンッ!


 ミート重視でコンパクトだが、さっきよりも格段に鋭いスイングがオレのボールを捉えた!


 その打球は真っすぐオレの身体に返ってくる……のだけれど。


 パシィッ!


「バッターアウト!」


「うおおーっ! ピッチャー返しを難なくキャッチした!」

「オージロウの反応がスゲーぞ!」

「いい感じでストレートを弾き返したのについてね〜!」


 ある意味あっけない結末に、両方のスタンドから一斉にあれやこれやと声が聞こえてくるぜ。


 で、やっぱり思ったとおり。坂平の狙いは文字通りの『ピッチャー返し』であった。


 八ツ頭での練習試合でオレの足下をかすめていったピッチャー返し……あの時の坂平の雰囲気と今回の怪しい雰囲気がなんとなく似ていると、そう感じたんだ。


 理由は恐らくいくつかあって……まずはオレのストレートを弾き返すには、大きいのを狙うよりもミートでセンター方向を狙う、というのが確実ということ。


 次に、オレが負傷退場すれば控え投手から点を取れると考えたこと。


 あとは、最悪ピッチャー返しを避けられたとしても、そのままセンターに抜けてヒットでの出塁は見込めるってところだ。


 そしてこれらを成り立たせるには強烈な打球が必要で、坂平はそれを放つ自信があったんだと思う。


 なので、オレは先手を打ってその打球を弱らせることにしたのだ。


 4球目にオレが投げたのは、オレの唯一の変化球『シュート』だった。


 いつもよりも変化量は小さくなるが、球速が速くなるようにと身体を開くタイミングを微調整して投げるのは全集中が必要で疲れた。


 だけどそれだけの価値があった。


 坂平は芯で捉えたつもりが、バットの根本寄りで打球はオレでも十分に反応できる速度になってしまったのだ。


「クソがぁ〜! 俺がしくじるなんてよぉ〜! そんな馬鹿なことがあってたまるか!!」


 悔し紛れに一塁ベースを踏みつけてベンチヘと引き上げる坂平。


 これで山を越えることができた。


 あとは完投勝利に向かってもうひと踏ん張りだ。

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