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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準々決勝

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第153話 流れを取り戻す

「うりゃあああっ!」


「こっちにボールが向かってくる……うわああっ!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 ふうっ。


 初回から飛ばし過ぎたのと、うだるような暑さで早くもバテたオレだったが、チームメイトたちのお陰で復活してマウンドに立ち続けている。


 そして4回裏を三者凡退、この5回裏も先頭バッターを三振に仕留めたところだ。


 それにしても、ボールが向かってくるなんて大袈裟だなあ。確かに右バッターに対して内角高めストレートを投げたけど……。


 あれじゃあビーンボールを投げたみたいに勘違いされそうじゃん。まあ、そう感じるくらいボールに威力があったんだろうけどさ。


 などと余計なことを考える余裕も出てきたところで、9番バッター瘤田こぶたが左打席に入る。


 コイツに前の打席でヒットを許したのが逆転されるきっかけとなったわけで……当然、ここは出塁を阻止せねば。


 構えは今まで通り、走り打ちする腰高な立ち姿だけど。内角高めが来たらさっきみたいに重心を下げるのだろうか。


 どうしようかな。詰まった打球で内野安打になるのを防ぐために、やはりサードを前進させておくか。


 でも内角高めを攻めてサードの頭上を超える打球にされたら厄介だし、かといって……。


 ……いやいや、こういう時は悩むよりも相手を上回れるよう工夫するのがオレのやり方。


 というわけで、サードの守備位置はそのままにして内角高めを攻める!


「うりゃっ!」


「おっと、高いな」


「ボール!」


 初球は挨拶代わりにボールになる高さへとコントロール重視で投げ込んだ。


 もちろん釣られて振ってくれたら助かるけど……瘤田があっさり見送るのは想定通り。


 では2球目、ここはどうかな?


 内角高め、コースギリギリを攻める!


「……」


 ズバンッ!


「……ボール!」


 うーん。このコースまではストライクに取ってくれないか。


 瘤田は一応ボールを目で追いかけつつも、重心を下げずに見送った。まあ無理して打ちに行く必要がないから当然だ。


 さて3球目。ここは気合を入れて強いボールを投げる……コントロールはアバウトで内角高めだ!


「うりゃああっ!」


「……」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント2−1!」


 よしっ! ストライクが入ってホッと一息。


 そして瘤田は重心を下げはしたけど、やはり見送った。


 まあ、これもセオリー通りというか。よほど甘いボールじゃないと打ちにいかないと思う。


 それは出塁が役割のバッターであればなおのことだ。


 というわけでバッティングカウントになったここからが勝負。


 4球目、オレは指先に力を込めてこれでもかとバックスピンをかけて投げ込む!


「うりゃあああっ!!」


「内角高めばっか続けやがって! バカにすんなぁ!!」


 バコォッ!


 高めにノビてくるストレートを瘤田は重心を下げ、力強く振り抜いた!


 ギリギリのコースで見送ればどっちに判定されたかわからんが……同じコースを4球続けられたら打ちに行くのが普通だと思う。


 しかも前の打席ではヒットにしたコースなのだから。


 でも今回違うのは、オレの方が勝負球とそれ以外でメリハリをつけたってこと。バカにしたのではなく、むしろそうしないと打ち取れない相手だと思ったので。


 結果として瘤田は差し込まれて、しょーたがファウルゾーンでポップフライをキャッチした。


 これでようやくツーアウト!


「チクショー!」

「……もういい。あとは俺が自分で何とかすっから」


 悔しさをあらわにして引き揚げる瘤田を慰めて……いるように見えて、なんとなく違うように感じるのは気のせいだろうか。


 1番に打順が戻って坂平さかひらが入れ替わって左打席に入る。


「なあ、これで一息つけたとか思ってる? でもまだまだ終わらせねえから!」


 今回の挑発は今までよりはトーンダウンって感じだな。オレが復活したから余裕がなくなってるのかも。


 しかし調子に乗って投げるとまたバテるから注意しないと。それぐらい今日の日差しは容赦がないのだ。


 というわけで、今回も初球はコントロール重視で慎重に投げ込む!


「ボール!」


 とはいえ誘うように内角低めギリギリを狙っていったのだが、さすがに振らないか。


 次は……先にプレートの一塁側に左足を寄せて踏み直して、と。これで左打者からはボールが背中から来る感じになり、リリースの瞬間が見切りにくくなる。


 それから角度をつけて外角高めに投げ込む!


「ボール!」


 今回はボールゾーンに外した……というか、ちょっと真っスラ気味に外へ流れていくボールだったけど、釣られて振る気配すらなかった。


 ここまではさっきと似たような展開。


 次はやや違う展開にするべく、オレは指に力を込めて左腕を振り下ろす!


「うりゃああっ!!」


「ど真ん中……ナメ過ぎなんだよお前はぁ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント2−1!」


 うっしゃ! ど真ん中からホップしながらノビていくストレートを振らせることに成功した!


 この不意打ちで振り遅れた坂平は更に顔が引き締まって睨みつける。


 今回もバッティングカウントだが……オレはコントロールに細心の注意を払いつつ、ここでの勝負を避ける!


「うりゃっ!」


「……!」


「……ストライク!」


 もう一度外角に真っスラ気味ストレート……今回は低めギリギリを突いていき、坂平は咄嗟には見切れずじっとボールの軌道を追って、結局は見送った。


 さて、これで準備は整ったかな。


 オレは左足を今度は三塁側に寄せてプレートを踏み直し、内角……坂平の顔に相対しながら投球モーションに入る。


 もうこれで決める……モーション自体はゆったりと……でも最後は坂平の顔を睨みながら、これでもかと左腕を振り下ろす!


「うりゃあああっ!!」


「う、うわあっ! 顔面に!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


 おっしゃあ!! これでスリーアウト!


 内角高め、キッチリとストライクゾーンに収めて見逃し三振に仕留めたぜ!


 坂平は自分にボールが向かってくるように錯覚した……というかそう思わせる角度と威力でストレートを投げきれた。


 これで流れを取り戻した。そう思える程に会心のストレートの余韻を味わいつつ、双方が別の意味でどよめくスタンドの音をある意味楽しみながら、オレはベンチへと戻っていったのである。

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