表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準々決勝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/186

第151話 ピンチが続く

 コンッ!


「チクショー! そこに転がすか〜!?」


 通常の守備位置で守っていたファースト中地さんが一塁線のすぐ側を転がってきたゴロを捕った時点で、結果は確定していた。


 八ツ頭学園の2番バッター背尾せおに絶妙なセーフティバントを決められてしまったのだ。


「さすがはバント職人だぜ背尾!」

「一気に試合をひっくり返せー!」


 二死ながらランナーが一、三塁と八ツ頭側のチャンスが広がって、スタンドが滅茶苦茶盛り上がってる。やばい雰囲気になってしまった。


 それにしてもこうもあっさり決められるなんて……やっぱり球威が足りないのかな。


 既に強い日差しでサウナのような暑さのマウンド上で、オレは噴き出す汗をぬぐいながら1人で呟くしかなかった。


 乗せられて調子に乗って全力投球を続けたオレが悪いんだけど、まだ3回だというのに疲れが出て1番バッター坂平さかひらへの投球がスッポ抜けたりしたんで……。


 気をつけながら投げると、どうも手応えがイマイチというか。


 こんな状態で3番バッター糖山とうやまを迎えなければならないというのがキツい。


「さあ来い!」


 特に煽るでもなく普通に右打席に入った。


 それが普通なのだが、オレはクセの強いバッターたちに絡まれることが多いので、逆に新鮮に感じてしまう。


 さて、ミートが上手くて勝負強いというこのバッターをどうやって打ち取るか。


 とりあえず、しょーたのサイン通りに投げてみよう。たぶん甘く入ることはないはず。


「うりゃああっ!」


「外へ行き過ぎだオージロウ!」


 力を込めて投げたのはいいが、ストライクゾーンから大きく外れてしょーたが食らいつく!


「後ろに逸らしてたまるかよ!」


 パシッ! としょーたが必死に伸ばしたミットにボールが入るのが見えた。


 ひええ……もう少しで相手は労せず逆転のホームを踏むところだった。我ながら肝を冷やしたが、しょーたに助けられて心底ホッとした。


 ちょっとイラつき気味の返球を受け取ったオレは、次こそは……と思うのだが。


 その思いに身体がついていかない。


 続いてしょーたが示したサインは……そうだな。この状態ならむしろその方がマシかもしれん。


 というわけで、集中力がみなぎっている糖山に対してど真ん中に思い切り投げ込む!


「うりゃああっ!」


 ズバンッ!


「ストライク! カウント1−1!」


 うっしゃ!


 どうせコントロールが乱れるからってど真ん中目掛けたボールは、上手い具合に外角いっぱいに決まった。


 この調子で続けば適度な荒れ球としてかえって打ちづらいはず。続く3球目もいいところに決まって逆に糖山を追い込んだ。


 これで一気に終わらせてやる。そして次の攻撃中に少しでも体力を回復させるんだ!


「行くぜ4球目! うりゃああっ!」


「待ってたよど真ん中……もらった!」


 バシィッ!!


 芯で捉えられた鋭いセンター返しがオレの足元を抜けていった。


 セカンドかショートどっちか取ってくれ! と願ったのだが。


「センター前に抜けた〜!」

「遂に逆転したぞ! 見たか糖山の勝負強さ!」


 やられた……確かにど真ん中に行ったけど、それほど球威は悪くなかったのに。糖山は辛抱強く甘いところに来るのを待って振り抜いたってわけだ。


「あと1点! ここで貰っておくわ!」


 続いて右打席に入ったのが4番バッターのキャッチャー棟上むねあげ


 下半身がどっしりして、これまた粘り強そうなバッターだ。糖山と同じでこの前の練習試合で出場していなかった選手……こういう場面では嫌な相手だ。


「タイム!」


 ウチのベンチから勝崎さんが伝令として出てきた。といっても時間稼ぎくらいしかできないだろうけど……。


「オージロウくん。ちょっと一息つけた?」


「まあ、少しは」


「だから言っただろ、飛ばしすぎだって。おれの話を聞かないから」


「仕方ないだろしょーた。メッチャ絶好調だったんだからさあ」


「二人ともそんなことで揉めてる場合じゃないって! で、どうするかだけど」


「とりあえず気合いで投げ切るしか」


「それはさすがに根拠なさすぎ。しょーたくんは?」


「うーん。ちょっとプレートを踏む位置を変えてみるとか。もっと三塁側に寄って、アウトコースに角度をつけて投げてみようぜオージロウ!」


「……なるほどわかった」


「じゃあ頑張ってくれ! 場合によってはピッチャー交代もあるから!」


 勝崎さんはさらっと、とんでもないことを言って引き揚げていった。


 まだ序盤なのにマウンドを譲れるかっての。


 そしてしょーたは守備位置の指示を出してからボックスに戻る。


 オレはプレートをつま先で踏むような感じで三塁側目に左足を移動する。


 これなら確かに右打者の外に投げやすいかも。


 まあ、相手も読んでいるかもだが……自分のボールを信じて投げ込む!


「うりゃああっ!!」


「外角高め……予想通り!」


 バコォーッ!


 詰まらせたが上手く右におっつけられて、右中間へライナーが飛んでいく!


 飛んだ場所が……このままじゃ芝の上に打球が落ちる、そう思って諦めかけたオレだが。


「抜かせるか〜! ぬがぁーっ!」


 パシッ! と滑り込みながらセンター阿戸さんがキャッチしてくれた!


「アウト! スリーアウト、チェンジ!」


「うおおーっ! 奇跡のファインプレー出たー!」

「そんなー! 絶対抜けたと思ったのに!」


 両方のスタンドから歓喜と残念とそれぞれの感情が飛び交っていて、騒がしい中をオレたちはベンチに戻っていく。


 阿戸さんのプレーも素晴らしかったが、あらかじめ右中間を狭くしていたしょーたにも助けられた。


 野球はやはり1人で何もかもコントロールできたりはしない……それを改めて思い知りつつ、次の攻撃で早く追いつくことをオレは考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ