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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・準々決勝

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148/186

第148話 波乱の準々決勝開始

「ベスト16突破おめでとう皆さん!」

「なんやえらい試合見せてもろて、ほんまに良かったわ〜!」

「皆さんお疲れ様でした! 泉さん、荷物半分持ちます!」


 試合会場の球場から出口へと全員で引きあげると、スタンドで応援してくれていた面々……御野ヶ島高校の松笠先生、埜邑のむら工業の笹木先生、同じく女子マネの鯉沼さんが待っていてくれた。


 なんだか、ようやく試合を終えたんだなとホッと一息つけた。


 だがあまり悠長なことを言っていられない。学校の終業式を挟んで2日後に準々決勝が待っているのだ。


 まあ、それでも東京や神奈川、大阪といった出場校数が100をゆうに超える地方に比べれば日程に余裕があって、連戦はほとんど無いので選手としては助かる。


 逆に言えば、連戦に伴うドラマティックな展開とかは無いということになるが……まあ、そういうのは甲子園だけで十分だ。とにかく暑いし。


 などと考えながらしょーたたちと会話し、暑いのもあって注意力は散漫になっていたかな、と思う。


 それでも気配を殺してオレの左側から近づいてくる男に気づけなかったことに、それほど落ち度があったとは思えない。


 気がついた時には、横に少しスペースはあったが男が並行して歩いており、左肩にかけた工具入れのようなバッグからモンキーレンチを取り出すところであった。


「ん? 誰だ……うわあああっ!」


「おらあああっ! くたばれやあっ!」


 も、もうダメだ! やられる!


 男がモンキーレンチを持った右腕を振りかぶった瞬間はそう思ったのだが。


 そのタイミングを狙ったかのように別の手が男の斜め後ろからバシッ! とその手首を掴んだのだ!


「い、イテテテ! 何すんだこの女!」


「それはこっちのセリフなんやけどねえ。アンタ、ウチのエースの左腕、狙っとったやろ?」


 掴んだのは笹木先生の左手……捻りを加えているのか、男は痛がりながらモンキーレンチを手放すと、ドスンと重い衝撃が響いてきた。


 それに気づいた周りから悲鳴もあがる中、男は悪あがきを続けて左手を作業服の懐の中に入れた。これはヤバいのでは!


「てめー、いい加減にしや……あわわっ!」


 男はナイフを取り出したのだが、何故か顔面から血の気が引いてナイフをポトリと落としたのだ。


「おい! てめーこそ何しやがんだぁ!!」


 男の背後から羽交い締めをする阿戸さんの声にオレも我に返り、相手を抑え込むのに加わった。


「あらまあ。この人、自分で取り出したナイフを見て腰が抜けるやなんて。気が小さいんやったら最初からやめておけばよかったのにね〜」


 笹木先生はそう呟いていたが……オレは見たんだ。


 男がナイフを取り出した瞬間、右手で相手の左腕を押して、刃先が相手の顔の目の前を通過するように仕向けたのを……!


 笹木先生は剣道経験者で実家は剣術道場を営んでいたと聞いてるが……感謝しつつもこの人だけは怒らせるまいと心に誓った。


 そうしてしばらくしてから駆けつけた警察に引き渡して、ようやく事なきを得たのだった。



 オレを襲撃しようとした男は警察の取り調べに対してほとんど話さないらしい。


 唯一、事件を起こそうとした動機については『自分は以前から橘商業野球部のファンで、それを抑え込んでホームランまで打った相手エースが許せなかった』などと言ってるらしいけど。


 男がウチの側のスタンドにいるのを笹木先生が目撃しており、その時からなんとなく怪しい雰囲気を感じていたのだとか。


 そのへんの矛盾を警察も追及しているようだが、真相解明にはまだ時間が必要なようだ。



 そして迎えた準々決勝の試合……相手はもちろん八ツ頭学園であり、そのキャプテンである坂平さかひらと激突する。


 正直言えばウチの選手……いやそれどころか監督たちも坂平が一連の襲撃事件に関与しているのではと疑っている。そう思わせるほど事件は都合よくでき過ぎだ。


 だが何の証拠も無い状況でそれを口に出すことはできない。というわけで顔にも出さないように気をつけながらマウンド上の坂平と対峙しなければならない。


 試合は既に始まっており、ウチの先行で1回表は既にツーアウト。


 1番の近海ちかみ、2番しょーた共にヤツのカットボールに詰まらされて内野ゴロに終わった。


 そしてオレが左打席に入ろうとしたところで、坂平は奇妙なことを尋ねてきた。


「なあ、オージロウくんよぉ。左の腕とか肩は何か問題ねーのか?」


「……いえ何も。それがどうかしたのですか?」


「そうか、それならいいんだ。ベスト16は激戦だったって聞いてるからさあ、肩とかひじに負担かかったんじゃねーかって。ほら、俺らこの前の練習試合の決着を気持ち良くつけたいじゃん〜!?」


「そうですか」


 オレは淡々とした受け答えをしつつ確信した。もちろん物的証拠とか無いけど……コイツがやはり仕掛けてきたんだって。


 もしかしたら阿戸さんや山之口さんの件も……オレは静かに闘志を燃やしつつバッターボックスで構えに入ったのだった。

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