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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・ベスト16

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第147話 奇妙な因縁

 グワッシィーンッ!!


「おっしゃああ! 2者連続ホームランだあ!」

「阿戸さん完全復活弾だぜ〜!」

「山之口さんが連続でホームランを許すなんて……」


 7回裏のウチの攻撃はまだ継続中で、オレの後ろを打つ阿戸さんがホームランで続いた。


 もちろん喜ぶべきことなんだが……オレは素直にそう思うことができなかった。


 山之口さんの投球フォームはダイナミックさを潜めて、ストレートもスピード威力共にかなり落ちている。


 オレとの対戦ではお互い120パーセント出し切ったのに……もしかしたらそれが原因で?


 と考えていると、橘商業側ベンチから球審の元へ選手が駆け足で近づいてくる。


 それから程なくピッチャー交代が告げられた。


 山之口さんは背中と腰を時々さすりながらベンチへと歩いて戻る。


 やはり以前から痛めていた箇所は完治していなかったらしい。だから試合前半は変化球主体で身体への負担を抑えていたに違いない。


 スーパーエースとも言うべきピッチャーが抜けたあとは、完全に一方的な展開となった。


 7回裏は交代したピッチャーを攻めて、結果的に5得点のビッグイニングとなった。続く8回裏も追加点が入り、9回表開始時点で7−1。


 橘商業は6点差で辛うじてコールド負けを防いだので、もちろん試合は最後までわからないが……。


 マウンド上にいるのは左腕で長身から質の良いストレートを投げ込む1年生、わだちくん。8回表から交代して、オレはDHとして一応残っているだけ。


 キャッチャーも打力は低いがウチのチーム内では最も捕手歴の長い勝崎さんと交代している。


 センターの阿戸さんも怪我から復帰したばかりなのでベンチに退き、そこにしょーたが移動した。


 そして橘商業はこの回、自らをキーマンと名乗る男、三出川さんでがわから始まる。


 勝崎さんはさすがに経験値が高く、1年生の轍くんを上手くリードしてあっという間に三出川を追い込んだ。


 そして……。


 ズバンッ!


「ストライク! バッターアウト!」


 見事、縦に落ちるスライダーを振らせて三振を奪った!


 オレとの対戦では散々粘ったのに……ヤツにそんな余裕を与えなかった。


「お、俺がキーマンだってのにこの結果……もはや命運尽きたか」


 うーん、橘商業は諦めムードになっちゃったかな?


 と思いきや。


「ぬううっ! まだだ、まだ試合は終わっとらんぞぉ!」


 谷下さんはやっぱりまだ諦めていない。その執念がバットに乗り移ったのだろうか。


 バシーンッ!!


 轍くんのストレートが甘く入ったところを強引に引っ張って強烈なライナーがライト後方へ飛んでいき……フェンスを越えてスタンドに入ってしまったのだ。


「見たかオージロウ! ワシの豪快な一発を!」


 なぜそこでオレを名指しすんだよ。それはともかく轍くんは意地の一発を浴びてしまった。


 その後続く大根おおねさん、吉高さんに連続ヒットを許して一死一二塁のピンチを作った轍くんだが……意外と顔は動揺していない。


 まだ5点差あるというのもあるだろうけど、2回戦で同点ホームランを浴びた後と違ってまだ自信を失ってないように見える。


 古池監督が念の為に送った伝令にも続投で頷いていたし、大丈夫そうだ。勝崎さんのリードがそうさせているのか……次回への参考に配球をちゃんと見ておこう。


 見ていると、ストレート主体だがそれを……特に初球を相手によって上手く散りばめ、縦スラを振らざるを得ないように持っていってる。


 そして、気がつけばあと1球で終わるところまで橘商業を追い込んだ。


 左腕から外角低めにストレートが……いやボールゾーンへと落ちていくのを、打ちにいったバットが空を切る!


「ストライク! バッターアウト!」


「おっしゃあああっ!」

「この5校連合チームがシード校に勝ったんだあ!」

「信じられねー! これ、夢じゃねえよなあ!?」


 遂にオレたちの連合チームは、夏の予選ベスト8に駒を進めたのだ!


 次の対戦相手はもう決まっている。あの男……坂平さかひらがキャプテンとして攻守ともに引っ張る強豪私学、八ツ頭学園だ。


 ウチにとっては色々と因縁のある相手と言っても過言ではなく、今度こそ完全に決着をつけてやる。


 それを勝ち上がれば、もしかしたら……。


 もう一度彼らと、公式戦で対戦できれば最高なんだけど。


 最後の挨拶と校歌斉唱が終わって……そうだ、あのことを聞いておこう。本人は姿が見当たらないから他の人をつかまえて。


「谷下さん、吉高さん! 山之口さんはやっぱり治ってなかったんですか?」


「……ああ、残念じゃがのう。タケシは必死に治療して、投球スタイルまで変えてこの最後の夏にかけたのだが」


「オージロウくんを前にして、リミッターを外すしかなかったから。あれが限界だったよ」


「そうですか……オレのせいで」


「オージロウのせいではない。あの投げ方は元々身体への負担が大きい。まあ、それでもあの件が無ければ、とは今でも思うがのう」


「あの件?」


「俺たちがまだ1年生で秋季大会に臨む直前の話なんだけど。タケシは大会屈指の好投手として期待されて、順調に県大会ベスト8まで駒を進めたんだ」


「はい」


「その試合前日に不運な事件が……タケシが街を歩いていたところに、スケートボードに乗った男が背中から思い切りぶつかってきたのだ」


「まさか、それが原因で」


「その通り。その事件で背中と腰を痛めて、なかなか完治しないまま練習や試合で投げて慢性化してしまったのさ」


「そんな不運なことが……ぶつかった相手は何か補償とかしてくれたんですか?」


「いいや。それどころかすぐに逃げ出して、いまだに捕まってない。帽子を深くかぶってマスクしてたらしいから、人相もよくわかってない有り様でな」


「……なんて言ったらいいのか」


「オージロウが気にすることではない。どうしてもというなら、ワシらの分まで勝ち上がって甲子園に行ってくれ」


「その方が『史上初めて甲子園に出た連合チームを苦しめたピッチャー』としてタケシの名も残る」


「わかりました。ところで、その事件の後の試合には」


「残念ながらボロ負け。その対戦相手が八ツ頭学園……だから直接借りを返したかったけどな」


「そうでしたか……」


「だから気にするなって。それじゃあな、まずは次の試合を頑張ってくれ」


 まさかの八ツ頭学園との奇妙な因縁がここにも。坂平も3年生だからその秋季大会でも在籍してたはず……いやいや、変に疑うのはやめておこう。


 オレたちにできることは勝ち上がって甲子園に出場することだ。そのためにも早く帰って休養を取らねば。


 オレはベンチに戻って片付けを済ませ、球場の外へ通じる出口へと歩いていく。

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