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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・ベスト16

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142/185

第142話 それだけだ

「オージロウ! 必ずそっから……二塁からホームに返してやっから、大船にのったつもりで待ってろ!」


 おおっ! オレの後ろを打つ阿戸さんから頼もしい言葉が!


 だけど直前まで入院していた阿戸さんには山之口さん対策を話し合う余裕がなかったし、どうするつもりなんだ?


 そして山之口さんはストレートを続けて投げるのか。


 打たれた直後に同じボール投げるのは……でも一番自信があるボールでもあるわけで。


 どっちにしても山之口さんの集中力が高まっていくのを感じる。


 さあ、初球はお互いどうする?


 今日初めてのセットポジションで静止した山之口さんがおもむろに投球モーションに入る!


「フンッッ!!」


「おらああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「おいキャッチャー! サードに投げろ!」


 ショートの人から当然知らせるよなあ。だがもう遅い!


「うりゃああっ!」


 オレは叫び声とともに滑り込んで、三塁ベースを取りに行く!


「まさかオージロウが……こなくそ!」


 キャッチャー吉高さんがすぐに送球したようだが……。


 ズザァッ! とオレの右足がベースにタッチして判定は『セーフ!』


 やったぜコンチキショー! 人生初の盗塁を、しかも三盗で決めてやった!


 うちのベンチもスタンドもさぞ盛り上がって……はいなかった。


「オージロウ……無理してアウトになったらどうする気だ!」

「ヒヤヒヤさせんじゃねえぞバーロー!」


 それどころか罵倒されている。


 いいじゃないか成功したんだから、素直に褒めてくれても良さそうなものなのに。


「良くやった! これでますますホームに帰しやすくなったぜ〜!」


 阿戸さんだけは褒めてくれた。それだけでも敢行した甲斐があったというものだ。


 で、カウントとしてはワンストライク。


 やっぱりストレートを捉えられてないのか。


 ようやく静かになってきた球場内で、山之口さんと阿戸さんの声が響き渡る!


「フンッッ!!」


「おるあああっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


 ダメだ……バットとボールがかなり離れて空振りしてる。


 つまり、阿戸さんは山之口さんのストレートが見えていない……当てずっぽうでバットを振り回しているということになる。


 でもピッチャーからすると、あれだけ躊躇なくフルスイングされれば当てずっぽうでもマグレでも当てられるのが怖い。


 となると次に投げるのは。


「ふんっ!」


 チェンジアップかな。急激にブレーキがかかる方の。


 仕方がない、次の攻撃に期待しようと思った瞬間のことだった。


「おるああああっ!!」


 グワガッシーンッ!


 何やら奇妙な打撃音! 見ると猛烈な勢いの打球がレフトへ……もしかしたら!


「ファウル!」


 残念ながらどんどん切れていった。


 だが観客席からはどよめきが……そりゃそうだよな。恐らく完全なボール球を無理やりカチ上げてるんだから。


 あえて言えば阿戸さんが最も得意なコース、内角低めに近いところに投げてしまったのが失敗だったとしか。


 さて、これで雰囲気が変わったな。


 4球目の外角スライダーはあっさり見送ってカウント1−2。


 まだまだ余裕のあるカウントだが……そうだ、あの手がある。


 そして山之口さんもオレと同じ考えで5球目を投げ込んだ!


「フンッッ!」


 ズバンッ!


「ボール!」


 真ん中高め、というか完全にボールゾーンへ投げ込んだ釣り球に何故か阿戸さんは反応しない!


 マグレなのかそれとも……。


 続けて6球目もストレート……だが!


「ボール! カウント3−2!」


 またスタンドのどよめきが大きくなってきた。


 なにせ今度は完全に外へハズしたのだから。それでも阿戸さんは全く振る素振りもなかった。


 これは、本当にあのストレートの軌道が見えているのか?


 さっきのなんて、キャッチャーの吉高さんがポロリしかけたくらいなのに。それでも後ろに逸らさなかったのはさすがだけど。


 何にしてもフルカウント……どんな打球だろうがオレは打った瞬間に全力で走るだけ。


 いつもよりかなり緊張した表情の山之口さんがおもむろに投球モーションに入って……7球目!


「フンッッ!!」


「おるああああっ!!」


 バコォーーンッ!!


 フルスイングしたバットから出たのは明らかに芯を外して詰まった打球音!


 しかし大きな音でもあって、打球はそれに見合うようにライト方向へ飛んでいく。


 オレはとにかく振り向かずにホームへ駆け込んで、ホームを踏んでから打球の行方を確かめる。


 ライトが捕球しているが……オレの後ろから球審のコールが聞こえた。


「ホームイン!」


 うっしゃああ! どうやら阿戸さんはポテンヒットを勝ち取ったらしい。


 いやもうなんでもいい、同点に追いつければ。


 オレがベンチに戻るとみんなから手洗い祝福を受けたがそれも気持ちいい。


 次の中地さんは残念ながら三振……そして一塁からベンチへ戻ってきた阿戸さんに聞いてみる。


「いったいどうやってあのストレートを見切ったんですか? オレにも教えてくださいよ」


「あーそれならよぉ。全部ヤマカンってやつだ」


「はあっ!?」


「追い込まれてからはよぉ。俺のこれまでの経験と自分の勘をフル動員して、ボール球が来そうなら振らねえと決めて、ストライクが来ると思ったらコースは勘で振り切った」


「それだけ……ですか?」


「おう、それだけだが」


 ひええ。世の中には勘だけで勝負をかけられる人がいるんだな。


 まあなんにせよ、オレはこのあと点を許さないだけだ。

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