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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・ベスト16

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第141話 反撃開始

 橘商業の谷下さん、大根おおねさんに連打を浴びて先制点を……1点だけだが許してしまった。


 それにしてもあの2人、バットを短く持ったり、狙い球を悟らせずに辛抱強く粘ったり……オレは彼らの術中にまんまとハマった。


 まあやってしまったことをクヨクヨ考えても仕方がない。これから4回裏の攻撃でオレにも打順が回る。そこで取り返せばいいのだ。


 それにしても……というか、何度も言うがとにかく暑い。さっきは点を取られた後の後続3人を全力で抑えたので余計に。


 汗びっしょりでとにかく水分補給したいぜ〜。


「オージロウくん! はい、これ。早く汗を拭いて着替えないと」


 今日の記録員としてベンチ入りしている松花高校女子マネ泉さんの声だ。


 そちらへ振り向くと、綺麗に折りたたんだ状態のシャツとタオルをこちらに差し出してくれていた。


「ありがとう。もうシャツが水分吸って重いくらいだよホント」


「見るからにすごい量の汗をかいてたから。タオルは足りなかったらまだまだあるから遠慮しないで使ってね」


 こういう気遣いしてくれるのは本当に有り難い。自分でやると面倒になって適当にしちゃうから……サポートしてくれる女子マネさんたちには感謝しかないよ。


 そういや姉ちゃんたちの連合チームはこういうのをどうしてるのかな。確かマネージャー不在って言ってたから……女子は自分たちだけで問題ないのだろうか。


 男子の部で女子マネは聞いても、女子の部で男子マネってまず聞いたことないしなあ。オレが知らんだけかもしれんが。


 などと余計な考え事をしていたら今度はしょーたから声がかかった。


「オージロウ! さっきのはドンマイ、というかおれが上手くリードできなかったから落ち込むなよ!」


「……別に落ち込んでなんかいねーよ」


「ならいい。とにかくおれと田白くんでなんとかチャンスを作るから、その後は頼んだぜ!」


 しょーたは言いたいことだけ言ってネクストバッターズサークルへと向かう。


 でもまあ、キャプテンとして周囲に気を使いながら自分も結果を出すのは大変なのだ。そんな役割を引き受けてくれているのだから、オレもバットで応えよう。


 そして着替え終わる頃、田白が遂に!


 カキーン!


 ジャストミートとは言えない当たりだが、ようやく山之口さんのカウント稼ぎチェンジアップを前に飛ばしたのだ。


 飛んだ先が良ければ……という願いは叶わずショートのほぼ正面。そのままアウトとなったのである。


 それでも連続三振を9で止めたのは意義あることだ。こうやって少しずつこちらに流れを引き寄せるしかないのだから。


 さて水分補給もできたし、オレもボチボチ出撃しよう。戻ってきた田白に声を掛けつつバットを握ってサークルへと進んでいく。


 そしてマウンド上の山之口さんはどうするつもりなのか。配球を変えるのか、それとも。


「さあ来い!」


 右打席に入ったしょーたが珍しくピッチャーに向かって気迫をぶつける。気合い十分で期待が持てそうだ。


 対する山之口さんの顔に変化は見られない。引き締まってはいるがリラックスしてるというか。


 そのままの雰囲気で投球モーションに入って……注目の初球は!


「ど真ん中……いや低めに落ちるのをもらった!」


 スカッ!


「ストライク!」


 投球パターンを変えてきたか。急激なブレーキでタイミングを狂わせる方のチェンジアップで空振りを奪われた。


 いきなりの先制パンチで早くも追い込まれる……かと思いきや、しょーたは動じず集中して相手のボールを見極めていく。


「ボール! カウント3−2!」


 外に逃げるスライダーを見送って、フルカウントまでしょーたは粘った。


 さすがにここはストレートを投げてくるかな?


 恐らく球場内でこの対戦を見守る全員が期待する中、山之口さんが投げたのは……!


「ストライク! バッターアウト!」


 内角というかボールゾーンから中に入ってきたフロントドアのスライダーだった。


 ここまで投げなかったコースからの変化で意表を突かれたしょーたは見逃し三振となってしまったのである。


「すまんオージロウ。チャンス作れなかった」


「……まあ、あとは任せろ」


 すれ違いざまでそこまで口には出さなかったが、粘ってくれたおかげでチェンジアップもスライダーもじっくり見ることができた。だから少しでも甘く入ってきたら……!


 というわけで自信を持って左打席に立ったオレに対して山之口さんはイマイチ浮かない表情……そしてそのまま投球モーションに入った!


「ふんっ!」


「……」


「ボール!」


 初球はブレーキの効いたチェンジアップ。悪いが緩急効かせる前に投げたら見切るのは難しくない。


 そして内角スライダー、外角にカウント稼ぎチェンジアップと続いたが、どれもボールでカウントは3−0。


 残念ながらフォアボールか……でもチームとしては初のランナーを出せるのだ。オレ個人の勝負はひとまず置いておこう。


 と思って構え直すオレに山之口さんが呟いてきた。


「やっぱりオージロウのふた周りめには通じんか。長いイニング投げるためにはもう少し出し惜しみしたかったが……しゃあないのう!」


 ガラッと雰囲気が変わった。これは、来る!


 そう感じてバットを握り直したところでその時は訪れた。


「フンッッ!!」


 ズバンッ!


「……ストライク!」


 球審も判定しづらいくらいに軌道が見えなかった。遂にあのストレートを投げてきたのだ!


 だが春の試合から今日まで、オレたちもその攻略を目指して頑張ってきたんだ。必ず打ってやるぜ!


 オレはいつもよりややクローズドなスタンスで構え直して次を待つ。


「フンッッ!!」


「……うりゃあっ!!」


 ガコッ! とバットを掠める音だけでボールはズバッとミットに収まる!


「ストライク! カウント3−2!」


 フルカウントになった。次はもちろん勝負の時……なんとしても打ってやる。


 山之口のストレートは、正確にはジャイロ系の回転軸がかかったボールだ。


 初速と終速の差が極端に小さく、されどジャイロ回転なのでバッターのすぐ手前で僅かに変化する。


 だから投げた直後は加速したかのように、そして手前の変化でその軌道を目で追えないというのが『軌道が見えないストレート』の正体である。


 とわかったからといって打てれば苦労しないのだが。でも、完全に捉えるための工夫を考えてきた。


 さあ、最後のボールが来る。


「フンッッ!!」


 ボールを見極める前からスイングを始動する……グリップをできる限り先行して出しておく。


 そして直後に全集中で手前を見て反応する!


「うりゃあああっ!!」


 バシィーーッ!!


 ギリギリまで遅らせてから回したヘッドで捉えた打球に手応え有り!


 打球はやっぱり引っ張れずにレフト方向へ……というかレフト線を越えずに行ってくれ!


 ドカッ! とフェンスを直撃する音……塁審がフェアと判断したのを確認して、オレはセカンドベースに滑り込んだ。


 しかしレフトからの返球が思ったより早い……!


「セーフ!」


 ふう。間一髪セーフだった。


 ホームランにはできなかったけどチャンスメークはしたぜ。あとは4番の阿戸さん、頼んだ!

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