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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・ベスト16

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第138話 春とは違う

「よぉ〜。久しぶりだな、お前ら! ようやく医者から許可が出たからよぉ、いよいよこの試合から俺さまが復活するぜぇ〜!」


 シード校、橘商業と対戦するベスト16の試合会場に松花高校の阿戸さんが姿を見せた。


 復帰できるのは事前に聞いていたとはいえ、実際にその姿を見ると安心感というか気持ちの盛り上がりを感じる。


「待ってたぜ阿戸くん! このチームにはやっぱり欠かせない存在だよ!」

「間に合ってくれて本当に嬉しいですー!」

「これで甲子園に行けたも同然だ!」


 みんな同じ気持ちのようだ。


 阿戸さんは旧連合チームの時から一貫して不動のセンターであり、ピッチャーとして、センター方向に打球が飛んだ際の安心感が半端ない。


 それにチーム内で貴重な長打力の持ち主でもあるので攻守ともに存在感は大きい。


 チャラい面はあるものの、なんだかんだ言って面倒見の良い兄貴分であり、キャプテンのしょーたをさりげなく助けてくれている先輩なのだ。


 で、阿戸さんが入院する原因となった例の襲撃事件の件だが……近海ちかみの詳細な目撃証言もあって、ようやく犯人グループが警察に捕まった。


 予想通り、まだ高校1年生たちのグループで阿戸さんとの接点は何もなし。


 本人たちは『地元の先輩から噂を聞いてそそのかされた』と言ってるらしいが、その先輩とやらも別の知り合いから話を聞いただけらしく……黒幕との間に何人も挟まっているようだ。


 あとは当時の現場の状況についてなんだけど。


 近海と、警察に通報してくれた第三者の通行人の証言がほぼ一致したことと、犯人グループの確保により阿戸さんは暴行事件の完全な被害者だと確定した。


 だから当然なのだが、県高野連から出場に問題なしとの判断も出たのである。事件直後に先手を打って報告を入れたので事はスムーズに運んだのだ。


「それじゃあメンバー全員揃ったところで円陣組もう!」


「おいおい! こんなトコでやるのかよキャプテン?」


 そりゃそうだ。今日の球場は広い公園内にあるので、入口の手前だと通りがかりの人たちからもよく見える。


 だが阿戸さんが後押しをしてくれた。


「お前ら、この程度で恥ずかしいっていうんならよぉ! スタンドの観客が増えてくるこの先の試合で飲み込まれるのがオチだぞ!」


「それもそうか。じゃあ頼むよキャプテン」


「コホン。では改めて……おれたちが練習を頑張ってきた目標の第一段階、シード校との対戦までたどり着いた。今日はその成果を存分に見せてやろうぜ!」


「おーーーーっ!」


「おれたちは勝てる!」


「勝つぞ、勝つぞ、勝つぞぉーーっ!」


 おおっ、なんか掛け声がきれいに決まった。4月の後半に入ってから急遽再構成したこの5校連合チームがこうなるなんて、あの時は正直夢にも思っていなかった。


 でもこれなら本当にいける。甲子園に!



 そして遂に始まった橘商業との対戦。


 春季大会で対戦したのは旧連合チームなので、全くの初顔合わせではないが再戦とも言い難いちょっと特殊な状況だ。


 まあでもやることは同じ……相手エースの山之口やまのぐちさんを打たねば勝ち目はない。


 で、橘商業も春と違う事があって……途中からリリーフとして登板していた山之口さんだが、この大会では一貫して先発投手としてマウンドに登っている。


 試合前に谷下さんたちと少し会話したのだが、背中と腰の具合が比較的好調なのと、最後の夏なのでやれるところまで存分に……ということらしい。


 というわけで早速対戦……と、その前に。


「オージロウ! お前のボールを打つのは久しぶりじゃのう。今日こそはスタンドに叩き込んでスッキリ決着ケリをつけてくれるわ!」


 相変わらずの仰々しい口調で挑発してくる谷下さん。なんと彼が1番バッターで、そのあとに大根おおねさん、吉高さんと続く。


 連打の起点になるのが谷下さんなので、この方が得点効率がいいという判断か。実際、橘商業はここまで全て7回コールド勝ちなのだ。


 だがオレだって経験値を積んでレベルアップしてる。こっちも春とは違うってところを見せてやらないとな。


 というわけで、初球はいきなりここを攻める!


「うりゃあああっ!」


「躊躇なくワシが得意な内角! ナメるなあ!」


 ズバンッ!!


「ストライク!」


「ぬうううっ! ワシが内角を振り遅れるなど!」


 だから言ったろ、経験値を積んでるって!


 2球目もこっちだ!


「内角低め! 今度こそ、ぬううんっ!」


 ズバンッ!!


「ストライク! カウント0−2!」


「また遅れたか……いや、ワシに油断があったのだ。ここは気合いを入れ直す!」


 谷下さんはいきなりヘルメットを脱いで両頬をバチーン! とスタンドまで響きそうな音を立てて気合いを入れ直すと、すぐにヘルメットをかぶり直してこちらを睨む。


 凄い気迫……だが、オレはそれに飲み込まれまいと、あえて谷下さんが最も得意なコースで勝負する。


 3球目、行くぜ!


「うりゃあああっ!!」


「内角高め……今度こそ! ぬううううっ!!」


 ズバンッ!!


「ストライク! バッターアウト!」


「まさか! ワシが全く当てられんとは!」


 ふふふ。渾身のバックスピンでノビるストレートの下を振らせてやったぜ。


 しかし今日も暑い。そろそろ梅雨明けらしいが、どっちみち蒸し暑いことに変わりねーな。


 だから早いところベンチに戻りたい……が、なかなかそうはいかないかも。


「小僧……少しはやるようになったのう。だが俺には通用せん!」


 静かな気迫で一瞬背中がブルっときた。こちらも相変わらずカミソリみたいな鋭い雰囲気をまとっている。


 左打席の2番バッター大根さんには前回、高めのノビるストレートを鋭い振りで合わせられた記憶がある。


 豪快な谷下さんと違って穴が少ない……ので力で押していく!


「うりゃあああっ!」


「甘いぞ、真ん中高め! そいやっ!」


 バシィッ!!


「……なんだ、大きい音の割に打球は弱い」


 バットに当てられた直後は一瞬ヒヤリとしたが、ショートの大岡がゆっくり数歩動いただけで難なくキャッチ。


 うっしゃ! 前回苦戦したバッターに力押しが決まって気持ちいい〜!


「フン……次は見とれよ」


 でもやっぱり怖いな。


 そして3番吉高さんは、意外と。


「ああ〜! 全然当てられそうにないわ!」


 あっさり三球三振だった。でもこの人、そういうフリして肝心なところで仕掛けてくるから油断ならない。


 兎にも角にも1回表は順調にスタートを切れた。


 次はいよいよバッターとして山之口さんと対決だ。

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