第137話 後片付けと次への展開
「こんなところで終わるのは、正直悔しくて仕方ないけど……俺たちの分も頑張ってくれ」
オレたちの連合チームが勝利した2回戦。
市立甘岬高校と交わした最後の挨拶で中心バッター、湖岳さんから激励の言葉をもらった。
その後ろでは、オレがサヨナラ満塁ホームランを打った相手、リリーフエースの三矢さんが泣きじゃくっている。
「俺のスライダーも……チェンジアップも、何一つ通じんかった……ウウッ」
「そんなことはない。他の奴らはちゃんと抑えられた。アイツと、オージロウとここで出会ったのが運が悪かった」
それを慰めるキャプテンの稔田さん。
「ああ、アイツのことは気にしないでいいから。どうせなら大会本塁打の記録、とんでもないの作ってくれ。その方がこっちも……アイツも記録に残る」
オレはなんて返したらいいのかわからなくなって……一言だけ返すことにした。
「わかりました」
「おう、頼んだぞ。それじゃあな」
湖岳さんは最後まで爽やかにベンチへと去っていった。
オレたちもベンチに……。
「どこに行くんだオージロウ! これから校歌斉唱だぞ!」
おっと、そうだった。この県では夏の地方予選のみ、勝者の校歌が流れる。というわけでもう一度整列し直す。
ちなみにウチは連合チームなので、どの学校の校歌を流すのかについて選手の意見も聞きつつ各学校の校長先生同士で最終的に取り決められた。
1回戦は原塚さんの御野ヶ島高校だった。年々生徒数が減少している離島の高校なので、もう2度とチャンスはないかも……ということで最優先になった。
そして今回は中地さんたちの升田高校。
ちなみに我が大化高校の校歌は最後の順番……聞くためにはまだまだ勝ち上がらなければならない。
それからベンチへと引き上げると、負傷で途中交代したしょーたがチームメイトを出迎えた。
「みんな! おれは大して役に立てなかったけど、見事な勝利だった! 次もこの調子で勝ち上がっていこう! イテテ!」
「いや、役に立ってないことは無いだろ。正捕手不在で結構ギリギリだったぞ」
「それよりも怪我は大丈夫なのかよ? 次は出られるのか?」
「たぶん問題ない。内出血が酷いけど打撲で恐らく骨とかには以上無いだろうって。このあと精密検査受けるけどさ。アタタッ!」
「もう、無理しないで! とにかく病院に行かないと」
「それじゃ俺と一緒にタクシーで最寄りの病院に行こうか、しょーたくん。オージロウくんはひょ〜ろくくんを連れて先に帰ってくれる?」
「わかりました、古池監督」
「じゃあ、あたしは……」
「良かったら鯉沼さんも一緒に来てもらっていいよ」
「そうしましょ。私も付き合うから。田白くんたちは勝手に帰ってな?」
「うっす、笹木先生」
スタンドにいた笹木先生がいつの間にかベンチに来ていた。そしてその後から泉さんも入ってテキパキと片付けを手伝い始めた。
「鯉沼さん、あとは私がやっておくからいいよ?」
「……すみません、お願いします」
鯉沼さんはしょーたに肩を貸してベンチから去っていった。
オレたちは汗を拭いたタオルなどを回収したり荷物を運んだり、泉さんを手伝って片付け終わるとようやく帰り支度を始めたのであった。
ちなみに2回戦でノーシード同士の試合ということもあって、当然ながら取材を受けるなんてことはなかった。
一応、地元の新聞社の記者だけが部長役の上中野監督に少しばかり話を聞いていたけど。
もっと上までいけばオレたちも取材でいろいろ聞かれるのかなあ。何を喋るか今から考えておかねば。
◇
しょーたはやはり打撲で済んだので、次の試合に間に合って幸いだった。
そして大会の日程があっという間に過ぎていき、いよいよオレたちはベスト16の戦いに挑む。
相手はもちろん、シード校の橘商業。いよいよエース山之口さんとの決着をつける時……!
今度こそスッキリとあのストレートをスタンドに叩き込んでやるぜ!




