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部員2名から目指す甲子園〜人数足りないなら連合チームを組めばいいじゃない〜  作者: ウエス 端
夏の地方予選・2回戦

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136/187

第136話 トドメ

 これから11回裏の攻撃……現時点でスコアは2−3で甘岬が1点リード。


 もちろんウチが追いつけなければ試合は終わるんだけど、どちらにしてもこの回で決着をつけたい。


 ウチはもう全ての投手を出してしまった。その上、大岡はあまり長いイニングを投げた経験が無い。


 対する甘岬高校は、リリーフエースの三矢を引っ張り出したものの他にもピッチャーは残っているはず。


 そしてこの回の先頭バッターは途中から出場の原塚さん。前の打席では外角を狙い打ちで2塁打を放ったのだ。


 打席に向かう前に監督から一言何か言われたみたいだけど……狙い球を変えるのだろうか。


 逆に相手バッテリーはどう攻めてくる? と思ったら、初球は外角に!


「ボール!」


 ふう。チェンジアップで落としてきたのを振らずに見送った。原塚さんってそんなに選球眼は良くないはずだが……まあいいや、しばらく様子を見よう。


 しかし続けて内角に投げてきたスライダーを空振りしてあっという間に追い込まれてしまった。


 どんな指示が出てるんだ? 原塚さんは内角は難しいってわかってるだろうに。


 さて4球目は……外角のストライクゾーン内にストレート、いやチェンジアップか!


 バコッ!


 鈍い音とともにボールがキャッチャーの後方へと弾かれて転々と転がっていく。


 ギリギリで当てて粘った……なんだ、結局は外角狙いなのか?


 とオレが思うくらいだから相手バッテリーも迷いが出たらしく、その後は内角ボール球を見送られて……。


「ボール! フォアボール!」


 うっしゃ! 粘って勝ち取ったぜ原塚さん!


 後で監督に聞いたら、追い込まれるまでは内角を振って、そのあとは外角狙いに切り替えるという指示を出したんだと。


 相手を迷わせつつ、最悪、三振してもゲッツーにさえならなければ良しという策だったのだ。


 これで無死満塁……オレを申告敬遠することは無いだろう。延長戦で同点になれば、ヒットだけでなくエラーとかでもサヨナラになりかねない。


 でもまあされたら、伝説くらいは一応残せるかな……などと考えながら左打席で構える。


 申告敬遠の気配はない。勝負に来る……!


 初球は……うわっ!


「ストライク!」


 なんと、胸元へ目掛けて投げ込んできた……と思ったら大きくストライクゾーンへと曲がった。


 なかなか大胆なフロントドアだな……と心の中で身構えると、三矢が関西弁でまくしたてる。


「前の打席、ある意味お前をナメとったわ。チビやから俺のスライダーを外角に投げとけば安パイやろうって……だから今回は内角を攻め倒したる!」


 一方的にそう言って、三矢はすぐにセットポジションに入る。


 さっきのをそのまま受け取っていいものか。そう言いながら結局外角攻めだったなんて、野球の試合ではゴマンとある話だと思う。


 とはいえ、オレの得意な内角に打ち頃のボールが来れば逃さずに打ってやる。


 さあ、2球目は……。


 内角、しかもボールゾーン! またフロントドアか!


「うりゃああっ!」


 スカッ!


「ストライク! カウント0−2!」


「おっしゃ! モロに引っ掛かったわ!」


 ちくしょう!


 まさかの、更に食い込んでくるチェンジアップとは!


 スライダーを予測して振ったバットの軌道は、全く的外れの場所を通り過ぎたのだった。


 こんな簡単に追い込まれるとは。


 三矢はこのあと無限に選択肢を握ったと言っても過言じゃない。


 オレは……何をどのコースで待つべきか、とても絞りきれない。


 それでもなんとかしないと。次の打者は途中出場の近海……バッティングは悪くはないけど、三矢を打つのは難しいと思う。


 オレは自分を落ち着かせようとゆっくりと構える。その間に考えを整理して……。


 3球目は何が来る!?


「そりゃっ! トドメじゃ!」


 ……また内角!


 ズバッ!!


「ボール! カウント1−2!」


 ふう〜。さっきと同じようなコースでストレート。振っていたら振り遅れで空振りだったと思う。


「惜しかったのう〜。せやけどまだまだ俺が有利や!」


 すかさずマウントを取ってくる三矢。こういうのも投球術として生かすのが上手いタイプだ。


 だけどオレもそう簡単には引き下がれないのだよ。


 4球目……オレは賭けに出る!


「今度こそ終わりじゃい!」


 ズバンッ!!


「ボール! カウント2−2!」


 今度は外角で更に逃げていくスライダー……オレは外角なら見送ると決めていた。


 三矢も少し考える顔に戻った。当初のプランは使い切って、このあとの組み立てが必要なのだろう。


 まあ、まだボール球を一つ使えるから、もう一度外角に誘い球を投げる手もあるが……見送られたらフルカウントで逆にバッテリーも追い込まれる。


 さあ来い、5球目!


「そりゃあっ! これでどないや!」


 外角……!


「うりゃあああっ!!」


 バシィーーンッ!!


 外角低め、ギリギリのところを思いっきり振り抜いた打球は、センター方向へ大きな放物線を描いていく。


 そしてオレが1塁ベースに到着する前には……いや、本当は打った瞬間には確信していたけど。


 バックスクリーンに、サヨナラ満塁ホームランだ!


 オレが打ったのは、バックドアでボールゾーンから中に入ってきたチェンジアップ。


 三矢が『トドメ』とは言わなかったのがむしろ、見逃し三振を狙っていることを確信させたのだ。


 こうして、苦しかった2回戦を連合チームは勝ち上がることができたのであった。

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